剣道を小さいころからやっている方は、級審査を経験している人も多いと思います。
級審査にあたり、「木刀による剣道基本技稽古法」の演舞が必要となります。(主に三級以上)
そこで級審査の概要とともに、「木刀による剣道基本技稽古法」について解説致します。
|「級」とは?
剣道という武道が指導力、技量、人格などの剣道家としての完成度を示す「格付け」の一つです。
「段位」の制定と並行して、段位の一つ下の「級位」という制度も生まれたものです。
この級位制度は、審査基準や制定ランクが各地域に一任されているため、地域差が非常に大きく、階級数も市町村でまばらなこともしばしばです。
全日本剣道連盟は、正式に段審査の前段階として、「三級、二級、一級」の三つを定めています。(四級以下は各市町村で別れています。)
尚、すでに一級の受審資格を有する年齢であれば、最初から一級審査を受審することとなります。
大阪府剣道連盟の場合
十級…小学校一年生から受験可能
九級…小学校二年生から受験可能
七、八級…小学校三年生(前期、後期)からそれぞれ受験可能
六、五級…小学校四年生(前期、後期)からそれぞれ受験可能
四、三級…小学校五年生(前期、後期)からそれぞれ受験可能
二、一級…小学校六年生(前期、後期)からそれぞれ受験可能
※前期と後期の年2回審査を実施
|試験形態について
学科試験
剣道の昇段審査では学科試験がありますが、昇級審査において筆記試験はありません。
なので特に対策をする必要はありませんが、審査基準において剣道の切り返しや立ち合いの知識はあらかじめ確認しておきましょう。
実技試験
昇級審査では初めに実技試験を行います。
初めに切り返しを行った後に、地稽古形式での試験を審査員の前で行います。
段審査とは異なり級審査の実技試験は多種多様で、地稽古形式の立ち合いがなく面、小手、胴だけを打つことだけの試験だったり、打ち込みがあったりすることがあります。
これも各都道府県によって異なり、確認が必要です。
剣道形試験
昇級審査での形審査は、「木刀による剣道基本技稽古法」です。
日本剣道形の前身となる剣道形であり、一本打ちの技、二、三段の技、払い技、引き技、抜き技、出ばな技、返し技、打ち落とし技に分かれた九つの方であり、その出来栄えを審査してもらいます。
元立ち、掛かりてに当日分かれて行います。
級審査の料金
級審査には大きく分けて「受審料」と「登録料」があり、前者は受験者全員、後者は合格者のみが支払います。
これらは各都道府県によって多少異なるのですが、おおむね同じなので北海道剣道連盟の料金を例として挙げています。
|木刀による剣道基本技稽古法を学ぶ
「木刀による剣道基本技稽古法」は、「元立ち」と「掛かり手」に分かれ9本の技で構成されています。
元立ちが先導し、掛かり手を打たせるという形をとります。
これらの技はすべての技の基本形であり、ここから実践の技、日本剣道形へとつながっていきます。
所作は日本剣道形に準しているので、そちらを参考にしましょう。
参考記事:完全版!!【昇段審査と日本剣道形を学ぶ】
目次
基本1:一本打ちの技
基本2:二・三段の技
基本3:払い技
基本4:引き技
基本5:抜き技
基本6:すりあげ技
基本7:出ばな技
基本8:返し技
基本9:打ち落とし技
基本1:一本打ちの技
面
① お互いに右足より歩み足にて三歩前進して一足一刀の間合に接する
元立ち
② 剣先をやや右に開き機会を与える
掛かり手
③ 右足を一歩踏み出しながら大きく振りかぶりメンの掛け声とともに正面を打つ
④ 左足より送り足で一歩後退して残心
⑤ さらに一歩後退して一足一刀の間合いになる
⑥ 互いに構えを戻す
小手
① 一本目と同じ
元立ち
② 剣先をやや上に上げ機会を与える
掛かり手
③ 右足を一歩踏み出しながら大きく振りかぶりコテの掛け声とともに右小手を打つ
④ 左足より送り足で一歩後退して残心
⑤ さらに一歩後退して一足一刀の間合いになる
⑥ お互いに 構えを戻す
胴
① 一本目と同じ
元立ち
② 手元を上げ振りかぶり機会を与える
掛かり手
③ 右足を一歩踏み出しながら大きく振りかぶりドウの掛け声とともに右胴を打つ
④ 左足より送り足で一歩後退して残心
⑤ さらに一歩後退して一足一刀の間合いになる
⑥ お互いに 構えを戻す
突き
① 一本目と同じ
元立ち
② 剣先をやや右下に下げ一歩後退し機会を与える
掛かり手
③ 右足を一歩踏み出しながらツキの掛け声とともに咽頭部を突く(手ではなく腰で突き、突いたあとは手元を戻す)
④ 左足より送り足で一歩後退して残心
⑤ 構えを戻しながら一歩前進する
⑥ さらに一歩後退して一足一刀の間合いになる
⑦ 構えを解き、双方左足から歩み足にて小さく5歩後退して立合の間合に戻り中段の構えになる
基本2:二・三段の技
小手面
① 双方右足より歩み足にて三歩前進して一足一刀の間合に接する
元立ち
② 剣先をやや上にあげ機会を与える
③ 右足を一歩踏み出しながら大きく振りかぶりコテの掛け声とともに右小手を打つ
一歩後退しながら剣先をやや右に開いて機会を与える
掛かり手
④ 右足を一歩踏み出しなら大きく振りかぶりメンの掛け声とともに正面を打つ
