【”草の根剣道家”の歩む道】誠道塾塾長 今津久雄(2)

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▼スペシャルインタビュー▼

第2部「”草の根剣道家”の歩む道

〜誠道塾塾長 今津久雄(2)〜

社会人から本格的に昇段審査を受審し、七段を取得するまでの道のりと、現在の道場経営についてお伺い致しました。

(以下 KENDO PARK=KP   今津久雄=今津)


-今津久雄-

1950年生 兵庫県出身

清風学園高校・近畿大学卒業

父は有名料理店かに道楽創業者今津芳雄氏。

大学時代の剣道ブランク期を経て、かに道楽入社を機に剣道を再開。

JRI(株)かに道楽代表取締役副社長等歴任、2008年に同社を退職。

(株)コミュニケーションオフィス57と剣道道場「誠道塾」を設立し、代表取締役並びに塾長に就任。

現在は学校法人晃陽学園高校東京校校長、レンタルスペース事業等も手がける。

剣道教士七段。


※前回まで:【”リバイバル剣士”から道場経営者へ】

|段位取得は剣道家の礼儀の一つ

KP:

社会人になられてから、本格的に段審査を受審なさったのですね。

今津:

高校時代に二段を取得して以来、社会人で剣道を再開するまで段審査は受審していませんでした。

かに道楽剣道部を創設したものの、個人的には段位取得の必要性を感じていませんでした。

しかしある先生から、剣道家として、実力に見合った段位を取るのは礼儀だよ。」と言われ、昇段にトライすることにいたしました。

KP:

順調に昇段していったのですか?

今津:

三段、四段は順調に取得できたのですが、五段の昇段に約10年もかかってしまいました。

合計20回以上も、審査に落選したことになります。

結局43か44歳の時に、やっと五段に昇段いたしました。

そこで何か掴んだのか、逆に六段は一発で昇段しました。

これらを通して、よく言われる「昇段審査の壁」の存在をはっきり確認できた気がします。

社会人になってから本格的に昇段審査に取り組む。
画像出典:東京都保健福祉財団

KP:

そこから、いよいよ六、七段の昇段について教えてください。

今津:

六段は平成13年、七段は平成19年 57歳の時に昇段いたしました。

七段審査は、3回目で昇段いたしました。

実は昇段に向けて講習会に何回か参加したのですが、その際に佐藤博信先生(故・元警視庁名誉師範)から頂いた助言が合格に直結したと思います。

それは「剣道は時間を3分割しなさい。」というものです。

具体的には

・最初1/3は打たない

・中1/3で自分の技を出す

・最後1/3では、それまで有効打突を打てていたらしのげ、打てていなかったら再度仕掛けるべし

ということでした。

そこで講習会での立会いで、最初1/3を打たずに我慢してみたところ、相手の技が面白いようによく見えました。

そこから技を出していくと、これも面白いように相手に当たりました。

これに気を良くした私は、模擬審査にて先生よりいただいた「面がほしいね」との言葉を試すため、翌日の立会いでは積極的に面を打っていきました。

しかし、全く相手に当たりませんでした。独り相撲だったのですね。

この講習会を通して、打ちたい欲を抑えて相手を制してから仕掛ける大切さを痛感しました。

数日後の六段審査は、一回で通過してしまいた。”あれよあれよ”という感じでした。

6年後の七段審査(3回目)では、立会いの最後に出小手を打つことができました。

(発表待ちのビデオ見て)この出小手を見た審査員の先生方が、一斉に審査用紙への記入を始めたので、「合格したな」と思いました。

ねんりんピック東京都予選にて優勝を果たす。

|道場運営は”奉仕的思考”が不可欠

KP:

道場経営をしながらの昇段というのは、本当にすごいことですね。

今津:

道場を運営することは、昇段とは全く別の思考が必要です。

※参考記事:【剣道道場経営の難しさ】

誠道塾でも、剣道道場の運営自体は赤字なのが現状です。

自前道場を所有している他の道場も同じだと思いますが、別途本業を持っていて、そこで生み出す資金を道場運営に投下しているのが実情です。

とはいえ道場の維持コストはそんなにかかるわけではないので、キチッと収支管理をすれば永続的な運営も可能だと思います。(私自身あまり得意なことではないですが。)

自前道場経営にかかる費用は、主に以下の通りです。

・造成費用(=床張り・設備等)

・光熱費

・家賃 ※賃貸の場合のみ

・税金(=固定資産税・相続税等)※所有の場合のみ

・講師謝礼

初期の造成費用はかかりますが、居住空間より必要設備も少ないので、数百万円単位で道場造成は可能です。

なかなか収益を上げにくいので、「回収」は大変かもしれません。

KP:

道場の上階で賃貸運用を行っている道場も多いですよね。

今津:

騒音の関係で地下に道場があるケースが多いので、そういう場合に上階を賃貸運用するは自然だと思います。

誠道塾では、スペースレンタルによって運用を行なっています。

KP:

合宿所やAirbnb運用ですね。

今津:

剣道道場の経営をする際に必ず発生する課題として、稽古以外の時間帯の空間活用があります。

剣道以外も含めた多目的スペースとして貸し出したこともありましたが、床へのダメージなどを考えると活用法は限られてくるのが実情です。

そこで、上階の合宿所利用を受け付けていたところに、「道場で剣道の稽古ができます」と表記したところ、幾つかの団体の剣道合宿に利用いただけるようになりました。

その後、全国大会に参加するために上京する道場チームや、郊外の警察チームにも利用いただけるようになりました。

ある時合宿以外での空間利用も考えていた折に、剣道とは全く関係ないイギリス人の方が、宿泊所に宿泊なさいました。

その方からAirbnb(=世界最大の民泊・宿泊所予約サイト)を紹介いただき、「これはすごい」と思い早速部屋を登録してみました。

宿泊者限定で、道場で剣道の体験も行うオプションも付加したところ、外国人の方からお問い合わせをいただくようになりました。

今でも、国内外問わず毎日のようにゲストを受け入れています。

Airbnb掲載宿泊所例:https://www.airbnb.jp/rooms/7901470

※いずれの部屋も旅館業法上の「簡易宿泊所」取得予定です。

剣道の道場も、本質的には”不動産事業”である。

|”草の根剣道家”を実践する

KP:

時代に即した取り組みですね。剣道面での今後の展開を教えてください。

今津:

草の根剣道家」を実践していきたいと思います。

具体的には、生涯剣道を実践していき、同時に自前で道場を経営することで、嗜みとして剣道を楽しむ人を増やしたいと考えています。

現在でも区民大会に出場したり、ねんりんピックに出場したりと、自分が一番になれるようなフィールドを探してチャレンジをするようにしています。

私の人生において、剣道はかなり大きな部分を占めています。

どのように貢献できるかはわかりませんが、「草の根剣道家」として一人でも多くの剣道愛好者が出ればうれしいですね。

参考リンク:

剣道具専門通販セレクトショップ【KENDO PARK】

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