剣道のルールについて説明します。
試合形式、試合時間、反則行為、一本の基準等、主な剣道のルールについて今一度整理しましょう。
剣道は他の競技と比較しても、ルールが曖昧で、理解しずらい部分が多数あります。
不明瞭な部分を明確にして、剣道の持つ競技としての魅力を改めて確認しましょう。
※剣道の用具に関する規定変更については、こちらをご参照ください。
必読!【竹刀・剣道具(防具)の規定ルール改正を徹底解説】全日本剣道連盟 藤原崇郎
|試合形式
剣道は一対一で試合します。
一試合は三本勝負で、相手から有効打突を二本先取したほうが勝利します。
また、一方が一本先取しそのまま試合時間が終了した場合、一本先取した選手が勝利します。
次に、剣道に個人戦と団体戦が存在します。
個人戦はトーナメント戦あるいはリーグ戦によって駒を進めますが、トーナメント戦の場合、必ず勝敗を決さなければならないため、試合時間内に勝敗の決さない場合には、時間無制限の延長にて、一本勝負を行います。
リーグ戦では、試合時間内に勝敗の決さない場合、引き分けとすることが多いです。
団体戦は、三人制、五人制、七人制、九人制などさまざまです。
五人制の先鋒・次鋒・中堅・副将・大将を基本の形として、七人制では、次鋒の次に五将、中堅の次に三将が置かれます。
小・中・高の試合では五人制、大学の試合では七人制であることが多いです。
団体戦には、対勝負と抜き戦というものが存在します。
対勝負では、各チームの先鋒同士、次鋒同士といったように同じポジション同士が試合をします。
試合時間内に勝敗の決さない場合には引き分けとします。
勝者数よって勝敗が決し、勝者数が同数の場合、取得本数によって勝敗を決します。
取得本数も同数だった場合、代表者が時間無制限の一本勝負を行います。
次は抜き戦について説明します。
抜き戦とは例えば先鋒同士が試合をし、勝者は相手チームの次鋒と試合をするという形式です。
この形式でも、試合時間内に勝敗の決さない場合には引き分けとし、両チームともに次の選手が試合をします。
抜き戦では、相手チームの大将に勝利したほうが団体の勝利となります。
抜き戦の代表的な試合は高校玉竜旗です。
|試合時間
剣道の試合では、制限時間が設けられています。
一般に公式戦における試合時間は、小学校低学年が2分、小学校高学年から中学生が3分、高校生・大学生が4分、一般が5分となっています。
試合時間は、各大会によって変化します。
例えば、高校生の全国高校総合剣道大会の地方予選では、団体戦の試合時間が4分、延長戦が2分の計6分となっています。
また、毎年日本武道館で開催される「全日本剣道選手権大会」では、試合時間が5分、準々決勝以降が10分となっております。
|試合中の反則の種類
剣道における反則行為は、2回で相手に一本を与えます。
反則行為になる行為として、時間空費の反則、場外に出る反則、試合中に自分または相手の竹刀に手で触れる反則、不当な行為をする反則などがあります。
今回は試合でも多々見受けられる時間空費による反則、場外反則、鍔迫り合いによる反則について詳しく見ていきます。一見おかしいと感じる判定でも、反則行為の詳細について理解すると、納得できる場面が多々あります。
時間空費による反則
剣道には、故意に試合者が時間を空費することによる反則があります。
剣道の試合では、すでに一本持っている場合や、団体戦で自分が積極的な攻めをする必要がない場合に、あからさまに自分からは打たずに時間を潰す行為が見受けられることが多々あります。
その様な場合には審判がルールとして時間空費の反則を選手に言い渡します。
全日本剣道連盟では、試合審判規則及び細則において次のように規定しています。
規則第17条[諸禁止事項]
試合者が、次の各号の行為をすること。
1.定められた以外の用具(不正用具)を使用する。
2.相手に足を掛けまたは払う。
3.相手を不当に場外に出す。
4.試合中に場外に出る。
5.自己の竹刀を落とす。
6.不当な中止要請をする。
7.その他、この規則に反する行為をする。細則第16条
規則第17条7号の禁止行為は、次の各号などをいう。
1.相手に手をかけまたは抱え込む。
2.相手の竹刀を握るまたは自分の竹刀の刃部を握る。
3.相手の竹刀を抱える。
4.相手の肩に故意に竹刀をかける。
5.倒れたとき、相手の攻撃に対応することなく、 うつ伏せなどになる。
6.故意に時間の空費をする。
7.不当なつば(鍔)競り合いおよび打突をする。
全日本剣道連盟『剣道試合審判規則』
これは、公平に、また正々堂々と試合をする事を呼びかけるためのルールです。
剣道は限られた試合の中で一本を取り合う競技です。
