剣道×企業スポーツ【実業団剣道部および大会協賛の活用法とは?】

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「剣道部が強い実業団チーム」「剣道部学生採用を実施している実業団チーム」「各種大会に協賛広告を出稿している企業」等、昔から企業と剣道は密接に関わってきました。
企業によっては、「自社道場」を持っているところも存在しています。
それが時代の変化と共に、剣道部も「何らかの事業バリュー」を出すことを求められつつあります。
また、「パンフレットに広告掲載するだけ」の大会協賛も、その効果やバリューを説明できないと、協賛が集まらなくなってきています。
そこで、「企業スポーツ」や「スポーツビジネス」の観点を含めて、「剣道」や「剣道部」が企業に対してどのようなバリューを提供できるかを考察します。

|企業と剣道の関係

戦前から戦後の剣道再興期において、企業と剣道は密接な関係にありました。
まずは、その歴史的文脈から紐解いていきます。

戦前

戦前には、財閥企業の役員コミュニティや従業員の慰安の場として、企業運営に重要な役割を果たしました。

例えば、三菱グループの武道各部を統括する「三菱武道会」は、三菱財閥の4代目であり三菱合資会社の社長である岩崎小弥太によって、明治45年(1912年)に創設されました。
歴代の会長を見ると、「剣道範士」かつ「グループ各社の重役」の方が並んでいらっしゃいます。
つまり、「企業役員の社交場」として機能していたことが想像されます。
また、創設当初より中山博道範士(剣道・居合術・杖術の三道範士)を師範として招聘しており、現代でも続く「企業剣道部の指導役として師範を外部招聘する」というスタイルが見られます。

他の例で言うと、明治末期から大正期にかけて発達した日立鉱山(@茨城県日立市)の開発を手がけた日立鉱山株式会社(現・JX金属株式会社)は、従業員や地域住民の福利厚生施設として演劇場「共楽館」を建設しています。
後に武道場として整備され、現在の「日立武道館」として市民の方々に利用されています。
これらは、現在の多くの実業団剣道部のように、「社員同士の福利厚生ツール」「地域での剣道交流ツール」という役割に近いと言えます。

このように、現在の実業団剣道部の姿は、戦前の企業と剣道の関係性にルーツを持つと考えられます。

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三菱武道会の歴代会長には各グループ会社の重役が並ぶ
出典:三菱武道会HP

実業団剣道部運営・大会協賛アクティベーション等の問い合わせは下記まで
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戦後

戦後の剣道再興期において、「企業」も大きな役割を果たしました。
戦後に剣道が禁止され、戦前の剣道大家の方々の職が奪われた状況の中で、そういった方々を「企業剣道部が師範として外部招聘する」ことで、剣道の文化継承に寄与した側面があります。

例えば、現在でも実業団の強豪チームとして知られる伊田テクノス株式会社(@埼玉県松山市)は、戦後すぐの昭和23年(1948年)に道場を開設し、その後昭和34年(1959年)に楢﨑正彦範士(後に範士九段および副社長)を主任師範として招聘しています。
そこから長年にわたって、地元での少年剣道指導を行うと共に、実業団剣道チームとしても多数の名選手を輩出しています。
また、現・伊田登喜三郎代表取締役会長および現・楢﨑亘社長も共に剣道七段であり、経営役員と剣道が密接に結びついているのも特徴です。

現在では多くの大企業が剣道部を持ち、その運営に各企業の役員クラスが名を連ねることがよく見られます。
また一部の実業団剣道部では、自社道場を持ち、師範を外部招聘する等、まさに戦後に確立されたスタイルが広く浸透していると言えます。。

さらに昨今では、各大学から積極的に剣道部学生を採用する企業も数多く存在します。
このような観点からも、企業と剣道は一部の面で密接に関わってきたと考えられます。

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戦後の実業団剣道の姿を体現する伊田テクノス株式会社
出典:IDA GROUP 楢﨑亘社長インタビュー記事

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|実業団剣道部の4つのバリュー

時代の変化と共に、各企業としても「剣道部」を抱え続けることが徐々に難しくなっています。
例えば剣道部学生の採用は、一部の「剣道部所属の役員」の存在に依存しているケースも多く、当該役員が退任されると共に、採用枠の維持が難しくなる等のケースが散見されます。
また自社道場は、株主から見れば「遊休資産」であり、その有効活用は議論されて然るべきものです。
このような流れから、「実業団剣道部」も会社への何らかの「事業バリュー」を出すことが求められるようになってきています。
そこで、「実業団剣道部」の持つ4つのバリューを整理していきます。

一般的な「企業スポーツ」との違い

「実業団剣道部の4つのバリュー」に入る前に、一般的な企業スポーツとの違いを整理します。

一般的には、スポーツ選手はプロ・アマ問わず「肖像権」をはじめとした「スポンサーライツ」を持っており、それをスポンサーが購入することで、権益を取得し、さらにその権益を使ってアクティベーション(=自社の広報活動等の有効利用)を行う構図が基本となっています。(実際は様々なパターンが存在します)

