▼チームインタビュー▼
「新時代の学生剣道」
〜慶應義塾體育會剣道部2017年度主将 遠藤太郎〜
今回は、大学チームの取り組みをご紹介するため、
慶應義塾大学體育會剣道部に取材をしてまいりました。
2017年度主将の遠藤太郎選手にインタビューを致しましたので、ご覧ください。
(以下 KENDO PARK=KP 遠藤太郎=遠藤)
遠藤太郎
福島県出身。
福島県磐城高校時代に東北大会団体準優勝、及び選抜出場。
慶應義塾大学では、関東学生剣道新人戦大会第3位。
2017年、慶應義塾體育會剣道部主将を務める。
|コミュニケーションと生産性
KP:
慶應義塾體育會剣道部主将として、組織全体で100名以上の部員をまとめる立場でいらっしゃいます。
遠藤:
慶應義塾大学には、インターハイ経験者から初心者まで部員がいます。
そういった環境の中で円滑な組織運営をするために、コミュニケーションを大切にしています。
KP:
具体的に取り組んでいることはありますか?
遠藤:
普段から上級生下級生関係なく食事に行きますので、プライベートのことや、時には真面目な話もしたりしています。
また横のつながりとして、学年ごとにLINEグループやメーリングリストを作成しているほか、学年ミーティング等もその時の状況を見て行っています。
これらによって、縦横クロスオーバーにコミュニケーションが取れる態勢をとっています。
KP:
慶應義塾大学では、稽古時間が比較的短いとお聞きします。
遠藤:
”拘束時間を減らして生産性を上げる”取り組みを行っています。
日によっては、稽古時間を1時間程度に設定しています。
学生である以上、剣道だけでなくしっかり勉強をしなければいけません。
文武両道を達成するために限られた時間の中で、集中して取り組むことを意識しています。
また世の中の流れもあり、社会に出た時にリーダーとして活躍できるよう、
常に新しい取り組みをしなければならないと考えているからです。
|自主性を育てる
KP:
具体的な稽古内容を教えてください。
遠藤:
稽古内容自体は大変シンプルです。
「素振り→切り返し→地稽古→打ち込みかかり稽古→跳躍素振り」
とメニューとしては極めてオーソドックスな稽古を行っています。
その中で“考えること”、“崩れないこと”を意識するよう、全体へ指示しています。
そのためにあえて技練習はあまり行わず、地稽古の時間を増やして”考えること”、“崩れないこと”を育てるようにしています。
師範の先生からも、“剣道は瞬間瞬間の創造である”とのお言葉を常に仰っていただいているので、日頃考え、創造することを大切にしています。
また”崩れない”という部分で言うと、手元を上げないというところを最も意識しています。
KP:
ともすれば「楽をする」ことも可能だと思いますが、部員間での共通認識が徹底されていらっしゃるのでしょうか?
遠藤:
ただ単に”考えるように”と指示しても非常に曖昧なので、チーム全体としての共通テーマは設定しています。
例えば今年の春先は打突力強化を掲げ、素振りの本数を増やしたり数種類の切り返しをメニューに取り入れていました。
それをもとに、夏以降は素振りにおいて剣先のスピードを上げていくことと、試合勘をさらに洗練させていくこと以上二つをテーマに設定しようと考えています。
これらも原則として学生間で話し合って、全て決めています。
KP:
全て学生間で決めているのはすごいですね。
遠藤:
もちろん我々学生だけでは足らない要素も多分にあるので、師範、副師範、総監督、監督などの指導陣からのアドバイスを頂いています。
また、6月に”出稽古期間”を設定し、他チームからも剣道スタイルや稽古等を積極的に吸収するようにしています。
今年で言うと、関東学院大学、明治大学、日本体育大学、駒澤大学、東洋大学、学習院大学、国学院大学、日本大学、立教大学、専修大学等のほか、神奈川県警様、皇宮警察様にも出稽古に行かせていただきました。
各人がそれぞれ得たものを持ち帰り、それを慶應の稽古の中で昇華させる取り組みを行っています。
|初心者から経験者までの総合力
KP:
初心者に対しては、どのように指導しているのですか?
遠藤:
まずは”楽しんでもらうこと”を心がけています。
その中で、本人の闘争心と高い意識を引き出していくのが必要だと考えています。
例えば、部員の中で高校までラグビー部だった者がいるのですが、本気で“レギュラーになりたい”と普段から公言しており、今では経験者も簡単には勝てないレベルにまで上達しています。
彼の意思に応えられるよう、こちらとしてはしっかりと上達メソッドを組み指導するようにしています。
KP:
部員が多いと、それぞれへの指導も大変ではないですか?
遠藤:
オンライン上で練習試合から全ての試合動画を部員と監督で共有しているので、課題を指摘しあえる態勢をとっています。
これらを通して、”当てっこではない剣道”を作り上げたいと考えています。
KP:
逆に足りないと感じるところはありますか?
遠藤:
剣道推薦があるわけではないので、強豪校と比べるとやはり高校までの経験や地力の差を感じることはあります。
個人的な見解では、特に延長戦においてそのような地力が出やすいと感じています。
それはおそらく試合回数や、攻防パターンの経験値だと思うので、日々の地稽古によってそれを磨くように心がけています。
KP:
今後の課題を教えてください。
遠藤:
自分の得意技を作り上げ、磨くことです。
当剣道部においては、公式戦の他に大事な試合として”慶早戦”(世間でいう早慶戦のこと)があります。
引き分けがないので、苦しい時に一本を取れる技の必要性を強く感じています。
そのために、”まずやってみる”ことを実践しています。
師範の先生や監督に言われたことは、まず実践してみる(できれば少し大げさに)ことで自分の中に取り込めるかどうかを判断しています。
これによって新しい発見や、自分の剣道の幅や広がれば良いと考えています。
運営から:
学生剣道という枠に収まらず、社会のリーダーとなることを見据えて
稽古に取り組んでいる姿が印象的でした。
”生産性の向上”や”考えること”など、まさに今必要とされていることを
実践しているチームの一つだと感じました。
今後の諸大会でのご活躍を、心より祈念しております。
※追加参考記事:【高校剣道”イノベーション 2.0”】慶應義塾高校 剣道部監督 土岐俊祐
参考リンク: