剣道の場合、大抵の人が日常的に洗うのは家で簡単に洗うことのできる手拭い・胴着・袴の3つです。
ではそれ以外の防具(剣道具)、つまり面・小手・胴・垂等はどうしているのでしょうか?
特に面と小手は汗も染み込みやすい為、ニオイはもちろん定期的にお手入れをしないと傷みも激しくなってしまいます。
プロの専門家に頼むケースと、自宅で洗うケースの両方を解説致します。
※記事内に、防具クリーニングサービスのご案内がございます。
※全日本剣道連盟指定公式呼称は「剣道具」ですが、混同防止のためこちらの記事では一般通称の「防具」を使用いたします。予めご了承ください。
|ニオイ汚れの原因
本題に入る前に、そもそもなぜ剣道の防具は臭いと言われるのか、そのニオイや汚れはどのように付くのかというのを、予防法も含めてご紹介します。
実は汗は無臭!?
「汗臭い」という言葉があるように、大抵の方は汗自体が臭いものだと思っているのではないでしょうか。
汗をかいた後、体や防具が臭くなるのは事実ですが、これは実は「汗」そのもののニオイではありません。
人間の体から分泌される汗はもともと無臭で、臭うものではありません。
ニオイの原因は、防具や衣服などに染み付いた汗を餌とする細菌が繁殖する事なのです。
汗の成分は99%が水分で、残り1%には塩分・アミノ酸・乳酸・尿素などが含まれています。
これらの成分が皮膚常在菌と化学反応を起こし、臭気を発生させるのです。
汗自体のニオイを抑えるためには、摂取する食べ物の工夫が効果的だと言われています。
タンパク質や脂質などは、汗の水以外の成分の分泌を促す性質がありますので、お肉や油はなるべく控え、野菜や果物などのビタミンや海藻や梅干しなどのアルカリ食品を摂取すると、汗に含まれる水の割合が多くなり、ニオイを防ぐことができると言われています。
防具のニオイ汚れ対処法
前述したように、防具に汗が染み込みそれを放置することで細菌が繁殖しニオイが発生します。
つまりニオイ汚れを防ぐためには、日常的なお手入れが必要不可欠となります。
まずは稽古後に、濡れタオル等でよく汗を拭きとってから、消臭スプレーを振りかけることです。
このことで、細菌の繁殖は大幅に減らすことができます。
その後、しっかりと乾燥させるようにします。
湿度が高いところでは細菌はよく繁殖しますので、2つの防具を交互に使うなどの工夫をして、防具を乾燥させる時間を作りましょう。
また、防具に汗がつかないようにすることも効果的です。
面の中、特に汗がつくであろうアゴ周辺に、手ぬぐいや専用のパットを入れます。
これらは洗濯することが可能ですので、いくら汗を吸ってもニオイ汚れの原因にはなりません。
小手の場合、小手下袋という小手の下に身につける手袋があります。
これを装着すれば、手に匂いがつくのも防げますし、防具も汚れにくくなるので一石二鳥です。
これらは全て武道具店にて揃えることが出来ます。
|剣道具(防具)クリーニングとは?
剣道の防具は、皮革や化学繊維、金属、植物繊維、藍染等、様々な要素が組み合わさってできているため、昔からクリーニングがしにくいイメージがありました。
一方で、激しく稽古をこなせばこなすほど、汗が皮脂の汚れが無制限に蓄積されていき、これが防具自体を痛めたり、臭いが発生する原因になっています。
特に、一度蓄積された皮脂や塩分の汚れは、クリーニングしない限り取り除かれることは一切ありません。
そこで、オフ期間等を利用して「剣道具(防具)クリーニング」を利用される方が増えています。
実際、自宅で洗おうとしても、どうしてよいかわからないことが多いのではないでしょうか。
そこで、積年の汚れを落とす「剣道具(防具)クリーニング」のサービスを活用することで、安心して洗浄することができます。
オプションで、「藍染リメイク」といったことも可能で、長年の使用で色落ちした防具を、見た目にもよみがえらせることが可能です。
プロへの依頼するメリット
最大のメリットは、布団が柔らかくなり、若干軽くなります。
先述のとおり、汗や皮脂、塩分の汚れはクリーニングしない限り除去されることはありません。
それが取り除かれることで、その分の重量が軽くなります。
わずかなようですが、実際装着してみると、案外違いを感じることが多いです。
また、蓄積された塩分によって、布団が固くなっているケースがほとんどです。
これも除去することで、新品時の柔らかい布団に戻すことができます。
後述のとおり、一般の洗剤でもある程度は除去可能ですが、非常に手間がかかる上、専用の溶剤を使ったほうが布団を痛めず、さらに根こそぎ汚れを除去できます。
そのため、プロに依頼するほうが確実にクリーニングできるでしょう。
プロへの依頼するデメリット
クリーニングに出すと、一定期間その防具は使用できません。
クリーニングに出した場合、おおよそ1週間程度で返送となることが多いでしょう。
※天候等により若干前後します
また、プロに依頼するのはお金がかかることですので、「毎週のように洗う」というのは、難しいかもしれません。
自身の稽古スタイルやスケジュールに合わせて、クリーニングを活用するのが良いでしょう。
藍染リメイクとは?
