今回は、皆さん誰しもが一度は悩んだことはあるであろう「間合い」と「攻め方」についてまとめていきます。
この二つは剣道の醍醐味と言っても過言ではないでしょう。
試合や稽古での相手のとのやり取りの中で、自分の思い通りにいくようになると、さらに剣道が楽しくなること間違いなしです。
しかし、基本技は反復練習で習得できますが、間合いや攻め方は実際の立会の中で学んでいくことが多いものになります。
そんな基本的な攻め方と、今日から使える実戦的な攻め方、また間合いについて記載していきます。
|剣道の「攻め方」
剣道の攻め方は限られたものではなく、その種類は無限にあります。
自分から仕掛けていく攻め方はもちろん、相手によって攻め方を変えたり、相手にわざと攻めさせ、利用する攻め方なんかもあります。
今回は基本的な攻め方、実用的な攻め方をまとめていきます。
自分から仕掛ける攻め方
この攻め方は、「仕掛け」ともいいますが、試合や稽古で相手を「崩す」上で最も基本的な攻め方になります。
自分から仕掛けた攻めをすることにより、相手が「手元が上がる、打ってくる、止まる」といった様々な反応をするのです。
その相手の動きというのが「崩れ」というものです。
簡単に言ってしまうと、その崩れに対して気剣体の一致した打突をすれば一本になるのです。
しかし、相手を崩すというのは容易なものではないですし、同じ攻め方をしたからと言って同じ反応をするとは限らないことを念頭において攻めることが重要です。
攻め方に対してどんな反応を示すのか、相手の特徴を考慮して技を選択することが重要です。
・竹刀を押さえる
まず紹介するのが、相手の竹刀を押さえる攻め方です。
相手と構え合っている状態(=相手が崩れていない)では、なかなか打つことはできません。
上記の状態のまま、無理に打っていくと、反対に返し技や出頭を打たれてしまう危険もあります。
そこで、相手の竹刀を利用し、隙を作ることが重要です。
(実例)
表から相手の竹刀を押さえると、相手が竹刀を中心に戻そうと反発してきます。その時、小手に隙が生まれます。
また表を押さえて相手の竹刀が反発してくることで、小手だけではなく、裏の面にも隙が生まれます。
相手によって隙の生まれ方などは異なるため、相手と稽古、試合をする中で特徴を見極めて技を出していくことが重要になります。
このように、相手の竹刀を利用し攻めることにより、技に厚みが増します。
・竹刀を払う
次に竹刀を払う攻め方です。
なかなか構えが崩れず手元を動かさない硬いタイプに有効です。
そんな相手には表か裏から竹刀を払うことにより、相手を自然と崩すことができます。
竹刀を払っての攻めは、相手が守りに入っているときや強引に取らないといけない時などに有効な攻め方の一つです。
(実例)
相手が構えが崩れない人に対して、竹刀を裏から払うと小手に隙ができるのでそこに小手を打ちこみます。
そこで小手を打突をしておくと、相手が小手が怖くなり今度同じく裏から払ったときには、小手を隠そうとして面に隙ができます。
このように「裏から竹刀を払う」という攻めから色々な攻めのパターンというのが作り上げることができます。
しかし、強者になってくるとそれに対してさらに先読みをしてきて逆に誘われることなどもありますので、相手の様子を見ることが必要な場合もあります。
参考記事:【剣道家が実践すべき2つのポイント】’15WKC日本代表 村瀬諒(1)
相手を利用する攻め方
剣道には「後の先」という言葉があります。
これは相手に攻めさせ、相手を利用して打つということです。
これを実践するためには、相手の手の内を熟知している必要があります。
相手に技を出させるには、相手が打ちたいという気にさせなければなりません。
その相手が打ちたいと思うのは、「ずっと攻められていて、そろそろ打たないとやばい心理状況」や、「一本先取されて取り返さないといけない状況」など様々なパターンが想定されます。
そのような相手の心理状況を読みながら、攻めることにより相手を利用することができます。
打突部位を開ける
一つ目は、自分の打突部位を開けて相手に「打てる!」という気持ちにさせて、打たせてそこを利用する攻め方です。
あえて自分の打突部位を開けることにより、そこに隙が出来たと思い込み打ち込ませるのがこの攻め方になります。
この時に注意しないといけないことは、自分が打てる体勢で打突部位を開けることです。
それが打てる体勢でなければ、ただ打ち込まれて相手の一本になってしまうので気をつけなければいけません。
また相手を利用する攻め方においては、相手が来るのを待つのではなく、相手が打つように仕向けることが重要となります。
(実例)
例えば、手元を浮かせれば、相手は小手に来る可能性が高いでしょう。