そういった競技での時間空費についてルールを制定していないと、試合自体がつまらなくなり、また公平さが失われます。
剣道は「剣の修練による人間形成の道」とよく言われます。
人間形成において、時間を空費して試合に勝つ様にすることは、この教えに反しているといえ、試合時間内であればどんな状況にあっても、相手に正々堂々勝負を仕掛けなければなりません。
そういった理由から、この時間空費の反則というルールが生まれました。
時間空費とみなされる行為として代表的なものは、
・鍔迫り合いで明らかに技を出さない
・静止し、鍔迫り合いから分かれる意思がみえない
・三所隠しを行った
などがあげられるでしょう。
“三所隠し”とは、面・小手・胴の三箇所を避けられるいわば万能な避け方です。
しかし、中学での試合では公式に公正を害する行為として明記されています。
高校以降の試合でも長時間の三所隠しは時間空費とみなされ反則を取られる場合があります。
時間空費で試合に負けることは、正々堂々と試合していない証拠であると言っても過言ではないでしょう。
この時間空費による反則を受けない為にも、積極的な攻めを忘れず、正々堂々と試合をすることを忘れてはいけません。
場外反則
剣道の試合場は各辺9〜11メートルの正方形もしくは長方形と定められています。
この試合場内で競技をするわけですが、自分から試合者が試合場外に出た場合、また相手に技として押し出しで試合場外に出された場合は反則になります。
相手に押し出されて反則になる場合は不透明なところがあり、相手が技を出してその直後の一回の体当たりで試合場外に出た場合には反則になります。
しかし、1回以上の押し出しや必要以上の押し出しは、試合場外に出たとしても反則行為にはならず、逆に不当に押し出し行為をした方の選手が反則になります。
このあたりのルールは非常に不透明であり、実際の試合においても、なぜ反則になったか、また反則にならないかが不明瞭なケースも少なくはありません。
しかし、剣道を正々堂々戦う上で過度な押し出しは不要であると言えるでしょう。
鍔迫り合いでの反則
鍔迫り合いでの反則とは、鍔迫り合いを正しく行わないことによる反則と、高校生限定のルールではありますが、10秒以内に鍔迫り合いを解消しない殊による反則があります。
鍔迫り合いを正しく行わないことによる反則は、竹刀を相手の首元にかけ、技を出さずに相手の技を封じる行為や、鍔と鍔が重なり合うのが本来の鍔迫り合いであるのにも関わらず、相手に技を出させないようにするために、コテと鍔で鍔迫り合いをする行為が挙げられます。
鍔迫り合いの反則については、主審の判断に委ねられています。
試合者は試合に熱中するあまり、知らず知らずのうちに鍔迫り合いで反則行為をしていることが多いです。
また、これは前述の試合時間と深く関わるものですが、試合時間で鍔迫り合いの時間は非常に長く、また普通に構え合っている時に比べて技を出しにくく、膠着する場合が多いです。
鍔迫り合いの反則を厳しく取り締まらなければ、試合自体が間延びして、勝敗がつきにくくなります。
高校生には、鍔迫り合いを10秒以内に解消しなければならないルールがあります。
高校生に積極的に勝負を仕掛ける機会を多く取らせることと、正々堂々と試合をさせる狙いがあります。
このルールでは、完全に相手との間合いが切れるまで、つまり相手の竹刀と自分の竹刀が接触しない間合いまで分かれなければ反則になります。
剣道では、通常構えている間合いと鍔迫り合いの中間の間合いで技を出し合いますが、非常に小作な技であることに違いはありません。
正々堂々と高校生に試合をさせるために、間合いを完全に離れさせているのです。
現在は、コロナ下における暫定的な試合審判規則が定められており、鍔迫り合いはおよそ3秒という決まりがあります。
これは高校生に限らず、中学生や大学生にも適用されており、反則が取られやすい場面となっているので注意が必要です。
|不当用具使用について
上記では、反則行為を見てきましたが、剣道ではその他禁止されている行為として、ドーピングや審判や相手への不適切な言動はもちろんのこと、定められた防具以外の用具を使用することも禁止されています。
こうした行為は、行為を行った時点で強制的に試合を終了し、行為者の相手に二本が与えられます。 定められた防具以外を用いた場合、発覚した時点で、不当用具を使用した選手を負けとし、既得権・既得本数を認めず、相手に二本与えて強制的に試合が終了します。
不当な用具として主に挙げられるのが竹刀です。
中学生以降の試合では、試合前に竹刀検量が設けられることが多く、検量に合格した竹刀のみ、その日の試合で使用可能になります。
竹刀について、全日本剣道連盟の剣道試合審判規則および細則に明記されている竹刀の基準については、 竹刀の構造、長さ、重さ、太さ、鍔の規格 などがあります。