「藍染リメイク」は、文字通り色落ちした防具に再度藍染を施し、見た目にも美しく再生する加工手法です。
「剣道具クリーニング」のオプションとして、付加可能です。
尚、クリーニングと合わせて「藍染リメイク」も行う場合は、10日から2週間程度見ておくとよいでしょう。
|KENDO PARKクリーニングの強み
一般に「剣道具クリーニング」というと、クリーニング業者が手掛けていることが多いですが、大抵は剣道専用ではなく、ほかのクリーニング技術や溶剤をそのまま転用しているケースがほとんどです。
一方、KENDO PARKクリーニングでは、「現役剣道家」である専門職人に依頼しており、溶剤も通常のクリーニングでは使用しない自然由来のものを使用しています。
これにより、生地のみならず藍染の色落ちも防ぎながら、汚れのみを根こそぎ落とすオリジナルメソッドを採用しています。
また「藍染リメイク」においては、一般には「表面を塗る」ケースが多いところを、生地内部へのすり込みや、場合によっては再度漬け込みまで行って「染め上げて」います。
物によっては、プラスチック素材での表面加工も行っており、色落ちや体への染料の付着を防ぐ加工も行っています。
申込方法
KENDO PARKでは、以下のバナーより、「剣道具クリーニング」および「藍染リメイク」を申込可能です。
決済後に発送先や詳細等がメールにて送られますので、そちらを確認のうえ、職人へ発送いただく形となります。
※必ず記載の注意事項をご確認ください。
尚、修理や剣道着、袴等も含まれる場合、またチームや団体単位での申し込み、数量多数による引き取り(首都圏中心部限定)ご希望等の場合は、別途メールにて問い合わせ頂ければ対応可能です。
お問い合わせ:info@kendopark.jp
|自宅での面の洗い方
いよいよ本題に入っていきましょう。
ひとえに防具を洗うと言っても防具の状態や必要性に応じて様々な洗い方があります。
時間がかかったり材料を揃えたりするのは面倒くさい、すぐにお手入れしたい、そんな方にオススメの方法をご紹介します。
簡単な処置でも定期的にやれば、常に清潔な状態を保てます。
1)拭き洗い
面で一番汚れるのはやはり顎まわり、そのほか耳の横なども汚れが溜まりやすいです。
濡れたタオルや雑巾で面の内側や外側を万遍なく拭き、干すだけでも格段とカビやニオイ汚れを防ぐことが出来ます。
空気のこもった道場の棚に置きっぱなしにする等よりは遥かに細菌の繁殖を抑えられます。
ここで重要なのは、日光が直接当たる場所は避けなければならないということです。
日向においた方が、よく乾く上に除菌や消臭もできるような気がして日に当ててしまう方も多いでしょう。
しかし日光を直接浴びると、水分が奪われすぎて防具の皮が硬くなってしまったり、太陽の紫外線により藍染の色が落ちてしまったりして、干す前よりも防具が劣化してしまう恐れがあります。
原則としては、風通しの良い場所で陰干しするのが理想です。
陰干しでしっかり防具が乾くのか心配な方は、乾燥剤や新聞紙を中に入れるなど工夫をして干すといいでしょう。
陰干しが終わった後は保湿クリームを塗ると、乾燥を防ぐことができ防具が長持ちするといわれています。
尚、毎稽古後に消臭スプレーや防具用洗浄スプーをかけることも効果的です。
※記事下部にて紹介
2)つけ置き洗い
濡れタオルだけでは不安だという方には、つけおき洗いがおススメです。
方法は以下の通りです。
・プラスチックの洋服ダンスや大きめのバケツなどにぬるま湯を張り、必要であれば洗剤を少し加える