そして小手が来た時、その小手を抜いて振り上げれば、相手に隙が生まれ、かつ自分は打つ準備ができている状態になります。
また、間合いに入り相手が相面を狙おうと面を打って来るのに対し、胴を狙うという技もあります。
そこで重要になるのは、攻めて誘う時に相手に本当に面が来るように思わせることです。
技を見せておく
二つ目は、序盤に自分から技を出し相手に技の意識づけをさせて、その技に対応して打ってくるように仕向けて、利用する攻め方です。
これは、かなり高度な技術ですし、経験や特に相手の特徴を理解することが必要不可欠です。
(実例)
試合の序盤で、自分から小手を打っていきます。
そして「小手を狙っている」という意識を相手に持たせます。
その後、自分が打つ小手に対して、相手が小手面を合わせてこようとするところ狙います。
自分は小手の後に、相手の小手面を合わせてくるのを利用して、そこに返し胴を打ちこみます。
このように、相手の裏の裏をかいて技を出すのかなり高度な攻め方になります。
ここで特に重要なのが、相手にどれだけ自分の技を意識づけさせるか(この場合:小手)それにより相手が反応しない場合もあるので、しっかりと打ち切ることが重要になります。
参考記事:【剣道の真髄を追求する】伊田テクノス剣道部 橋本桂一
|剣道の間合い
剣道はただ打つだけではなく、先ほど紹介した攻めや、間合いが非常に重要になってきます。
間合いを把握すれば、より相手を打てるようになり、また打たれることも少なくなるでしょう。
間合いは攻めと同様、稽古や試合などの実戦の中で身につけていくほかありません。
この記事では、基本的な部分と実戦的な部分の両方を紹介していきます。
打突の間合い
間合いを把握せずに攻めると、逆に返し技や出鼻技を打たれてしまうリスクがあります。
そこで、自分が打突に行くまでの間合いを把握して攻めることが重要となります。
打突できる間合いは、人によっても異なります。
一般に、身長が高い人はより遠間から打突をすることができます。
遠間では、相手の技が当たりにくいため、比較的有利に展開することができます。
しかし、むやみに打ち込んで行けば、返し技を打たれる可能性が高くなります。
あらかじめ技を散らして、相手の意識を分散させたり、相手がこの間合いなら大丈夫であろうと気を抜く瞬間を作ることが必要となります。
そういった状況を作った上で、自分が打てる間合いであれば、一本を取れる大きなチャンスとなります。
逆に身長が低い人は、遠間からは打突できない一方、近い間合いでは素早く打突に入ることができます。
この場合、自分から攻めて間合いを詰めることで、打突のチャンスが生まれます。
この時に、相手が意図しないタイミングで間合いを詰めるか、相手が対応できないスピードで間合いを詰めると、大きななチャンスが生まれます。
また、間合いを詰めるところで相手が焦って打突をしてくるようであれば、返し技や出鼻技のチャンスとなります。
このように、いずれのパターンにおいても、自分が打突をできる間合いを把握した上で、相手にも打たれにくいシチュエーションを作ることが大切です。
参考記事:【対人感覚こそ剣道の本質】筑波大学剣道部男子監督 鍋山 隆弘(2)
守勢での間合い
実際の試合においては、守らなければいけない場面というのは必ずやってきます。
その時に間合いを把握していないと、守りきることはできません。
守勢の場面では、中途半端な間合いが一番危険です。
相手が打てない遠い間合いか、引き技しか打てない近い間合いのどちらかを維持するようにしましょう。
単に後ろに下がって遠間を維持すると、相手にプレッシャーがかからず、相手が技を出しやすい状況になることから、時間が経つにつれて苦しい状態になります。
そこで、タイミングを見て間合いを詰めることも重要になってきます。
相手が打ってこれないタイミングを見計らって、一気に間合いを近間まで詰めることで、相手の打突の選択肢を奪うことができます。
このように守勢の時でも、間合いの駆け引きをすることによって試合をコントロールすることができます。
|攻めと間合いは剣道の醍醐味
いかがだったでしょうか。
剣道とは、ただ基本技を練習していれば勝てる競技ではありません。
実戦経験を積む中で、間合いや攻め方を学んでいき、頭と身体で覚えることが重要です。
今回紹介した攻め方、間合いは基本的なものであり、意識すればできるものばかりです。
この他にも、相手との攻防のパターンは無数に存在します。
自分に合った攻め方や間合いを、稽古の中で探していくと良いでしょう。
間合いと攻め方を理解すると、剣道の幅が広がり、今より剣道が楽しくなることでしょう。
「自分だけの剣道」を、稽古の中で追求してみてください。