▼チームインタビュー▼
「次世代のチームビルディング」
〜福岡大学剣道部 剣道部助監督渡邉孝士郎・2018男子主将川上龍平・2018女子主将新開樹里〜
九州の大学でありながら、近年の強化策により全国的強豪大学を目指す福岡大学。
若手指導者である助監督渡邉孝士郎氏のもと、新世代のチーム強化についてお伺いいたしました。
(以下 KENDO PARK=KP 渡邉孝士郎氏=渡邉 川上龍平氏=川上 新開樹里氏=新開)
-渡邉孝士郎(わたなべこうしろう)-
島原高校、筑波大学出身。
若手指導者ながら海外でも数々の指導実績があり、中国代表専属コーチ等を歴任。
現在、福岡大学剣道部助監督。
父は島原高校校長の渡邉孝経氏。
-川上龍平(かわかみりゅうへい)-
香椎高校出身。
2018年度福岡大学剣道部男子主将。
全日本学生優勝大会出場ほか。
-新開樹里(しんがいじゅり)-
福岡工業大学附属城東高校出身。
2018年度福岡大学剣道部女子主将。
全日本女子学生剣道選手権大会ベスト8、全日本女子学生剣道優勝大会ベスト8ほか。
|根底からの意識改革
KP:
渡邉先生が赴任して約2年とお聞きしましたが、どのように強化に取り組んでいらっしゃいますか?
渡邉:
私が赴任した昨年の福岡大学の稽古は、基本稽古と地稽古という非常にシンプルなものでした。
しかし、昨年度の男女の試合を観て、全国の強豪大学に比べて、剣道の体力や地力の明確な「差」を感じました。
このままでは、せっかくのスポーツ科学部(=学部)主体の大学剣道部としてもったいないと思い、指導スタッフ陣で話し合って4年間でしっかりと力をつけていくような稽古方針に致しました。
KP:
具体的な施策を教えてください。
渡邉:
基本的な稽古量確保のため、まず朝練を開始致しました。
朝練で基本稽古を行い、午後により実戦的な稽古を行うようにしています。
また、朝練が終わった後は学食や寮で必ず朝食を摂らせています。
午後は稽古に加えて、筋力トレーニングを行っています。
現在、私の他に外部指導者が2名おり、彼らに基礎基本となるいわゆる剣道の定石となる部分をご指導いただいています。
また、部長の先生はスポーツ整形外科医であり、怪我の対応や予防のための知識も与えていただいています。
一方で私は、これまで様々な先生方から教えていただいた指導や筑波大学で学んだことをベースに、体力、競技力向上の部分の指導を担当しています。
|双方向のコミュニケーションを図る
KP:
学生とのコミュニケーション面はいかがですか?
渡邉:
比較的学生と歳も近いこともあり、普段はフランクに話しています。
また客観的に自分の剣道に向き合ってもらうため、「剣道ノート」をつけさせています。
日々の稽古について自分なりに分析し、自己採点で点数をつけることで、剣道のモチベーションを高く維持することを目的としています。
私としても、学生と1対1で的確な指導をするには「言語化された運動学的視点」が不可欠だと考えています。
その意味でも、学生が何を考え、どのように技を出しているのか文字でコミュニケーションをとることで、自身の指導の引き出しを増やすことにも役立てています。
KP:
現役学生にお伺いします。福岡大学剣道部に入ったきっかけを教えてください。
新開(女子主将):
私はもともと、九州の強豪大学で剣道を学びたいと考えていました。
そんな中、尊敬する先輩も福岡大学剣道部に所属していたので、進学を決めました。
川上(男子主将):
私は福岡出身で、家族に福岡大学出身者が多かったので、自然の成り行きで入部したイメージです。
KP:
渡邉先生が就任してから稽古内容が変わったとお伺いしましたが、指導を受けていかがですか?
新開:
最初は戸惑いましたが、今は稽古の意味合いやコンセプトも共有できつつあるので、チームとしてだいぶまとまってきたと思います。
とはいえ稽古量がかなり増えましたので、女子部員間では声を掛け合って全員でモチベーションを維持するようにしています。
川上:
部員全体のモチベーション維持には、かなり気をつけています。
私自身があまり叱咤激励していくようなタイプではないので、まず私が率先して稽古に取り組み、その姿勢で部員を引っ張っていくように意識しています。
KP:
男女それぞれの取り組みを教えてください。
川上:
男子女子共に、全日本学生優勝大会での上位進出を目指しています。
特に男子は、昨年(2017)の同大会1回戦で明治大学に大敗したため、その雪辱を晴らすことが第一目標です。
まずは稽古の質を上げるため、ミーティング回数を増やしました。
高校生までとは異なりますので、ただ単に稽古を重ねるのではなく、稽古の内容や意味を理解して取り組むようにしています。
個人的には、もともと攻撃的なスタイルでいわゆる”先鋒タイプ”だったのですが、後ろのポジションを任されることが多くなったので、シチュエーションに応じた戦い方を身に付けたいと考えています。
新開:
女子は昨年(2017年)全日本女子学生優勝大会でベスト8に進出したのですが、準々決勝で国士舘大学に力負けを喫しました。
内容から見ても、完全に稽古の差が出たような試合でした。
昨年以上の成績目指す上では、一本を取りきれないところに課題があると感じました。
そこで打ちの弱さや決め方を改善するよう、各自が課題を持って取り組んでいます。
個人的には、打突時の肘の角度を意識しています。
|九州を代表するようなチームを目指す
KP:
部員間のコミュニケーションはいかがですか?
新開:
女子はチームワークとメリハリを大切にしています。
これまでの上下関係を一旦リセットし、あえて四年生が雑用などに動くようにしています。
またオンオフのメリハリをつけ、稽古外でも積極的に声をかけるようにしています。
これらにより、特に後輩が思い切り剣道に取り組めるような環境ができてきたと思います。
剣道外のことも相談しやすい関係を築けているので、チームワークとしても良好な状態だと思います。
川上:
男子は特に具体的な施策はしていないですし、上下関係を強いるようなこともしていないです。
というのも、後輩が自然と先輩を慕うような関係を構築できているので、コミュニケーション面は良好ですし、チームとしての統率も取れてきていると思います。
また「剣道ノート」をつけることで、自分の剣道を言語化する機会となり、部員間でも剣道について話しやすくなったと思います。
今年の4月からスタートしたばかりなのですので、今後どれくらい具体的な成果が出てくるか楽しみです。
KP:
最後に、福岡大学剣道部を志す学生たちにメッセージをお願いします。
渡邉:
福岡大学は、まだまだ「これから」のチームです。
そのため、他の大学に比べて指導陣と学生が一体となってチームを作っていける魅力があると思います。
一緒に全国上位の常連チームを作り上げてくれるような生徒を、心よりお待ちしております。
参考リンク: