【剣道でビジネスを起こした男】KENDO PARK 代表 永松謙使(前編)

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▼スペシャルコラム▼

「剣道でビジネスを起こした男」
〜KENDO PARK誕生編

KENDO PARK代表 永松謙使(前編)

KENDO PARKのサービスは、2016年にリリースされました。
代表の永松の「剣道の経済圏をつくる」という理念のもと、剣道界への一つの挑戦でもありました。
とはいえ、前例のない取り組みにつき、失敗や苦難の連続でした。

「剣道」という領域で、「ベンチャー起業」という道を選んだその軌跡と、苦難の道のりをご紹介します。


-永松謙使(ながまつけんし)-

1987年生 東京都出身
5歳より東競武道館(@東京都大田区)にて剣道を始める。
その後、慶應義塾中等部剣道部、慶應義塾高校剣道部、慶應義塾大学體育會剣道部に所属。
大学卒業後に野村證券(株)へ就職し、同社剣道部に所属。
2016年に野村證券(株)を退職し、(株)パークフォーアスを設立。
2016年末に「剣道具専門通販セレクトショップKENDO PARK」のサービスを開始。
2017年に「外国人向け剣道体験ツアーSAMURAI TRIP」のサービスを開始。
2019年に剣道YouTuber「剣道三段五段」チャンネルの運営を開始。
2020年に剣道専門オンラインサロン「剣道イノベーション研究所」を共同設立。

▼主な受賞歴
・第7回スポーツ振興賞「観光庁長官賞」
・スポーツ文化ツーリズムアワード2019「スポーツ文化ツーリズム賞」

▼主な過去戦績
・神奈川県高校剣道大会団体準優勝
・関東学生剣道新人戦大会ベスト8
・全日本実業団剣道大会ベスト16

▼本記事掲載にあたり
本来「自分語り」は得意ではないものの、より皆様にKENDO PARKを知って頂きたいという想いから、まだまだ道半ばながら、このタイミングで一旦文章化を決意いたしました。


|「当たり前」を持ち込む

「剣道で起業」を志すようになったのは、大学卒業後に新卒で就職した野村證券(株)での体験が元になっています。
業務上、中小企業の決算情報を目したり、中小企業の経営者の方から現場のお話をお聞きする機会が多く、その延長で剣道具店の企業データを目にすることもありました。

そこで感じたのは、
・想像よりも店舗数が存在する
・どこも経営状況は厳しい
・「剣道」はビジネスとして成立しているのだろうか

といったことでした。

大学を卒業後は、ほとんど稽古をしていなかったのですが、社会人になって数年経ち、健康作りも兼ねて稽古を再開しようかと考えていた頃でした。
そこで、近隣の剣道具店に用具を買いに行くのと一緒に、「剣道具店のビジネス」について聞いてみることに致しました。

そこで直面したのは、
・地元のお客様でしかビジネスできていない
・20年以上商品開発を行なっていない(=輸入して売るだけ)
・情報発信ができていない
・後継者がいない
・地元の学校に剣道部員がいない

といった実情でした。

それらを踏まえ、剣道具の市場について改めてよく調べてみると、
・国内の剣道人口は柔道の約10倍存在する
・大手スポーツメーカーが参入してこない(参入したが撤退した)
・剣道具流通で約100億円程度の市場がある

・全国400店舗程度でパイを奪い合っている
ということがわかりました。

これを受け、「そんなに悲観するような業界ではない」という印象を受けました。
その一方で、9割以上が海外製である上、他競技よりもそれなりに競技人口がいるため、「輸入してただ売る」というビジネスモデルが主流であり、「正当な競争や産業育成」ができていないと感じました。

普段から様々なビジネスを目にしていた私としては、「他業界では当たり前の努力や取り組みを、剣道具業界ではしていないのではないか」という疑問が浮かびました。

そこで改めて、ユーザー目線でも業界の課題を考えてみると、
・他地域の剣道具店と比較検討ができない
・剣道具に関する情報が極めて少ない
・どこで作られているのかよくわからない
・かといってネット通販は怖い

といったことが挙げられました。

これらを踏まえ、「剣道具業界を何とかしたい」と思うと共に、「ユーザーと剣道具店双方が嬉しい仕組みは何か?」を考えました
そんな時に目にしたのが、アパレルのECモールとして強い存在感を示していた「ZOZO TOWN」でした。

そこで、「ZOZO TOWN」の構造やビジネスモデルを調べ、複数の剣道具メーカーを1か所に集めて「ECモール」として展開するKENDO PARKの構想に至りました。

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「モール型EC」としてリリース。
コンセプトは「剣道具選びに革命を起こせ。」

|やると決めたは良いものの

「剣道で事業を立ち上げよう」と考えたのは良いものの、当時在籍していた野村證券(株)では、メールすらも使っていなかったため、いわゆる「IT知識」がほぼゼロの状態でした。

それに加え、その時点では剣道具店とのつながりもほぼ無かったため、何から手をつければ良いのか分かりませんでした。

そこで改めて、自分の強みと弱みを整理して、「できることから始めよう」と考えました。

▼強み
・剣道業界の主要プレイヤーへのコネクション
・営業開拓力
・ビジネスモデルやファイナンス知識

▼弱み
・剣道具の知識がない
・剣道具業界にコネクションがない
・選手として強いわけでも有名選手でもない

・IT知識がまるでない

これらを踏まえ、まず日本全国の剣道具店を全てリストアップし、端から提携の問い合わせをしていきました。
並行して、剣道連盟の先生方に意見をお聞きしたり、文献を取り寄せて必要最低限のIT知識をつけていきました。

