実践解説!【武道ツーリズム最前線|剣道の事例】

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剣道体験,福岡

訪日外国人(=インバウンド需要)が急増する中、スポーツ庁は2018年3月より「武道ツーリズム」の本格推進を開始いたしました。
一方政府の「掛け声」が先行するばかりで、実際の成功事例を目にする機会はなかなかありません。
実際に剣道で「武道ツーリズム」を行なっている現場から、リアルな実態から議論の問題点までまとめました。

※取材協力:外国人向け剣道体験ツアー【SAMURAI TRIP】
※記事内に「自治体様向け武道ツーリズムセミナー」の動画を掲載しております。


-外国人向け剣道体験ツアー【SAMURAI TRIP】-

2017年1月にサービス本格開始。
・剣道体験
・剣道具製作工房見学
・剣道レストランでの和食体験
の3アクティビティを揃える。
東京・大阪・横浜・京都・札幌・福岡の全国主要都市で、年間約2,000名の外国人観光客を受入。
サービス開始以来、催行回数300回以上、累計3,000名を超えるゲスト(=旅行者)が来場。
スポーツ庁・外務省主宰のスポーツ海外貢献事業「Sport for Tomorrow」認定事業。
第7回スポーツ振興賞「観光庁長官賞」受賞。
スポーツ文化ツーリズムアワード2019「スポーツ文化ツーリズム賞」受賞。
メディア掲載多数。
サービス開始以来、KENDO PARKより使用用具を提供中。
(2019年現在)

SAMURAI TRIP公式サイト


|「オリンピック」は無関係

「武道ツーリズム」を理解する前に、訪日外国人、いわゆる「インバウンド」について理解しておく必要があります。

2018年に、訪日外国人数が史上初めて3,000万人を超えました。
2015年の時点で、政府は2020年の訪日外国人数4,000万人を目標に掲げていますが、あれよあれよと達成しそうな勢いです。

実際数年前と比べると、明らかに街を歩く外国人も増えたと感じられます。
観光地として知名度のある東京や京都だけでなく、最近では箱根、金沢、広島といった地方都市にも外国人の姿を数多く見かけます。

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ではなぜ訪日外国人は、ここ数年で急増しているのでしょうか?
マスコミの報道や政府の発表を見ていると、「2020年の東京オリンピックまでは外国人は増えるでしょう」とよく聞きますが、果たして本当なのでしょうか?

オリンピックは、実質2週間程度のイベントです。
例えば、「平昌オリンピックの数年前から、平昌に外国人が押し寄せた」という話も聞いたことがありません。

実は、本質的には「オリンピック」は関係ありません。
(もちろん下見や合宿、期間中に来日する方は一定数いらっしゃいますが)
ではなぜ、訪日外国人数は増えているのでしょうか?

多数の訪日旅行客からのヒアリングを元にまとめました。

オリンピック,株価,景気
実はオリンピック開催は、景気動向にも無関係。
資料出典:eワラント証券

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円安による物価安

かつて日本人がヨーロッパやアメリカへ行って、ブランド品を買い漁ったことと逆の現象と言えば分かりやすいでしょうか。

数年前までは円高であったため、「ブランド品を海外で安く購入して、日本に帰って高く転売する」というようなことも可能でした。
しかし現在、日本円が円安となったことで、日本は外国から見ると「先進国で圧倒的に物価が安い国」という位置付けです。

分かりやすい例として、世界のディズニーランドのチケット料金を比較すると、東京ディズニーランドはパリに次いで世界で2番目にチケット料金が安いと言われています。(2017年時点・110円/ドル換算)

つまり、数ある渡航先の中で「先進国の中でも安く行ける」のが、日本が渡航先として選ばれている要因の一つと言えるでしょう。

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ビザの緩和

政府はここ数年にわたって、日本滞在におけるビザ発給要件を続々と緩和しています。
特に2015年から、中国向けのビザを毎年のように緩和したことで、中国人の訪日客数が爆発的に伸びました。
結果として、2017年には韓国を抜いて中国が訪日外国人シェア1位となりました。(シェア約25%)

