昇段審査では、実技・形の他に学科試験という最後の関門があります。
剣道の意義や武道において必要な心構えなど、普通に稽古をしていては考えた事もないようなことを聞かれることもあります。
今回はそんな学科試験に対する、模範解答例をご用意しました。
是非参考にしていただければと思います。
|目次
4.中段の構え「姿勢と間合い」での留意すべきことについて述べなさい。
8.「日本剣道形における、三つの礼法」の要領を説明しなさい。
21.「日本剣道形太刀3本目及び小太刀2本目での指導上の留意点」を、それぞれ3つ(3本目)と2つ(2本目)を箇条書きにしなさい。
1.剣道の目的を説明しなさい。
剣道を修める目的は、「心を磨き」「体を鍛え」「技を習得する」ことである。
剣道は単に竹刀で打ち合い、勝敗を決めるだけの競技ではない。
剣道を通して、健康な体を作り、人間として健全な心を育て、正しい礼儀を身につけるために稽古をするのである。
これらを通して、争いや暴力を目的とした武道修行ではなく、健全な社会人としての人間形成を果たすべく学ぶものである。
2.「稽古の心構え」について述べなさい。
稽古という言葉には、2つの意味がある。
1つ目は、「先人の教えについて工夫・研究し、考える」という意味である。
もう1つは、「鍛錬、練磨、修練、修行」といった、修行的意味を持っている。
これらは、常に課題や目標を持って稽古に取り組むと共に、学ぶ姿勢を忘れないことを意味している。
また安全に配慮しながら、教えられた事を素直な心で受け止め、礼儀作法を重んじ、常に旺盛な気力を持って、積極的かつ真剣に取り組む事が大切である。
さらに、稽古の後は必ず自己の稽古を反省し、工夫・研究を怠らないようにする。
3.気剣体一致について述べよ。
気剣体一致とは気合、体捌き、竹刀の動きの三つが常に一緒になって打突しなければならないのであって、一つでも欠けると有効打突にはならない。
・気とは意志や心の働きを言い、充実した気勢や大きな声を出し気持ちを集中させての決断力を言う。
・剣とは刃筋の通った正しい竹刀操作、竹刀の働く作用を指す。
・体とは正しい体さばき、体勢のことで正しく踏み込んで打つことを指す。
相手を打とうと思ってその場で気合いを入れて確実に打ったとしても、踏み込むときの体の体勢が悪ければ有効打突とはならない。
また、気合いを掛けて踏み込んで打っても竹刀の働きが悪ければ有効打突にはならない。
打つ気がなかったが竹刀を振ったら当たったという場合でも気の働きが欠けているので有効打突にはならない。
従って、打突するときには常に気剣体の三つが同時に作用するように心がけなければいけない。
4.中段の構え「姿勢と間合い」での留意すべきことについて述べなさい。
【 姿勢面で留意すべきこと】
1.両肩を落として首筋を伸ばす。
2.首筋を立てて顎を引く。
3.腰を入れて腹部にやや力を入れる。
4.両膝を軽く伸ばして、重心を両足の中間にかけて立つ。
5.目は全体を見つめる。
【 間合い面で留意すべきことは 】
間合いとは、自分と相手との距離をいう。
間合いには、一足一刀の間合い、遠い間合い、近い間合いの3つがある。
1.一足一刀の間合い
剣道の基本となる間合いで、一歩踏み込めば相手を打突することが出来る距離であり、一歩さがれば相手の打突をかわすことが出来る距離である。
2.遠い間合い(遠間)
相手との距離が一足一刀の間合いより遠い間合いで、相手が打ち込んできてもとどかないが、同時に自分の打突もとどかない距離である。
3.近い間合い(近間)
相手との距離が一足一刀の間合いより近い間合いで、自分の打ちが容易にとどくかわりに、相手の打突もとどく距離である。
5.技癖の例を挙げて説明しなさい。
「かぎ足」
かぎ足は剣道の打突に障害があるばかりでなく、膝を痛め腰を悪くする原因になる。
これを矯正するには、「左膝で相手を攻める」と思えば足全体が相手の方向を向き、かぎ足は自然に矯正される。
「右手打ち」
人間はたいてい右利きであり、剣道も右手で打ちたがるものである。
但し、剣道では左手をもと手、右手を副え手というくらい左手で打つのが原則であり、右手打ちは技も決まらず、上達もしない。
従って、右手打ちはどうしても矯正しなければならない。その方法として、剣先で打つ気持ちよりも鍔もとで打つようにという教えがある。
鍔もとで打とうとすれば踏み込みも大きく、右手の力も抜けて打てるのである。