しかし大多数の剣道具店からは、どこの馬の骨とも分からない私に対し、厳しいご意見を多くいただきました。

「新しいものが何となく怖い」
「お前如きに何がわかるんだ」
「剣道具なんて儲からないからやるもんじゃない」


といった反応が多かったように思います。

特に、現場の方々の「後ろ向きなマインド」は大きな課題でした。
剣道具製作に携わっている職人の方や、店舗経営者の方は「剣道具なんか儲からない」と投げやりな方も多く、こちらの構想や想いをお伝えしてもなかなか伝わらないこともしばしばでした。

そこで、以下を行うことを決めました。
・剣道業界の上層部の先生方に、必ず先に話を通す
・”自分発信”ではなく、”専門家の方からの発信”をメインにする
・ビジネスモデルやマーケティング戦略を、はっきりと提示する


そうするうちに提携を承諾いただいたり、知り合いの剣道具店をご紹介頂く等、少しずつ提携先が増えていきました。

何の実績も根拠もなく、「よく分からない若造の構想」だけで、お話を聞いて頂いた方々には、今でも感謝しかありません。

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現在では30以上のメーカーと提携。

|課題山積のサイト構築

提携先メーカーも集まり始め、いざECサイトを立ち上げるという段階でしたが、何の知識もなく、何から手をつけて良いかもわからない状態でした。
しかも「モール型EC」であるため、「店舗ページ」と「商品ページ」の2軸から構成を考える必要がありました。

そこで、先述の通りZOZOTOWNをモデルとしていたので、ZOZOTOWNを徹底的に参考にすることに致しました。
一方で構想を具現化していくうちに、「剣道具」という特殊な商材では、他のECよりもはるかに多くの要素が絡むことが分かってきました。

ざっと列挙しただけでも、
・剣道具(防具)の採寸
・刺タイプや刺幅
・ネーム刺繍と刺繍色
・カラーバリエーション
・竹刀の長さ
・柄の形状
・柄の長さ
・送料規程 等々

というような要素が関連してきます。

メーカーによっても要素が異なるため、これらをいかにして、サイトに盛り込むかが最大の課題でした。
「IT素人」の私がこのようなことを考えるのは大変難しく、色々な方に相談しながら構築を進めました。

結局リリースまでに、半年以上かかりました。

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徐々にメディアからの取材依頼もいただくように。

|誰も見ていない

晴れてKENDO PARKをリリースし、「よし、ここからだ」と意気揚々としていたものの、今度はどう検索しても自分のサイトが出てこないことに気づきました。
SNS等で拡散したりしたものの、当然アクセスもなく、数ヶ月間注文は「ほぼゼロ」という状態でした。

今思えば極めて当たり前の話ですが、証券会社での「ドブ板営業」しか経験のなかった私にとっては、どうすればよいか皆目検討もつかず、かといって専門のコンサルタントにお願いするような資金も無いため、途方に暮れていました。

そこで色々な方に話を聞きに行ったり、本を読み漁ってとにかく勉強しました。
それらを元に調べてみると、インターネット上には信頼性の高い剣道情報が少ないことと、「自分には剣道の繋がりがたくさんある」ことに気づきました。

そこで記事メディア「Kenjoy!」を立ち上げました。
「Kendo」と「Enjoy」を組み合わせたこのネーミングは、当時アドバイスをいただいた方に命名していただきました。
記事を更新していくうちにアクセスも増え、徐々にオーダーを頂けるようになりました。

この時サポートいただいた方々にも、感謝の気持ちしかありません。

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苦しみの末にリリースした公式記事メディア「Kenjoy!」

|剣道の経済圏を構築する

KENDO PARKを立ち上げて以降、色々なところから声をかけていただくようになりました。

その一方で、特定の剣道家の方や剣道具メーカーの方々にしかお役に立てていないのでは無いかと思うようになりました。
そのうちに、「新たな市場を創出しよう」と思うようになりました。

そこで改めて「自分は何を成し遂げたいのか」を考えた結果、「剣道の経済圏を構築する」というビジョンに行き着きました。
これを踏まえ、国内剣道家や剣道具メーカーのみならず、「非剣道家の方々」や「コアに剣道を学びたい方」、「”リバ剣”の方々」等、あらゆる層にリーチする全く新しいサービスを作ろうと考えました。

その構想のもと、
外国人向け剣道体験ツアー「SAMURAI TRIP」
・剣道YouTuber「剣道三段五段」
・剣道専門オンラインサロン「剣道イノベーション研究所」

といった新サービスをリリースしていきました。

これらが相互にリンクすることで、あらゆる剣道レイヤーでビジネスを生み出し、「剣道経済圏を構築する」ことを目指しています。

<<後編に続く>>

剣道,武道,ビジネス,インバウンド
「剣道の経済圏を作る」というビジョンを掲げる。
出典:月刊「事業構造」「事業構想」2019年10月号冊子

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