訪日外国人のシェアでは、中国と韓国の2国合計で約50%を占めます。
日中関係と日韓関係は、良かったり悪かったりを繰り返していますが、常に日本経済の「上客」であることは間違いなさそうです。

ビザ,インバウンド,訪日
政府は近年、ビザの緩和を毎年のように行なっている。
資料出典:外務省

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「JAPAN」コンテンツの拡散

「Cool Japan」という言葉をよく目にします。
日本の優れた文化やコンテンツを世界に発信しようということで、そういったコンテンツの総称として定着した言葉といえるでしょう。

実際、日本の「SAMURAI」や「NINJA」、「MANGA」といったコンテンツは、世界中で強烈な勢いで拡散されています。
それは近年のSNSの普及と、島国独特の文化という側面が大きいでしょう。

分かりやすい例でいうと、地獄谷温泉(@長野県)のニホンザルでしょう。
欧米を中心に「Snow Monkey」という名で有名となり、山あいの難所にある観光地でありながら、外国人観光客が殺到しています。

地獄谷温泉が有名になったのは、アメリカの雑誌メディア「ナショナルジオグラフィック」に写真が掲載されたことが発端といわれています。

「雪が降る中、サルが温泉に浸かる」という日本ならではの光景が、大陸文化からの連続性がない独特のものに映ったことが、注目を浴びた理由でしょう。
加えてこの写真がSNSで拡散し、それを見た人が実際に温泉を訪問し、さらにそれを拡散するといった2次3次拡散が起きたことが要因といわれています。

このように、先進国でありながら島国特有の文化を持ち、それがSNSで拡散されたことも、訪日客急増の大きな要因の一つといえるでしょう。

Snow Monkey
地獄谷温泉のニホンザルは「Snow Monkey」として有名。
画像出典:月間「事業構想」

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|なぜ「武道ツーリズム」か

外国人観光客が急増している中、2019年にラグビーW杯、2020年に東京オリンピックといった「分かりやすい」イベントの開催も予定されています。

その状況下でなぜ「武道」と「ツーリズム」(=旅行)の組み合わせなのでしょうか。
「外国人が増えているし、武道は日本特有の文化だから」と片付けるのは簡単ですが、ここでは体系的に分析してみます。

スポーツ庁,スポーツツーリズム
スポーツ庁は「スポーツツーリズム需要拡大戦略」を策定。
資料出典:スポーツ庁

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スポーツ界の「マネタイズ問題」

そもそも、なぜスポーツ庁が「スポーツ」と「ツーリズム」(=旅行)の組み合わせを推奨しているのでしょうか。
それは、マイナースポーツを含む、全スポーツに「マネタイズ」(=収益化)が必要とされているからです。

例えば剣道では、「剣道はお金じゃない」という価値観が定着していますが、その結果町道場は経営が続かなくなり、剣道具は価格が下落して武道具店の廃業が続いています。

参考記事:【剣道道場経営の難しさ】

どのスポーツ・武道にも共通ですが、「人・場所・用具」がなければ継続はできません。
そのために、「最低でも、運営を続けていくだけの資金循環」がないと、競技自体が消滅してしまいます。

現在多くのマイナースポーツは、東京オリンピックに向けた多額の補助金に支えられていますが(剣道は除く)、「自分で稼いで自分で運営する」という形を早く作らないと、存続できない競技が出てくる可能性があります。

尚、そういった補助金に頼らない剣道は、「昇段審査」という他競技にはない強力な武器を持っています。
これは今や武道のみならず、スポーツ界を代表するライセンス制度となっていると言えるでしょう。