※その中に面を丸ごと入れますが、この時面の型が崩れないよう入れ方には注意しましょう。
・1時間ほどつけ置きし、だんだんと水が黒くなって来たら、ブラシや歯ブラシで特に汚れが付着するようなあごや頬の内側などをブラッシングをする
※強く擦りすぎると、面の革が剥げてしまう恐れがあるので、優しくなでるように擦るようにしましょう。
・ブラッシングが完了したら水を全て流し、そこに新しいお湯を張って、もう一度優しくブラッシングをしながら洗剤を落としていく
・ある程度落ちたら、お風呂場のシャワーなどで汚れが出なくなるまで洗い流す
※乾かし方は濡れタオルの時と同じく陰干しです。
どうしても乾かなかい場合、次の章でご紹介する洗濯機を使った方法で脱水をすることも有効です。
この時、脱水は1分〜2分程度と短めにしておきましょう。
3)洗濯機洗い
慣れて来たら、思い切って洗濯機で洗ってみるのも大変有効です。
防具を洗濯機で洗うというのは、最初は勇気がいるかもしれませんが、やり方さえわかればとても楽に防具を綺麗にすることができます。
尚、ドラム式洗濯機は面型が大変崩れやすいので、あくまで縦型式洗濯機にて行うようにしましょう。
方法は以下の通りです。
・面金が洗濯機の中を傷つけないよう、面に分厚いタオルを何周か巻く
・紐で固定し面金が洗濯機の中心に来るように配置し、他のタオルやコテなどで固定する
・洗濯機を操作し、洗濯→脱水→陰干しの順に行う
※洗剤は少なめに使用することをオススメします。
※稀に面型が崩れたり予想以上に色が落ちてしまったりする可能性がございます。
十分注意して、自己責任のもと使い古したものなどから試してみましょう。
|自宅での小手の洗い方
剣道で一番ニオイがつきやすいのは?という質問を投げかけた時、ほとんどの剣道経験者は小手であると答えるでしょう。
中学・高校の部活の後、下校時間の関係もあり部室のお風呂に入れないときでも、手だけはしっかり洗って帰ったものです。
それほどに小手のニオイは強烈ですので、面よりも頻繁に洗うようにしましょう。
1)拭き洗い
面と同様に、濡れたタオルで拭いてから陰干しするのが基本的な処置です。
特にニオイのつきやすい小手は、上記に加えて稽古後毎回消臭スプレーをかけ事が簡単かつ効果的です。
前述したように細菌を殺して、ニオイやカビを防ぐことができます。
また、菌の増殖を抑えるためには乾燥させる事が重要になってくるため、2つの小手を交互に使うなどして、乾燥させる時間を作ることも大切です。
ちなみに小手の手の内の革は、稽古後濡れた状態であれば伸ばしたり柔らかくしたりする事ができますが、だからといってやたらと揉み込んだりしないようにしましょう。
揉む事で革が伸び、その分薄くなります。この事で小手が必要以上に乾燥しすぎてしまったり、すぐに穴が開いてしまったりすることがあります。
もし手の内を柔らかくしたい場合は、拳を握るような形のまま揉む方が良いといわれています。
2)つけ置き洗い
小手は比較的小さく構造も複雑なため、歯ブラシなどヘッドの小さいものを使って、小手の内部(特に手の甲側)まで擦る必要があります。
3)洗濯機洗い
洗濯機洗いの場合、左右の小手がバラバラにならないように、紐で縛ってからタオルでくるんで入れると良いでしょう。
|自宅での垂の洗い方
垂の洗濯におきましても、面と小手と同様の手順にて拭き洗いやつけ置き洗いにて洗濯しましょう。
|消臭スプレー
消臭スプレーといっても、種類や成分も様々です。
ここでは、防具への使用できる消臭スプレーの一部をご紹介します。
ドーバーパストリーゼ77
家庭用のみならず、飲食店でも使用される除菌スプレーです。