一方で剣道は、「剣道のセミプロ」のような形で教員や警察が存在しています。
彼らはあくまで「公務員」(非常勤教員等を除く)であり、個人の肖像権等を販売するような立場にありません。
また実業団剣道部に所属する選手は、あくまで「会社の部活動に所属する」という位置付けで、通常業務が活動のメインであり、「会社のあらゆるサポートを受けて競技に邁進する」という位置付けになっていないケースがほとんどです。

つまり、他競技に見られるような「企業スポーツ」「スポーツビジネス文脈」とは提供するバリューが大きく異なります。
これを踏まえて、「実業団剣道部のバリュー」を整理していきます。

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パナソニックでは、剣道部が「ガンバ大阪」「ワイルドナイツ」と同列に並ぶ
出典:パナソニックスポーツ公式HP

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①人材採用ツール

新卒採用を主として、優秀な人材獲得のツールとなります。
「入社しても剣道ができる環境」はもちろんのこと、「剣道部に大学の先輩がいる」「剣道部に役員の方や人事担当の方がいる」等というのは、入社後のキャリア形成や居心地を考えると大変魅力的です。
特に「剣道部の先輩後輩関係」というのは、仕事を超えた一生の関係値であることも多いため、大変大きな訴求要素となります。
そのために、「周りの優秀な先輩方が皆あの会社へ行っている」というれピューテーションを醸成できれば、比較的容易に人材獲得ができるようになります。
実際一部の企業では、「特定の強豪大学から毎年新卒入社する」という状況も見られます。

②toB営業のCRMツール

上記でも再三言及している通り、剣道は「生涯スポーツ」であるため、剣道部に当該企業の役員やトップの方が在籍することが少なくありません。
この特徴を活かし、他社の実業団剣道部と稽古や合宿等での交流を通して、「トップ営業」に繋げることができます。
実例として、ある有名企業では、毎年特定の地域の大手顧客企業剣道部と定期戦や合宿を実施しています。
そのたびに、自社の役員並びにエリアマネージャーや営業担当者も同行させ、顧客企業との関係構築や、新規のビジネス案件獲得に繋げています。
このように、「toB営業」において、実業団剣道部は大きな価値を発揮します。

③CSR活動

CSRとは「Corporate Social Responsibility」の略で、「企業の社会的責任」をを指します。
企業が自社利潤を追求するだけでなく、自らの事業活動を通して、倫理的観点から社会へ与えるべき影響に責任を負うことです。
剣道に落とし込むと、剣道部の活動や冠大会実施等を通した「地域貢献」が最もわかりやすいところでしょう。
具体的には、自社剣道部の稽古に地域の方を招いたり、地域の子ども向けに王室を行ったりすることが考えられます。
また、冠大会(=自社名を冠した大会)を実施し、剣道を通じて広く地域交流を図ることも選択肢として存在します。
これらを通して、企業にとっても「企業名の認知」につながります。
特に地方に工場を持っている企業であれば、各工場地域でこのような活動をすることで、工場地域でのレピュテーションアップばかりか、将来的に現地での社員採用につながる可能性があります。

④福利厚生機能

あらゆる実業団剣道部が持っている機能が、「社員の福利厚生」としての機能でしょう。
社員同士が仕事を超えて交流し、サークル活動・レクリエーション活動の一環として自社へのロイヤリティを高めるツールとなります。
実際に各実業団剣道部に所属している方々は、大多数がこの部分に価値を感じているのではないでしょうか。
企業によっては転勤等もある中で、各地でわざわざ地元道場や剣友会に所属するよりも、気心の知れた仲間と簡易に稽古に取り組むことができるのは、非常に魅力的と言えます。

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実業団剣道部の事業バリューは、大きく4つに分けられる

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|大会協賛の3つのバリュー

剣道の大会では、「大会協賛」というものが存在します。
多くは「協賛金を支払う代わりに、協賛として大会パンフレットに企業広告を掲載する」というものです。
ただ実際ところは、広告効果等は度外視で「それまでの関係値」で協賛を集めているケースが多く、「募集側」も「出稿側」も相互のバリューを高める努力をしてこなかったというのが実情です。
その結果として、例えばコロナ禍の大会では、「大会は無観客なのですがパンフレットへ協賛広告を出稿してください」というような、一般には理解に苦しむ提案交渉が当たり前に行われていました。
ただ先述の通り、広告出稿する企業側も、「事業として価値があるのか」が求められるようになっており、今後は「パンフレットに掲載します」だけでは協賛が集まりにくい状況になると考えられます。
そこで「大会協賛」についても、そのバリューについて整理します。