6.「正しい鍔ぜり合い」について説明しなさい。
鍔ぜり合いとは、相手を攻撃したり、相手が攻撃してきたときに、間合いが接近して鍔と鍔がせり合った状態をいう。
自分の竹刀を少し右斜めにして、手元をさげ、下腹に力を入と鍔がせり合うなかで、手元の変化や体勢の崩れから打突の機会をつくる。
7.剣道と礼儀について思うことを述べなさい。
礼儀は人間として、平和な社会生活をする上でも大切であるが、剣道では昔から「礼に始まり礼に終わる」といわれているように、極めて大切なものとされてきた。
どのように技が上達しても、品位や人柄が欠けているようでは、本当の剣道を習ったとは言えない。
剣道は、多くの運動の中でも激しい性質を持っている一つであり、少し間違えると荒っぽい行動になりやすく怪我もしやすい。
これを未然に防ぎ、正しい剣道を習得するためにも礼儀や作法を重視しているのである。
道場だけでなく、家でも、学校でもどのようなことがあっても常に真心をもって礼儀正しくし、立派な人格と精神を養うように心掛けなければならない。
8.「日本剣道形における、三つの礼法」の要領を説明しなさい。
日本剣道形(剣道)に於ける礼法には、立った姿勢でお辞儀をする立礼と、正座の姿勢でお辞儀する座礼とがある。
立礼には二とおりの作法があるが、いずれも真心をこめ、節度をもって折り目正しく行うようにする。
① 上体を約30度前傾して行う礼は、神前や上座、上席に対する礼法である。
② 上体を約15度前傾し、相手に注目して行う目礼は、試合や稽古の際の互いの礼法である。
座礼は、正座の姿勢から上体を前方に傾けつつ、同時に両手を「ハの字」の形にして床につけ、その中心に鼻先を向け、静かに頭をさげる。
一呼吸ほどおいてから両手を同時に床から離し、元の姿勢に戻る。
9.剣道形を修行する目的を箇条書きに5つ以上記せ。
剣道形は各流派のすぐれた技を集め、剣道の技術の中において最も基本的な打突法を組み立てたものである。
礼式、構え、間合い、攻め、打突、気合い、残心など、すべての術技ともいえるもので、次のような目的を達成することが出来る。
- 正しい礼儀が身に付く。
- 正しい姿勢ができ、落ち着いた態度が身に付く。
- 眼が明らかになり、相手の動きや気持ちを観察できる。
- 足の運びが良くなる。
- 悪い癖が直り、太刀筋が正しくなる。
- 気合いが錬れて、気魂が充実する。
- 動作が機敏、軽快になる。
- 適切な間合いを知ることができる。
- 打突が確実となる。
- 数多く修練することによって、気品や風格ができ、気位が高くなる。
10.剣道の座法・座礼について説明しなさい。
剣道の礼には立礼と座礼がある。
稽古や試合をする場合には、一般に立礼が行われ、道場内の稽古の始めと終わりには、座礼が行われる。
①正座の方法
(1)目は前方を正視する
(2)左足をわずかに後ろに引き静かに膝をつき、次に右膝をつく。
(3)かかとの上に尻を落とし、いったん中座の姿勢を取る。
(4)両足の親指を重ねる。
(5)両膝の間を少し開き(こぶし約2つ分)、静かに座る。
(6)あごを引いて背筋をまっすぐに伸ばす。
(7)肩の力を抜き、口を閉じて、腹式呼吸をしながら前方を正視する。
(8)両手は指を揃えて内側に向け、もも(足の付け根部分)に置く。
②立ち方
腰を上げ両つま先を立て、いったん中座の姿勢を取った後に右足をわずかに前に踏み出して静かに立ち、左足を右足に引きつける。
③座礼の方法
正座の姿勢で相手の目を見た後、上体を静かにゆっくりと前方に傾けるとともに、両手を膝前に進めながら、指先を伸ばし、八の字形に置き、静かに頭を下げる。
少しの間その姿勢を保ち、ゆっくりと元の正座の姿勢に戻す。
その時に、首を曲げたり腰を上げたりしないこと。
11.剣道における「三とおりの礼」について説明しなさい。
剣道における礼法には立った姿勢でする立礼と正座の姿勢からおじぎをする座礼とがある。
立礼には二通りの作法があるがいずれも真心をこめ、節度を持って折り目正しく行うようにする。
(1)上体を約30度前傾して行う礼は、神前や上座、上席に対する礼法である。
(2)上体を約15度前傾し、相手に注目して行う目礼は、試合や稽古の際の互いの礼法である。
座礼は、正座の姿勢から上体を前方に傾けつつ、同時に両手を「ハの字」の形にして床につけ、その中心に鼻先を向け、静かに頭を下げる。