参考記事:【全日本剣道連盟のおサイフ事情】〜私たちの審査料はどこへ?〜

剣道体験,福岡
福岡での剣道体験ツアーの様子。
画像出典:SAMURAI TRIP

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競技団体の多くは、自分たちでマネタイズすることが苦手なんです。日本のスポーツは、多くが学校体育から発展したものですから、有料化するとか、自分たちで稼ぐという発想がない。だから、自立して運営できる競技団体は限られている。もし、東京五輪が終わって補助金がなくなり、スポンサーも去ってしまえば、国際大会も招致できないし、スポーツの普及もできないという悪循環に陥ってしまいます。存続できない競技も出てくるのではないかと懸念しています。

(日本フェンシング協会会長:太田雄貴氏)

現代ビジネス【岸田文雄×太田雄貴「東京五輪で日本が魅せるべきもの、遺すべき事」】

そこで注目されたのが、まず訪日外国人の存在です。
・比較的資金力がある
・「価値」や「体験」にお金を払いやすい

という彼らの存在は、スポーツ業界にとっても取り込むべき存在です。

またスポーツ庁は外国人に限らず、日本人のスポーツを通した国内旅行も推進対象にしています。
スポーツにおいては、遠征や合宿、イベント等で、プレイヤーのみならず観客やスタッフの移動需要も発生します。

これは、将来的に人口が減少する日本においては、「競技人口を増やすより、移動人口を増やす方が得策である」という判断ではないでしょうか。

参考記事:【「武道ツーリズム」成功への道】自治体担当者様必見!

剣道体験,SAMURAI TRIP
国内外からのメディアの注目度も高い。
資料出典:SAMURAI TRIP

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日本で見たいのは「武道」

2018年のスポーツ庁による調査によると、訪日外国人が「日本で見たいスポーツ」としては武道が圧倒的な人気であることがわかります。

多くのオリンピック競技がイギリス発祥であるように、ほとんどのメジャースポーツは欧米市場がメインとなっています。
その中で、わざわざ日本滞在中にサッカーやバスケットボールを見るかというと、そういうことにはならないというのが自然な考え方でしょう。

武道の中でも、相撲は既に外国人旅行客の取り込みに成功しています。
相撲は、従来から興業として成功している数少ない武道ですが、外国人旅行客の増加で、場所中のチケットの入手が以前にも増して困難になっているとのことです。
それに付随して、朝稽古見学やちゃんこ鍋体験なども人気のツアーとなっています。

以下の表にあるように、「日本でスポーツを見るなら武道」というのは、統計的にも実証されています。

参考記事:【「武道ツーリズム」成功への道】自治体担当者様必見!

武道ツーリズム
日本で「みる」スポーツとして、武道は圧倒的人気。
資料出典:スポーツ庁

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|「剣道ツーリズム」のターゲット

剣道は、武道の中でも高齢者でもできるかつ、大人数で同時にできる数少ない競技です。
また直接的身体接触なく相手と戦えるので、空手や柔道と比べて初心者でも安全に行うことができます。
ここが、武道における剣道の優位性ではないでしょうか。

そこで、いざ訪日外国人を剣道に取り込むとして、「外国人剣道家を誘致する」パターンと「外国人旅行客(=剣道素人)を取り込む」パターンの2つが考えられます。
以下に、パターン別に分析していきます。

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「外国人剣道家」を誘致する場合

・事業イメージ

ターゲットは、外国で剣道を学んでいる人たちとなります。
海外で剣道を学んでいる人たちは、日本の剣道に関する情報を積極的に取りに行く方が多いです。
そのため、SNS等を使って彼らにリーチすることは比較的難しくはないでしょう。
近年では、一部の自治体や航空会社等がこの層の取り込みに動き出しています。

一方で、彼らは既に剣道に関してある程度の知識を有している方々ですので、「格式高い道場」「著名な先生や選手」「剣道に絡めた周遊アクティビティ」等、海外ではなかなかリーチできないコンテンツへのアテンドが必要となるでしょう。

