小手打ちは、試合を組み立てていく上で大変重要な技です。
一方で、「打つのが難しい」及び「打たれて痛い」という声が多いのも事実です。
今回はそんな剣道の基本技である小手について、「打ち方」と「打たせ方」に分けて述べていきたいと思います。
|小手打ちの基本的な考え方
小手の打ち方や受け方など実践的な話をする前に、小手打ちの基本的な概念形態についてご紹介いたします。
小手打ちの意義
小手打ちとは、真剣でいえば相手の手首を切り落とす技です。
面・胴・突のどれもが、相手を即死に至らせる技であるのに対し、小手打ちは相手が剣をもつ手首を切り落とし戦闘力を奪う技です。
つまり少しでも失敗すれば、相手がもう一度切り掛かってくる恐れもあります。
したがって、確実に一発で打突部位を捉えなければなりません。
更に打突部位の中で一番的が動く部位でもあるので、相手の動きをよく見るだけではなく、動きを予測したり動かしたりということも必要とされます。
|小手打ちの基本的な打ち方
それでは実際に様々な小手の打ち方を見て行きましょう。
大きく小手打ち
大きく振りかぶって小手を打つ、一番基本的な打ち方です。
”大きく”といっても、面打ちの時ほど上まで振りかぶる必要はありません。
振りかぶった時に、自分の手の下から相手の小手が見える程度のところまで振りかぶり、軽く振り下ろします。
打突と同時に踏み込み、すかさず相手の懐に体を寄せます。
この時の注意点として、相手の小手は自分から見て少し左寄りにありますが、竹刀を左から回したり少し左にずらしたりする必要はありません。
あくまでまっすぐ振り下ろしつつ、相手の右足を踏むように踏み込み足をする事で竹刀の振りはまっすぐでもしっかりと打突部位を捉えることが出来ます。
小さく小手打ち
後ほどご紹介しますが、小手打ちを実際に試合で使う際一番よく使うのが出端(でばな)小手です。
相手が面を打とうと思って振りかぶった瞬間に手元が上がるところをすかさず捉えます。
つまり小手打ちで最も重要になるのが、「小さく早く」という事です。
相手の竹刀を上からギリギリ超えられる程度の最小限で竹刀を持ち上げ手首の力で打突部位に落とします。
最後まで剣先を中心から外さず攻め入って、1拍子で振り上げ振り下ろしをするのがポイントです。
|小手打ちの応用技
次に応用・工夫した小手打ちを数種類ご紹介します。
ここからは、自分の剣道スタイルによって合う合わない、得意不得意がはっきりとわかれてきます。
面小手(フェイク小手)
面を打つように見せて相手が面を避けようとして、手元を浮かせたところに小手を打ち込む技です。
ポイントは2つ。
1つ目はしっかりと相手が面を警戒するように遠間から思い切って面に飛ぶことです。
面小手のための面では相手が防御反応示さないので、自分が本当に面を打つ時を想定してフェイントをかけます。
2つ目は面から小手の速さです。
自分である程度のリズムを頭の中でイメージしておいて、出来る最速の速さで面から小手に落とします。
2回踏み込むので音が鈍くなりがちですが、しっかりと手首で強く落としてあげればいい音が鳴ります。
参考記事:【30歳からの社会人剣道】三井住友海上剣道部副主将 井口亮(2)
※記事中に面小手(フェイク小手)の打ち方に関する記述がございます。
出端(でばな)小手
これも、応用編の中ではとても基本的な技です。
相手が面を打とうと手元をあげたところを、すかさず小手を打ち込みます。
相手よりも先に打てる体勢を作ること、最後まで中心を攻めている事が求められます。
普通の小手打ちに対して、出端小手の場合相手も前に出てくるので、小さく踏み出して素早く小手を捉える練習を繰り返していく必要があります。
払い小手
自分の竹刀を一度相手の竹刀の裏に持って行き、小手を開けるように竹刀をを払いのけて打つ技です。
構えが崩れない相手、腕力が弱い相手に有効です。
