【”桐蔭イズム”のチーム作り】桐蔭横浜大学監督 髙瀬武志

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桐蔭横浜,剣道,高瀬

▼チームインタビュー▼

「”桐蔭イズム”のチーム作り」

〜桐蔭横浜大学監督 髙瀬武志〜

桐蔭横浜大学現監督にして、学生時代から輝かしい事績を誇る髙瀬武志氏に、チーム作りについてお伺い致しました。
強化部活指定を受け、ほぼチーム立ち上げから手がけられた手腕を語っていただきました。

(以下 KENDO PARK=KP    髙瀬武志=高瀬)


-髙瀬武志-
1986年生 富山県出身
小学校中学校時代を富山県で過ごした後、神奈川県の桐蔭学園高校へ進学。
高校時代に全国高校総体2連覇、全国選抜大会優勝、玉竜旗大会優勝を果たす。
その後筑波大学へ進学し、関東学生剣道優勝大会準優勝。
大学卒業後は筑波大学大学院、広尾学園非常勤講師、順天堂大学助手を歴任。
2015年より桐蔭学園・桐蔭横浜大学へ奉職、ならびに剣道部監督に就任。
桐蔭学園高校剣道部コーチも兼任。
卒業後の主な実績に、全国教職員大会3位、神奈川県教職員大会優勝、国民体育大会出場、全日本都道府県対抗大会出場ほか。
剣道錬士六段(2019年3月現在)


|強化部活としての船出

KP:
桐蔭横浜大学監督就任の経緯を教えてください。


髙瀬:
筑波大学大学院で修士号取得後、広尾学園、順天堂大学にて非常勤講師、助手を務めておりました。
その後、自分の将来について悩んでいた際に、桐蔭学園の恩師である冨田先生に相談し、コーチとして桐蔭学園に戻ることとなりました。

桐蔭学園でコーチをしていたのですが、2015年に隣接の桐蔭横浜大学で学園創立50周年を期に、大学剣道部が指定強化部活に指定されることとなりました。
そこで指導者を募集しており、冨田先生の推薦で桐蔭横浜大学の指導にあたることとなりました。

当時監督でいらっしゃった田中宏和先生に部長に就任していただき、私が監督として現場指導にあたる体制でチーム強化がスタートいたしました。


KP:
強化部活として、チーム立ち上げ時について教えてください。


髙瀬:
もともと剣道部はサークルの延長のようなチームでしたので、最初に見学へ行った際は、ダンススタジオのようなところで軽く切り返しをして、あとは面を外して談笑しているような状態でした。

私は大学まで剣道を専門的に学んできたので、初めて目にする光景に驚いてしまいました。

そこでまず、その時点での全部員と面談をすることにしました。
部員名簿をいただいたのですが、十数名の部員の中には幽霊部員のような学生もいて、面談するだけでも大変でした。

彼らには、これから強化をしていく旨と、剣道に取り組む意思を確認し、結果として合計6名の部員が残ってくれました。
強化といっても元々は大学側の意向ですので、彼らに押し付けてはいけないと思い、とにかく彼らの意思を尊重するように致しました。

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チーム立ち上げ時から現在までを語っていただきました。

|部員6名からのスタート

KP:
稽古はどのように行ったのですか?


髙瀬:
専用道場がありませんので、当初はそのままガラス張りのスタジオで稽古したり、大学体育館の一角をお借りしたりしていました。
その後冨田先生にお願いし、桐蔭学園高校の道場でも稽古させていただくようになりました。

あくまで「強化」ですので、稽古メニューはある程度厳しかったと思います。
とはいえ人数が少ないため、追い込みや打ち込みをしてもすぐに終わってしまいます。
そこで、とにかく「明るい雰囲気づくり」は意識致しました。

桐蔭学園高校ではかなり厳しく指導していたのですが、高校生への指導をそのまま持ち込んでも選手が続かないと考え、常に笑顔を意識することと、稽古メニューもゲーム感覚で取り組めるものを用意致しました。

人数が少ないため上下関係もなく、チームとしての雰囲気は良かったと思います。


KP:
そのあたりの指導メニューは、髙瀬先生独自のものですか?


