大学生以上の剣道大会では、二刀流の選手を時折見かけることがあります。
日本では多くはいませんが、世界大会などでは二刀流の選手が数多く見受けられます。
このような背景には、二刀流という流派の歴史が大きく関わっています。
今回は、そんな剣道の二刀流についてまとめました。
|二刀流の歴史
二刀流の剣術は日本古代から多数の流派が存在し、その歴史も多種多様です。
その中でも、今日の二刀流の原型を形作り、二刀流の歴史を語る上で欠かせないのが、世界で最も有名な日本の剣豪「宮本武蔵」でしょう。
彼の存在が、日本のみならず世界で二刀流が親しまれるきっかけになっていることは間違い無いでしょう。
宮本武蔵は、戦国時代から江戸時代を生きた剣豪であり、現在も様々な逸話や伝説が残っています。
彼が実践したのは右手に大太刀、左手に小太刀を持つスタイルの剣術「二天一流」、つまりは二刀流です。
この流派についての指南書「五輪書」が、当時の日本において広く出回ったことから、二刀流だけでなくそれ以降の剣術の流れにも大きな影響を与えました。
|日本と海外の二刀流事情
日本では、近くに道場があったり、各中学校や高校に剣道部があったりと、比較的剣道が身近にあります。
一方海外では、日本の文化について興味を持つうちに、剣豪である宮本武蔵知って剣道を始める方が多いそうです。
そのため、宮本武蔵が作り上げた二刀流を始める方が多いと考えられます。
現代剣道においての二刀流は、昭和初期までは全年齢で認められていましたが、それ以降は成年以降のみ許され、1992年の全日本剣道連盟のルール改正により大学剣道での二刀流が認可され、現在に至ります。
日本では二刀流が禁止されていた時期があったこともあり、比較的指導者が少ないのが実情です。
また、幼少期から剣道を始めることが多いため、大学から二刀流へ転向するハードルは低くありません。
そのため、日本では二刀流の使い手は非常に少なくなっています。
|二刀流の稽古
先述の通り、二刀流の使い手は非常に少なく、指導者も少ないのが現状です。
中段や上段にみられる一般的稽古に加えて、二刀流特有の訓練も必要です。
二刀流にチャレンジするにあたり、基本となる知識を身につけましょう。
構え方
二刀流には二つの構え方があります。
1.右手に長い太刀を持ち、上段に構える「正二刀」(足さばきは中段と同じ)
2.左手に長い太刀を持ち、上段に構える「逆二刀」」(足さばきは中段と逆)
いずれも太刀を持っていない方の手に小太刀を持ち、小太刀を中段に構えます。
どちらの構えにするべきか考える際は、 利き手を考慮しながら決めると良いでしょう。
「上段の構え」と同じように、左手で上段を取る「逆二刀」の方が一般的ですが、対戦相手からすると「上段の構え」と打突部位が似ているため比較的戦いやすいという特徴があります。
一方で「正二刀」は、対戦相手から見ると「逆上段」に見えるため、比較的戦いにくいと言う特徴があります。
※あくまで一般的な見解です。
稽古方法
自分に合う構え方が分かった後は、稽古あるのみです。
二刀流の小太刀、長太刀の役割や二刀流の強み、弱みを理解する必要があります。
太刀は、上段に構えて面を打たせにくくする一方、すべての打突を行います。
小太刀は、中段に構えて相手を攻めながらけん制し、相手の打突を防御するために用います。
現代剣道では小太刀での有効打突の基準は非常に厳しく、一本になりにくいといわれています。
筋力の強化
筋力を強くし、素早く振ることで二刀流の「遅さ」をカバーする必要があります。
一刀流よりも腕力が必要なのが二刀流です。
もし一刀流と同じスピードで竹刀を扱えれば、二刀流の強みをより多く享受することができます。
太刀の柄の持ち替え
一足一刀からの打突は、間合いを長くするためにも太刀は長く持つ必要があります。
一方で、つばぜり合いのような間合いが詰まった場面では太刀を短く持ち、素早く引き技を打てるようにする必要があります。
このような柄の持ち替えを場面ごとに使い分けることができれば、二刀流を使いこなしているといえるでしょう。
これらの点に気を付けて、日々の稽古に取り組みましょう。
|二刀流の強さと弱点
強さ
二刀流の強みは、何よりも「同時に2本の竹刀を操れる」ことからくる高い守備力にあります。
これにより、攻めながら守ることができ、相手は打ちどころがないような感覚に陥らせることができます。
これを活かし、一方的に打ち込んだり、不用意に打ってきたところを応じやすくなります。