ポイントは自分が右手と竹刀が繋がっているイメージで、手でものを払うように相手の竹刀を払う事です。
また、剣先ではなく竹刀の柄元(手元に近いところ)の方を払った方がより少ない力で効果的に払う事ができます。
画像出典:ライブドアNews
|引き小手
小手打ちは前に出る技だけではありません。
得意不得意がはっきりしますが、引き小手も何種類かご紹介します。
基本的な引き小手
鍔迫り合いの状態から相手を下げる、もしくは自分が下がり左拳を引きながら、右手首で竹刀を下に落として小手を打突します。
打ったままの形を維持したまま全速力で後ろに下がり、残心を取ります。
退くスピードが少しでも遅いと後打ちを狙われる可能性がありますし、相手との間合いが切れない為一本にはなりません。
中間までの引き小手
初立ちや構えあった瞬間に有効な技です。
竹刀を少しだけ振りかぶりながら一歩で大きく間合いに入り、相手の手元が浮いた所に引き小手を決めます。
体勢を前から後ろに瞬時に切り替える事と小手を落とす時の手首の強さが求められます。
画像出典:LET’S KENDO
|小手の打たせ方
面や胴を打たせるのに比べて、小手を打たせるのは強い痛みを伴う場合があります。。
パワーのある選手の小手打ちを連続で受けると、打突箇所が腫れてしまったり、場合によっては骨にヒビがはいってしまうケースもあります。
小手をどう打たせれば痛くないか、又は小手を打たせる時の痛みを軽減するグッズをいくつかご紹介します。
基本的な打たせ方
剣先はやや左斜め上に傾け、手を構えの位置よりも15cm程度前に出します。
大きく空けすぎる必要はありませんので、相手がまっすぐ降ってきたのに対し竹刀一本分だけ左に自分の竹刀をずらして小手を開けてあげます。
可能な限り、構えの位置から動く幅を小さくする事がポイントです。
自分の体と腕の中に出来る三角形を崩さずに、右足を一歩前に出しながら相手の体当たりを受けます。
※「これが正解」というものはございませんので、打たせ方の一例としてご活用ください。
痛い時の対処法
正しく小手打ちを受けていても、どうしても痛い時の対処法をいくつかご紹介します。
1.小手を少し下げる
相手が打つと同時に自分の小手を少しだけ下に下げることで、衝撃が吸収されて心なしか痛みが和らぎます。
2.右手を少し開く
右手の手首には橈骨(とうこつ)という骨があります。
右手を絞った状態で小手を打たせると、橈骨(とうこつ)の角に竹刀が当たりとても痛いのです。
右手を少し開いて手の甲の下の、橈骨(とうこつ)の平たい部分で小手打ちを受けることで痛みが和らぎます。
画像出典:医療法人社団おると会公式HP
3.小手の位置をずらす
これもまた当たる瞬間に少し右手をずらすことで竹刀の当たる場所を調整します。
ずっと同じ部位で小手打ちを受けていると、当然ダメージが蓄積されますので、あえて打たせどころを分散する事で痛さを中和します。
自衛グッズ
以上の対策をしてそれでもダメだった場合、やはり防具屋さんで自衛グッズを購入しましょう。
代表的なものは小手サポーターです。
手首にクッションの入ったサポーターを巻くことで、小手を打たれた際の衝撃を大幅に減少させます。
また、もともと打突部位の綿が分厚い小手を販売しているところもあります。
専門用具がないときの簡易的な方法ですが、手ぬぐいをうまく折りたたんで小手の下に入れる事もできます。
自分に合った方法で、手を保護するといいでしょう。
画像出典:東京正武堂オンラインショップ
|小手技を練習しよう
小手を習得すれば剣道のレベルも上がり、幅も広がります。
打ち方と打たせ方両方を学ぶことで、皆で技術向上が望めるでしょう。
ここで紹介したものは基礎的な部分であり、小手技の中の一部にすぎません。
稽古を重ねて、自分だけの技を見つけ出してください。
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