一般的な「大会協賛」との違い

「大会協賛」と言っても様々な形がありますが、スポーツにおける一般的な「大会協賛」と、剣道における「大会協賛」の認識の違いを整理しておきます。
一般的に「大会協賛」を行う場合、その大会における様々な権益(=協賛権益)を金銭をもって取得することになります。
この権益には、様々なメニューが存在します。

権益メニュー例
・大会の「冠名」の命名権(ex. 「マツダオールスターゲーム」等)
・大会の名前を使って広報活動ができる(ex. 「私たちは〇〇オリンピックを応援しています」等)
・試合会場での広告出稿(ex.コート脇・ゴールポスト・センタービジョン・パンフレット等)
・選手賞の命名権(ex. 「B.LEAGUE Monthly MVP by 日本郵便」「〇〇特別賞」等)

上記以外にも、「始球式を務められる権利」「ファウルボールの命名権」「大会VIP席チケット」等、協賛側がバリューを感じるものであれば何でもOKです。
ここでポイントなのは、協賛側としても「取得した権益をなるべく有効に活用したい」ということです。
「どのように権益を活用するか」は協賛側(=企業)にかかっている一方、権益を提供する側(=大会側)も、「どのような権益メニューであればバリューを感じてもらえるか」「どのように権益活用すればよいか」を考えて提案することで、より良い協賛関係を構築することができます。

このような議論がある点が、剣道における「大会協賛」との大きな違いといえるでしょう。

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大会の冠協賛も権益の一つ
出典:全日本剣道道場連盟HP

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①広告効果

大会協賛によって「大会の冠名」や「パンフレットへの広告掲載」を行うことで、大会参加者へサービスや会社名のPRを行うことができます。
あくまで「広告活動」ですので、広告主の立場で考えた場合、その「広告価値」を把握する必要があります。

ターゲットマッチ

剣道の大会というと、基本的には各地域や各年齢カテゴリに分かれていることが多いでしょう。
協賛する大会が、「どのエリアの大会か」「小中学生・高校生・大学生・一般のどのカテゴリか」等を把握し、それが訴求すべきターゲットと合っているかが重要となります。
尚、小中学生や高校生等の場合、出場選手の保護者もPRの対象となりますので、大会を総合的に見て「どのような人の目に触れるか」を考える必要があります。

露出メニュー

一般に、「パンフレットに広告掲載するだけ」というケースがございますが、現代では色々な媒体が存在しますので、「露出面」がどれくらいあるかを確認することも大切です。
例えば、大会の公式HP、公式SNS、YouTubeでの配信画面等、デジタル媒体で広告掲載や投稿をしてもらうのも立派な権益メニューです。
大会に加えて、主催団体のSNSアカウント等で投稿してもらえれば、露出に加えて「信用」も得ることができます。
剣道では「パンフレット掲載」以外の権益メニューの発想がないケースも多いですので、場合によってはデジタル媒体の権益メニューを追加してもらえるか交渉することも有効かもしれません。

リーチ数

ターゲットが合っていたら、次は「何人の人の目に触れる可能性があるか」を把握する必要があります。
大会の参加人数は、参加チーム数と出場人数からおおよそ算出が可能です。
それに加え、保護者や付き添い、監督、来賓、審判員、会場スタッフ等も含めて、大会規模やコート数等からおおよそ算出することができます。
ただ、パンフレットの配布範囲や掲載ページ、看板の掲示位置等にも大きく左右されますので、その辺りは勘案しておく必要があります。

②進学・採用PR

小学生から高校生の大会では、「進学先」を考える学生や保護者へのリーチが可能です。
大学生の大会では、「就職先」を考える学生へのリーチが可能です。
このような大会での協賛は、学校や企業にとって「進路先」として名前をアピールできる場となります。
中にはブース出展が認められる大会も存在しますので、そういったところに出展し、即席の説明会を開催するのも有効です。

③CSR活動

大会協賛によって、「青少年の剣道を応援する」「剣道という伝統武道の存続を応援する」といった形でのCSR活動に繋がります。
協賛企業としては、協賛した内容を自社HPへ掲載したり、プレスリリースを発信する等して、自社の社会貢献のアピールやイメージアップを図ることができます。

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KENDO PARKの協賛広告例

|実業団剣道部・大会協賛を有効活用しよう!

冒頭に述べた通り、「剣道」も「企業スポーツ」の一つとしてみられるようになってきています。
企業視点では、何らかの支出が伴う限り、必ず正当な「事業バリュー」が求められるということを意味します。
ここまで解説してきた実業団剣道部や大会協賛は、これまで「人付き合い」の延長で何とか存続してきましたが、日本経済の衰退とともにそうもいかない状況になりつつあります。
今一度、「企業と剣道」のあり方について再定義する機会ではないでしょうか。

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