圧倒的除菌力及び持続力に加え、食品への直接噴霧も可能なので、防具への使用も安心です。
「ドーバー パストリーゼ77」は、消防法に認可された完全自動設備での生産を実現しました。酒造会社ならではの遺伝子組み換えを行っていないサトウキビ原料由来の醸造用アルコールを使用、77%濃度による非常に強力な除菌力を有します。緑茶から抽出した高純度カテキンを配合、さらに純水を使用し長期間の抗菌持続性も実現しました。休日前にご使用いただく事で、より一層休日後の安心を高めます。
厚生労働省認可の食品添加物なので食品に直接噴霧できます。シュっとひとふき、調理に使用するあらゆる器具や食器の除菌、防臭にも抜群の効果を発揮します。製菓をはじめ食品関連のプロフェッショナルはもちろん、「南極観測隊からの指定採用」など、業界を超えた信頼をいただきました。「安心」は「高品質」から。「ドーバー パストリーゼ77」をぜひ、お試しください。出典:ドーバー洋酒貿易株式会社公式HP
用途別防具専用消臭スプレー
「消臭スプレー・霞(カスミ)」
消臭スプレーの中では定番商品。
アルコールによる微生物発育阻止効果と、植物性乾留成分による臭い成分除去効果の為、消臭・殺菌効果は大変強く、普通の使用ならこれ1本で問題ない程です。
あえて問題を挙げると、「アルコール」使用の為、皮膚が弱い人には向かない事です。「消臭スプレー・剣香(ケンコウ)」
上記「霞」の問題点であった、「アルコール」成分等科学薬品・合成物質などを一切含まない消臭スプレー。
「混合植物抽出エキス」の働きで、「霞」と遜色ない消臭・除菌・抗菌作用を持っています。
植物性成分オンリーですので、皮膚の弱い方でも安心して使えます。「清浄スプレー・剣露(ケンロ)」
上記2点の消臭スプレーとは少し異なる「清浄スプレー」。つまりは洗浄剤のようなものです。
消臭・抗菌効果もありますが、基本的には防具内側の汚れ・臭い落とし用です。
使用方法は、「剣露」を吹き付けて付着した泡状の液が、完全に滲みた所で浮いてきた汚れ等をふき取ります。「イオン水消臭スプレー・修(シュウ)」
上記「霞」の問題点であった、「アルコール」成分等科学薬品・合成物質などを一切含まない消臭スプレー。
なんと中身は「水」で、水を電気分解してイオン効果をもたせ高い消臭・除菌効果を発揮します。
使用方法は吹きかけても良し、ぬるま湯等に混ぜて使用しても良し。
成分的には「水」ですので皮膚の弱い方でも安心して使えます。「持続性消臭スプレー・仁王だち(ニオウダチ)」
持続性の高い消臭スプレーの登場です!銀担持酸化チタン→ 抗菌作用、持続的に細菌の増殖を防止。
光触媒二酸化チタン→蛍光灯などの光に反応、 有機物を分解。
「2種のチタン」の働きで、強力に臭い・雑菌の繁殖より防具を防御し、殺菌した状態を維持します。
防具が乾燥した状態で染み込ませる様にご使用ください。薬剤等多少きつめです。
皮膚の弱い方はご注意下さい。
|大切な防具を、長く使うために
防具を一式揃えるのにはそれなりのお金がかかりますので、より一層大切にしようという方も多いと思います。
しかしそれだけではなく、防具を大切に扱い、自分で丁寧に洗ったり、点検してもらったりする事で、自分だけの使いやすい防具に仕上がっていきます。
これにより、より一層防具に愛着が湧いて稽古が楽しくなるのではないでしょうか。
これを機会に、ご自宅で防具ケアを試していただければと思います。
「自分でやるのは面倒!!」という方には・・・
▼剣道防具専門クリーニングサービス「KENDO PARKクリーニング」▼