二刀流の試合を見てみると、二刀流の選手が攻め込んでいる場面が多くみられます。
弱み
二刀流の弱みとしては、片手のみで竹刀を操ることによる「遅さ」が挙げられます。
振りの遅さは試合において大きな弱点となってしまいます。
長い太刀で片手面を打っていく際、上段のように体の勢いは借りられないためです。
これにより出ばな技、引き技、連続技は打ちにくい状態になってしまうのです。
また、竹刀の長さも一刀の人と比べると短く規定されているので、間合いが短くなってしまうことも留意し、相手に有利な間合いを作らせないようにしなければなりません。
|二刀流のルール
二刀流にはいくつかののルールがあり、それらのルールを守らなければ試合ができません。
ここでは全日本剣道連盟が定めているルールをご紹介します。
年齢規定
二刀流で試合を行うのは、大学生以上であることが条件です。
高校生以下で、二刀流にて試合を行うことは認められていません。
※稽古をすることは可能です。
構えのスイッチ規定
二刀流で試合に出場した際、試合途中で一刀流に変更することはできません。
つまり、試合中にどちらかの竹刀が壊れ、かつ代替竹刀もないとなればその時点で敗退となってしまいます。
竹刀規定
二刀流では、通常の中段や上段と使用竹刀が異なります。
以下の表に準じて竹刀をそろえるようにしてください。
一刀流の大学生・一般が使用する竹刀は38(一般女子・117㎝・440g)または39(男女・120㎝・510g)です。
したがって、二刀流の大刀は一刀流の使用竹刀に比べて長さも短く重さも軽いものであることがわかります。
|対二刀流対策
一刀流に比べて、対峙する頻度の低い二刀流ですが、二刀流の選手と対峙した際、気を付けなければならないことは何でしょうか。
二刀流の特性を踏まえて考えていきましょう。
※以下、あくまで一般的な見解に基づきます。
基本的な戦い方
- 防御が固いため、むやみに打っていかない。
- 小太刀に気をとられず、打突が繰り出される長太刀に合わせた攻めを心がける。
- 突きをベースとして試合を展開する。
以上の点を踏まえて勝負をすることで、自分に有利な試合展開にすることができる可能性が高まります。
また二刀流との対戦には、何よりも実戦経験が最も大切な部分です。
試合や稽古などで二刀流の人を見かけたら、積極的に対戦をするようにしましょう。
有効な技
突き技
突き技は、二刀流が防御しにくい打突の一つです。
小太刀での防御を回避するように、右上から回すように打ち込むと、より効果的でしょう。
胴技
片手を上段に取る分、胴は防御しにくい打突部位です。
「正二刀」には胴、「逆二刀」には逆胴が有効的な打突となります。
ただし「正二刀に対する胴」は、有効打突になるには「右に抜ける」必要があり、逆胴に比べると難易度が高いと考えられます。
面技
二刀流は片手だけが上段を取る分、「左右面」のどちらか一方が常に空いている状態です。
小太刀の動きを読みながら、踏み込んで面に打ち込んだり、返し技として面を打つことは有効な手段と考えられます。
とはいえ面技は、2本の竹刀を持つ二刀流にとっては、防御しやすい技である一方、対戦する側にとっても小太刀を使った返し技を受けにくい技です。
一本を取るという目的以外にも、相手への牽制として使用し、その後の試合展開を良くすることにも使えるでしょう。
引き技
二刀流は片手で竹刀を持つ分、近い間合いでの打ち合いには弱い傾向があります。
また片手で引き技を打つのは、かなりの筋力及び腕力が必要となります。
そのため、鍔競りから左右の崩しを入れた引き技や、二刀流の視界に入りにくい引き胴などは有効な技だと考えられます。
竹刀落とし
打突ではないため、積極的に取り組む技ではないですが、竹刀落としを図るのも二刀流に対しては有効です。
二刀流は片手で竹刀を持つ分、腕力や握力が必要となるので、機会によっては竹刀落としを狙うことも一つの手段かもしれません。
|二刀流のことを知ろう!
剣道における二刀流の歴史、そして実践方法について今回はまとめました。
二刀流は、古来からある伝統的な剣術です。
その伝統を守るためにも、現代剣道で二刀流が認められています。
これから二刀流を取る剣道家が増えていけば、いつか全日剣道選手権や世界剣道選手権にて二刀流で優勝する人が出てくるかもしれません。
また二刀流を知ることで、二刀流対策を練ることもできます。
二刀流にチャレンジする方、二刀流に勝ちたい方に本記事がお役に立てば幸いです。