髙瀬:
もちろん私が独自にアレンジしてはおりますが、ベースとなっているのは桐蔭学園や筑波大学で経験した稽古です。
筑波大学時代には、地元の子供達に剣道を教えたりするプログラムもあったので、そのような経験をもとに最適なメニューを考案致しました。

また「剣道ノート」を導入し、生徒とのコミュニケーション向上を図りました。
本学には寮が無い上、アルバイトも許可しているので、稽古以外で学生とコミュニケーションを取る機会が限られています。
そこで剣道はもちろんのこと、生活面から進路も含めてノート上でやり取りするようにしています。

部員が10倍以上になった現在でも、週に1回は全員分添削を行なっています。


KP:
その時の戦績はどうだったのですか?


髙瀬:
そもそも部員が6名しかいないため、チームが組めません。
そこで関東女子新人戦では、3名のチームで出場いたしました。

すると、1回戦の対戦相手が偶然同じ3名のチームだったこともあり、結果として1回戦を突破いたしました。
3名の選手のうち1名は吹奏楽部出身で、全くの剣道未経験から掴んだ勝利でした。
1回戦が終わった段階で選手皆が泣いていたのが、とても印象的でしたね。

また、6名の部員の中で1名比較的強い女子部員がいたのですが、彼女が公式戦で東海大学Aチームの大将を敗るということもありました。
このように、少しずつではありますが強化の手応えを感じ始めました。

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創部期に剣道部の基礎を築いた田中宏和部長。

|ゼロからの選手集め

KP:
並行して、スカウティングによる選手集めも開始なさいました。


髙瀬:
選手を集めるため、桐蔭学園高校の試合や錬成会、練習試合にも全て同行し、そこに名刺とパンフレットを持参して各高校へ受験の案内を行いました。

とはいえ「桐蔭」の名は比較的浸透しているものの、「桐蔭に大学がある」ことはあまり知られていない状況でしたので、選手集めには本当に苦労しました。
「他所じゃなく、桐蔭学園から選手を取ってくれば良いだろう?」と言われたこともありますし、案内したそばからパンフレットが置き忘れられていることもありました。

それでも何とか選手を集め、強化指定後の第1期生として推薦入学者5名を迎えました。
一般入学の部員も合わせて、10名の部員を迎えることができました。
彼らが本年(2019年)3月に卒業するのですが、生徒として以上にチーム立ち上げを一緒に行なった仲間ですので、大変感慨深かったです。


KP:
そこからどのように強化をしていったのですか?


髙瀬:
初めは、まず「勝負になる」ところまでチームを引き上げることが先決でした。
というのも、この時出場した神奈川県大会では、男子団体で東海大学と対戦し、スコア0-7・本数0-14と私の記憶にもないような大敗を喫しました。

これを見て、逆に開き直れた面はあると思います。
最低限「戦える地力」さえつければ、勝負できる自信はあったので、そこを重点的に指導いたしました。

それ以降は、毎年推薦で10〜20名前後の生徒が入ってくることもあり、神奈川県大会でもベスト4以上には必ず入っています。
昨年(2018年)は、男子団体で神奈川県大会決勝に残るまでになり、個人でも準優勝を果たすなど、地力が付いてきたことをチーム全体として実感しているところです。

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強化開始時から、部員は10倍以上に増加。

|「桐蔭スタイル」の指導法

KP:
現在の目標はどこに置いているのでしょうか?


髙瀬:
現在は男女ともに神奈川県大会優勝と、全日本学生に個人団体で出場権を得ることです。
昨年(2018年)は、男子団体で敗者復活戦2戦目まで進出し、大将戦の1本目までリードしていました。
そこから引っくり返されてしまい、惜しくも全日本学生の出場権を逃しました。
女子も新人戦でベスト16に入るなど、数年前までは考えられないような成果を挙げてくれました。

いずれの試合も最後は大変悔しかったのですが、一方で「戦える地力」は付いてきていると思うので、あとは「勝負」の部分に取り組む段階に来ていると感じています。


KP:
現在の指導スタイルを教えてください。


髙瀬:
桐蔭学園のスタイルを踏襲し、「良いところを伸ばす」ことを意識しています。

桐蔭学園の冨田先生は、まさにこのスタイルで、私自身も打ち方や基礎の部分を大きく変えるような指導は受けませんでした。
その代わり、「相手との勝負」の部分は繰り返し指導されたように思います。