⑤ 左足より送り足で一歩後退して残心
⑥ 構えを戻す
⑦ さらに一歩後退して一足一刀の間合いになる
⑧ 一歩前進して元の位置に戻る
⑨ さらに一歩後退して元の位置に戻る
⑩お互いに構えを解き、双方左足から歩み足にて小さく5歩後退して立合の間合に戻り中段の構えになる
基本3:払い技
払い面
① お互い右足より歩み足にて三歩前進して一足一刀の間合に接する
掛かり手
② 右足を一歩踏み出しながら表鎬を使って払い上げ元立ちの構えを崩し大きく振りかぶってメンの掛け声とともに正面を打つ
③ 左足より送り足で一歩後退して残心
④ 構えを戻す
⑤ さらに一歩後退して一足一刀の間合いになる
⑥ 構えを解き、双方左足から歩み足にて小さく5歩後退して立合の間合に戻り中段の構えになる
基本4:引き技
引き胴
① 双方右足より歩み足にて三歩前進して一足一刀の間合に接する
掛かり手
② 表鎬で応じる
③ 右足を一歩踏み出しながら大きく振りかぶりメンの掛け声とともに正面を打つ
④ やや前進して鍔迫り合いとなる(左拳は中段と同じ位置、掛かり手の鍔が上)
④ 元立ちの鍔元を押し下げる
元立ち
⑦ 押し返して手元を上げ振りかぶり機会を与える
掛かり手
⑧左足を引きながら振りかぶり右足をひきつけると同時にドウの掛け声とともに右胴を打つ
左足より送り足で一歩後退して残心
⑨ 構えを戻しつつ小さく一歩後退して元の位置に戻る
⑩ さらに小さく一歩後退して元の位置に戻る
⑪ 構えを解き、双方左足から歩み足にて小さく5歩後退して立合の間合に戻り中段の構えになる
基本5:抜き技
面抜き胴
① 双方右足より歩み足にて三歩前進して一足一刀の間合に接する
元立ち
② 右足を一歩踏み出しながら大きく振りかぶりメンの掛け声とともに正面を打
※打ったままの位置で振り下ろさない
掛かり手
③右足をやや右斜め前に出しながら振りかぶりドウの掛け声とともに右胴を刃筋正しく打つ
④一歩後退して正対し中段にする
⑤ 一歩後退して正対しつつ中段で残心を示す
⑥ お互いに左足から左に移動して元の位置に戻る
⑦ 構えを解き、双方左足から歩み足にて小さく5歩後退して立合の間合に戻り中段の構えになる
基本6:すりあげ技
小手すりあげ面
① お互いに右足より歩み足にて三歩前進して一足一刀の間合に接する
元立ち
② 右足を一歩踏み出しながら大きく振りかぶりコテの掛け声とともに右小手を打つ
※すりあげられた木刀は自然い左斜め下に向け体側から離れる
掛かり手
③ 左足から一歩後退しつつ裏鎬ですりあげながら大きく振りかぶり直ちにメンの掛け声とともに正面を打つ
④ 正面を打った気勢のまま残心を示す
⑤ お互いに左足か後退しつつ中段になり元の位置に戻る
⑥ 構えを解き、双方左足から歩み足にて小さく5歩後退して立合の間合に戻り中段の構えになる
基本7:出ばな技
出ばな小手
① お互いに右足より歩み足にて三歩前進して一足一刀の間合に接する
元立ち
② やや右足を前に出しながら打ち込もうとして剣先を上げる
掛かり手
③元立ちの起こり頭を捉え右足を一歩踏み出しながら小技ですばやくコテの掛け声とともに鋭く右小手を打つ
④元立ちの鍔元を押し下げる
⑤ 左足より送り足で一歩後退して残心
⑥ 右足を引き中段の構えにして元の位置に戻る
⑦ さらに小さく一歩後退して元の位置に戻る
⑧ 構えを解き、双方左足から歩み足にて小さく5歩後退して立合の間合に戻り中段の構えになる
基本8:返し技
面返し胴
① お互いに右足より歩み足にて三歩前進して一足一刀の間合に接する
元立ち
②右足を一歩踏み出しながら大きく振りかぶりメンの掛け声とともに正面を打つ
※打ったままの位置で振り下ろさない
掛かり手
③右足をやや右斜め前に出しながら表鎬で迎えるように応じ、すかさず手首を返して右斜め前にでてドウの掛け声とともに右胴を刃筋正しく打つ
④一歩後退して正対し中段にする
⑤ 一歩後退して正対しつつ中段で残心を示す
⑥ お互いにに左足から左に移動して元の位置に戻る
⑦ 構えを解き、双方左足から歩み足にて小さく5歩後退して立合の間合に戻り中段の構えになる
基本9:打ち落とし技
胴打ち落とし面
① お互いに右足より歩み足にて三歩前進して一足一刀の間合に接する
元立ち
② 右足を一歩踏み出しながら大きく振りかぶりドウの掛け声とともに右胴を打つ
※打ち落とされた木刀は自然に左斜め下に向ける
掛かり手
③左足からやや左斜め後ろにさばくと同時に木刀の刃部、物打付近で斜め右下に打ち落とし
④直ちに右足から一歩踏み出し麺の掛け声とともに正面を打つ
⑤ 一歩後退して正対し中段にする
⑥ 一歩後退して正対しつつ中段で残心を示す
⑦お互いに左足から左に移動して元の位置に戻る
⑧最後に礼法にのっとり蹲踞し納める
|剣道の昇級審査まとめ
昇級審査についてお分かりなられたでしょうか。
級に関しては際も大きいので最寄りの剣道連盟の情報をよく確認してから試験に臨みましょう。
審査は何より基本が大切です。
正しい気勢、技を心掛ければきっと結果は伴うはずです。
日々の稽古の中で培ってきたものを十分に出せるように、この記事が皆様の助けになれば幸いです。