▼スペシャルインタビュー▼
第2部「正しい剣道で勝つ」
〜2015年WKC日本代表・日本体育大学桜華中学・高等学校監督 村瀬諒(2)〜
(以下 KENDO PARK=KP 村瀬諒=村瀬)
-村瀬諒-
1993年生 神奈川県出身
全国中学校剣道大会団体3位。
日本体育大学荏原高校時代には国体東京都代表に選出。
その後日本体育大学に進学し、2年時に全日本学生剣道選手権優勝。
4年時には全日本学生剣道選手権準優勝、関東学生剣道優勝大会優勝。
同時期に第16回世界剣道選手権日本代表に選出され、個人戦ベスト8。
卒業後は日体桜華高校へ奉職し、現剣道部顧問。
直近では全国教職員剣道大会個人優勝・団体準優勝。
全日本都道府県対抗剣道優勝大会優勝。
※前回まで 第1部「剣道家が実践すべき、たった2つのポイント」
|稽古メニューの理屈を理解する
KP:
道場に行くとなかなか基本打ちの練習ができないことも多いようですが、どのように稽古を積めば良いでしょうか?
村瀬:
まずは始めの切り返しで、正しい動作を身につけると良いと思います。
切り返しは、竹刀操作の要素はもちろんですが、どちらかというと”刀で切る”動作に近いと思うので、その理屈を理解した上で取り組んでみてください。
ポイントとしては、
・左右の手を均等に力を入れる
・”振る”というより”切る”ように刃筋を立てる
・腰の高さを動かさずに平行移動
・肩甲骨の可動域を広げるように動かす
また先生に懸かる際は、「倒してやる」という気持ちで懸かるべきです。
なかなか社会人剣道家の方には難しいかもしれませんが、気後れしても良いことはありませんので。
KP:
村瀬選手の得意技である”飛び込み面”について教えてください。
村瀬:
面に関しては、まさに「重心移動」と「竹刀を触る」ことを徹底した結果生まれた技です。(前号参照)
打ち方も、特別な軌道を通っているわけではありません。
強いて言うなら、”相手の目を見ながら打つ”ことでしょうか。とはいえ非常にシンプルな技です。
KP:
どのような機会に打っていらっしゃるのですか?
村瀬選手から見て、相手がどう見えているかも含めて教えていただきたいです。
村瀬:
やはり”竹刀を触ってから打っている”のが大きいと思います。
そもそも、しっかりと相手の竹刀を上から抑えれば、物理的に押し返されることはありません。
人間の手は手のひら側にくる力には強いですが、手の甲側にくる力にはかなり弱いからです。
よく竹刀の弦側から竹刀を払い飛ばす行為がありますが、あれはまさにその原理です。
結果として相手が完全な防御体制になる前に、こちらの面が当たっているイメージです。
加えて、相手の目を見ながら平行移動で打っているので、相手がのけぞって防御体制に入ろうとしているところを打っているケースが多いですね。
|自分なりに正しい剣道を追求する
KP:
村瀬選手の技は、比較的シンプルなイメージがあるのですが、ご自身で意識はなさっているのですか?
村瀬:
シンプルな技が、単純に自分のスタイルと考え方に合っているからだと思います。
将来的なことを考えても、今のうちからシンプルな技で勝負していくのが良いと考えています。
また現在は教員という立場なので、”正しい剣道で勝つ”というところにもこだわっています。
KP:
防具選びについて教えてください。
村瀬:
大前提として、
・使いやすい
・耐久性がある
・サイズが自分の体に合っている
というところは最低条件として選んでいます。
その上で、剣道は見た目からくる先入観で、戦う前から優劣が生まれることが多いと思います。
そこで、飾りや曙光の色など見た目の部分にはこだわっています。
とにかく高級感を出して、強そうに見せることも、一つの戦い方だと思っています。
もちろん予算があることなので、隠れたところに少し飾りを足したり、自分でも楽しんでいます。
KP:
”剣道全体”と”村瀬選手個人”の今後の課題を、それぞれ教えてください。
村瀬:
剣道全体としては、昔の剣道と現代剣道をどうミックスするかが課題だと思います。
私はまだまだ模索中なので、いろいろな先生からお話を伺うようにしています。
個人としては、まずは稽古量を確保して選手として実績を出すことです。
それに加えて、実践してきたことをいかに伝えるかが、今の課題ですね。
運営から:
若手のトップ選手でありながら、”正しい剣道を身につけて長く剣道を続けたい”という姿勢が印象的でした。
そのぶれない姿勢こそが、試合での強さになっているのかもしれません。
益々のご活躍を、心より祈念しております。