大学剣道は4年間、実質3年半程度しかないので、基礎の打ち方から変えようとすることは得策ではありません。
それよりも、「打つ前のアプローチ」と「相手をどう使うか」を指導しています。

これは経験に基づく部分が大きいので、私の経験からなるべくわかりやすく伝えることを意識しています。
そのために、例題を出して説明したり、時にはホワイトボードを使って座学のような形で指導もしています。

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指導はかなり実践的である。

|心技体のバランスを意識する

KP:
稽古を拝見していると、具体的なシチュエーションを意識したメニューが多いように感じます。


髙瀬:
そうですね。
基本打ちはどこへ行っても同じですが、応じ技や引き技等は人によっても得意不得意があるので、技のパターンを変えながら各自のスタイルを重視して行なっています。

もちろん、私が学んできた技を教えることもあります。
というのも、私は選手としては小柄な部類でしたし、天才型ではないので「竹刀を振り込む」ことで技術を磨いてきました。
また学生を指導するために、大学院や順天堂時代に上段や二刀流にも挑戦いたしました。
彼らにはそういった経験を、存分に伝えたいと考えています。


KP:
短い稽古の中で、全てを伝えきるのは難しいと思います。


髙瀬:
稽古は1日のうち2時間程度ですので、学生には残りの22時間の過ごし方が重要だと話しています。

超一流になるには、「心技体のバランス」が大切だと考えています。
稽古では主に「技」の部分を磨きますが、 それ以外の時間で「体」の鍛錬をし、その積み重ねで「心」、つまり精神力や意識を高める取り組みをするよう指導しています。

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稽古は、厳しくも楽しく行うのがモットー。

|「人間力」を高める

KP:
生徒に求めるものを教えてください。


髙瀬:
彼らは必ずしも警察官や教員になるわけではないので、剣道部での取り組みが今後の人生にどう活きるかを常に考えて欲しいと思います。
そして社会に出て通用する人材になるため、学生生活を通して「人間力」を磨いてくれれば嬉しいです。

実は桐蔭横浜大学では、選手選考にあたっても取得単位数のバーを設けています。
各学年で一定の単位数を取得していないと、選手には推薦されない仕組みです。
これは「当たり前のことを当たり前にする」ことを意識させる取り組みです。

また剣道以外のことでも、私の経験から話せることは学生に話すようにしています。
最近の子はおとなしい子が多いので、私にガンガン質問してくるような学生はあまり多くありません。
そこで、こちらからも積極的に声をかけるようにしています。

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ベトナムのトーナメントで優勝。

|国際交流事業

KP:
桐蔭横浜大学剣道部では、昨年度(2018年)から「国際武道研修」を実施されていますね。


髙瀬:
これは始まったばかりの取り組みなのですが、年に1度海外での剣道交流を行っています。
2018年はベトナムに、2019年はシンガポールへ訪問いたしました。

これは生徒に国際感覚を掴んで欲しいと同時に、今後に人生における視野を広げて欲しいという考えからです。

2019年からは、大学より正式に単位認定を受けておりますので、希望する生徒は授業の一環として参加することができるようになりました。
これも、剣道を通して知り合った方々とのご縁のおかげで成り立っています。


KP:
最後に桐蔭横浜大学入学を目指す高校生にメッセージをお願いします。


髙瀬:
桐蔭横浜大学剣道部はまだまだ歴史も浅く、強豪校と呼べるチームではありません。

しかし「とにかく剣道が好き」で、「桐蔭の剣道を学びたい」という学生には最大限報いる体制が整っています。
また歴史が浅い分、国際交流に加えて地元道場や中学での剣道指導等、新しい取り組みも数多く行っています。
2019年からはトレーナーやコーチ陣も迎え、より強固な体制で指導にあたっていきます。

それでも私たちが掲げているのは、「学生が主役」ということです。
そのためチーム内にも、無用な上下関係等は存在しません。

このように、自らチームを作り上げて、自ら人生を切り開きたいという学生には最適な環境だと考えています。
皆様のチャレンジを心よりお待ちしております。

<取材・文:永松謙使>

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「海外武道研修」の様子。

▼桐蔭横浜大学剣道部▼

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