参考記事:必読!【竹刀・剣道具(防具)の規定ルール改正を徹底解説】全日本剣道連盟 藤原崇郎
竹刀内部への不正
竹刀の構造については竹が四つ割りのもので、中に異物を組み込むことをしてはいけません。
一般的に竹刀として武道具店に売られているものは、基準を満たしているといえますが竹刀検量の際に重さが数g足りない為に、硬貨などを故意に埋め込む禁止行為を行うケースもあります。
発覚した時点で強制的に敗退となってしまうため、絶対に行ってはいけません。
竹刀規格における不正
全日本剣道連盟が定める竹刀規格に反する竹刀を用いた場合、それは不正用具とみなされます。
例えば、規格する重さより軽い竹刀を用いたり、総重量は満たしているが、先を軽くするために先革が極端に細い竹刀を用いたりといった行為はたびたび見受けられますが、こうした竹刀は竹刀検量に合格しません。
竹刀規格における、竹刀の長さ、重さ、太さは中学生、高校生、大学生・一般といった区分や性別によって異なります。
重さは鍔を含めず、太さは 先革の先端部最小直径の規格としています。
一刀の場合、以下の規格が試合審判規則に記載されています。
中学生では、長さは男女共通で114㎝以内、重さは男性が440g以上・女性が400g以上、太さは男性が25㎜以上・女性が24㎜以上としています。
高校生では 、長さは男女共通で117㎝以内、重さは男性が480g以上・女性が420g以上、太さは男性が26㎜以上・女性が25㎜以上としています。
大学生・一般では 、長さは男女共通で120㎝以内、重さは男性が510g以上・女性が440g以上、太さは男性が26㎜以上・女性が25㎜以上としています。
竹刀を購入する際には、正しい武道具店で購入すれば不当用具とみなされることはないでしょう。
※参考記事:
必読!【竹刀・剣道具(防具)の規定ルール改正を徹底解説】全日本剣道連盟 藤原崇郎
【竹刀特集|選び方とおすすめ商品】
鍔への不正
鍔についても、明確な規定があります。
鍔は皮革製品または化学製品の円形のものとし、 その大きさは直径9㎝以内と規定されています。
また、鍔止めなどで竹刀固定されていることが条件です。
昨今では、稽古の元立ち用に大きめの鍔等も販売されていますが、公式戦での使用には注意が必要です。
|「一本」の基準について
剣道では、陸上競技やフェンシングなど、機械を用いた判定ではなく、人間による審判で勝敗が決します。
しかし、一本になる基準が人によって異なるようでは、公正な試合とは言えません。
そこで、審判には細かな試合審判規則および細則が設けられており、それに応じて審判は判定します。
判定基準には、竹刀の打突部で打突部位を刃筋正しく打突すること、さらに残心をすることで一本の有効打突であるとされています。
全日本剣道連盟で定められている、竹刀の打突部、打突部位については以下の通りです。
[有効打突]
第12条
有効打突は、充実した気勢、適正な姿勢をもって、竹刀の打突部で打突部位を刃筋正しく打突し、残心あるものとする。
[竹刀の打突部]
第13条
竹刀の打突部は、物打を中心とした刃部(弦の反対側)とする。
[打突部位]
第14条
打突部位は、次のとおりとする。(細則第3図参照)
1.面部(正面および左右面)
2.小手部(右小手および左小手)
3.胴部(右胴および左胴)
4.突部(突き垂れ)
全日本剣道連盟『剣道試合審判規則』
気剣体の一致
有効打突を取得するためには「気」「剣」「体」の一致が必要であると言われています。
「気」とは動作を起こす心意気であり、「剣」とは竹刀の働く作用のことであり、「体」とは体のさばき方で、体勢や四肢の動かし方のことです。
打突の機会を見極めて、その一瞬で打つという決心と、竹刀操作、十分な体勢のすべてが伴った時、有効打突を捉えることができます。
「残心」という考え方
残心とは、自分が技を出した後も相手からの反撃に備えて身構えることです。
技として出し切った後も、この残心をすることで、意識を途切れることなく自分の次の打突の準備もできます。
この「残心」を剣道では有効打突の必須条件としています。
このように、剣道試合審判規則では簡潔にまとめられていますが、実際に有効打突を取ることは簡単ではありません。
相手の出頭や、居ついたところ、虚を突くことで、より有効打突を取ることが可能になってきます。
|剣道を楽しむために
このように、剣道では、決められた試合時間の中で有効打突を取らなければなりません。
また、剣道は「剣の修練による人間形成の道」です。
試合相手に敬意を表すことを忘れない為に、反則行為が作られました。
正々堂々と相手と向き合って戦い、正しいルールに則って剣道を楽しみましょう。