一呼吸おいてから両手を同時に床から離し、元の姿勢に戻る。
12.歩み足について説明しなさい。
前後に遠く速く移動する場合の足さばきである。
最も遠い間合いからの打突の技を出す場合に用いる。
13.送り足について説明しなさい。
色々な方向に近く速く移動する場合や、打突の場合の足さばきである。
14.開き足について説明しなさい。
身体をかわしながら相手を打突したり防いだりする場合の足さばきである。
近い間合いからのだと角技を出す場合に用いられることが多い。
15.継ぎ足について説明しなさい。
遠い間合いからの打突をする場合の足さばき。
やや遠い間合いからの打突の技を出す場合に用いられる足さばき。
16.「正面打ち」の留意点を箇条書きに4つ以上挙げよ。
- 振り上げた両腕の下から相手の面が見える程度まで正しく振りかぶる。
- 振り上げた竹刀が左右に曲がらないように注意し、振り下ろしるときは体の正中線を通るようにする。
- 気合いの入った大きな声と共に打つ。
- 打つときに、右足の踏み込みと一致する(一拍子になる)ようにする。
- 打った後、左足を残さないように腰を入れて、充分に引き付け、腰から相手に体当たりするような気持ちで打ち込む。
- 面を打ったときの右腕は方の高さになるように止める。
- 打ったときの両手は、肘を伸ばしてしっかり絞り込む。
- 竹刀の弦の反対側で、竹刀の刃部3分の1より先で打つ。
17.剣道具の着脱順序を説明しなさい。
(1)剣道具の着装は、迅速、確実に行い、稽古(試合)中に脱げたり、緩んだりしないように正確に着ける。
(2)使用後は清潔、整頓に心掛ける。
(3)防具の着装は、垂⇒胴⇒面⇒左小手⇒右小手の順につけ、脱ぐ時はこの逆に行う。
18.相手と向かい合ったときどこを見たらいいか述べなさい。
剣道には目付という言葉があって、自分の目の付け所は、基本的に相手の目を見ながらも身体全体に気を配るようにして、相手の動向を予知したり、打突の機会を捉えるようにする。
19.「試合に臨む心構え」について述べなさい。
試合をするときは勝敗のみにこだわらず、相手の人格を尊重し、正しい姿勢や態度、充実した気勢で、正々堂々と公明正大に競い合う心構えが大切である。
20.「剣道指導者としての心構え」について述べなさい。
剣道の修錬で指導者はもっとも重要な立場にあり、指導者が適切な指導をしているか否かは指導を受ける者の人間的な成長や技術的な成長のすべてを決定していると言っても過言ではない。
剣道では指導者と指導を受ける者とが、互いに身体をぶっつけ合って修錬することが多いので、指導者の人格や技遣いが、指導を受ける者に肌をとおして直接受け入れられ、影響を及ぼすことになる。
基本的な心構えを列挙すれば下記のとおりである。
- 確固とした信念と情熱、愛情と誠意を持って指導する。
- 指導を受ける者の人格と個性を尊重しながら指導する。
- 自らの人格を養い、信頼される指導者となるように努力する。
- 指導を受ける者とともに修錬に励み、技能の向上に努める。
- 能率的、合理的な指導法の研究を心がけ、指導を受ける者が理解しやすい指導の方法を研究する。
- 指導を受ける者の健康や安全に留意する。
21.「日本剣道形太刀3本目及び小太刀2本目での指導上の留意点」を、それぞれ3つ(3本目)と2つ(2本目)を箇条書きにしなさい。
太刀の形3本目
1.打太刀は的確に水月を突き、手元が上がらぬように注意させる。
2.仕太刀は突き返したら、更に突きの気勢で位詰めに進むのであって突くのではないから、その時剣先は突き出さぬようにさせる。
3.仕太刀がやや早く位詰めに進み、剣先を顔の中心に付けた後、元の位置に戻るときは、打太刀の始動と呼吸を合わせて引き始めさせる。
小太刀の形2本目
1.打太刀は一拍子に脇構えから正しく上段に振りかぶり、真っ直ぐにうち下ろし、斜め打ちにならぬよう注意させる。
2.仕太刀は残心をとる時に、ことさら体を進めて接近しないようにさせる。
|最後に
最後に確認しておきたいのは、あくまでこれは学科試験の”参考”にしてください。
丸々写してしまうと注意されてしまうこともあります。
自分の言葉で言い換えたり、自分の意見を付け加えたりなどして自分なりの回答をするように心掛けましょう。
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