・課題

外国人剣道家から対価としてのお金をいただく場合、「情報の非対称性が小さい」ことが最大のハードルとなります。

昨今、日本の筑波大学や国際武道大学等に「剣道留学」した経験のある外国人剣道家も多く、また日本の師範や有名選手も度々海外での剣道指導を行なっています。
外国人剣道家の方々は熱心に日本文化の勉強もしているので、ある程度の日本語を理解できる方も数多くいらっしゃいます。

結果として、外国人剣道家の中には既に日本の剣道界とコネクションを持ち、個人的に来日のアレンジができてしまうケースが多くなっています。

つまり「収益化」の部分で、いかにして彼らがリーチできないようなコンテンツを用意し、お金を払っていただける付加価値を提供できるかが課題となるでしょう。

参考記事:【「武道ツーリズム」成功への道】自治体担当者様必見!

福岡,剣道体験
どれだけ付加価値のあるコンテンツを用意できるかがカギ。
画像出典:SAMURAI TRIP

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「外国人旅行客」を誘致する場合

・事業イメージ

ターゲットは、剣道経験がなく、旅行等で日本に渡航してきた外国人の方々となります。
この場合、日本への興味関心は既に持っているものの、剣道に関する知識を持っていないと想定されるので、剣道の魅力を伝えることができれば、それなりの対価を払っていただくことは可能でしょう。

一方で剣道の知識が全くないため、「限られた時間の中で、何を伝えるか」をコンテンツとして吟味する必要があります。

・課題

課題は、何と言っても「集客」と「オペレーション」でしょう。

集客面では、「世界中の旅行客全員」が誘致ターゲットになるため、その中から日本に渡航し、かつサムライ文化に興味があって、剣道を体験しに来てくれるところまで導くのが非常に難しいと考えられます。
この場合の競合は、他の武道ではなく「公道マリオカート」や「忍者体験」といった体験型コンテンツ全般となります。

オペレーション面では、初心者指導に必要な「用具」「場所」「講師」をいかに調達し、さらに剣道素人の方でも安全かつ楽しめるようなプログラムを組成することです。

用具のサイズはどうするか?
道場の広さと設備は問題ないか?
講師は何名必要か?
メニューをどうするか?
何を話すか? 等
いわゆる「剣道的価値観」だけでは対応できない課題が、多数想定されます。

参考記事:【「武道ツーリズム」成功への道】自治体担当者様必見!

剣道体験,SAMURAI TRIP
アクティビティとしての「楽しさ」を、いかに損なわないか。
画像出典:SAMURAI TRIP

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|「価値の押し付け」ではいけない

剣道を見たこともない方に、「1時間で剣道を伝えてください」と言われたら、皆さんは何を話しますでしょうか?
この問いは、非常に重要な意味を持ちます。

ある人は、礼式について話すかもしれません。
ある人は、試合での駆け引きを話すかもしれません。
ある人は、残心について話すかもしれません。
ある人は、剣道や剣道具の歴史について話すかもしれません。

剣道体験SAMURAI TRIPでは、剣道未経験者を受け入れているため、時に剣道家が想定できないような質問に出くわします。

・なぜ蹲踞をするのですか?
・なぜ(中段の)構えは右手が前なのですか?
・なぜ裸足で行うのですか?
・なぜ袴のヒダは、この数(表5本)なのですか?
・なぜ竹刀を跨いではいけないのですか?
・なぜ打突時に声を出すのですか?


たとえ高段者の方であっても、上記の質問に全てに「論理的に」答えられる方は少ないのではないでしょうか。
もちろん相手は純粋に剣道に興味を持っていただいている方々なので、「剣道はそういうものだから」と答えることは許されません。

つまり我々剣道家は、知らず知らずのうちに「根拠のない価値観やルール」をそのまま覚えてしまっていることが数多くあります。
それを相手に求めることは、「強要・押し付け」にあたります。

実際SAMURAI TRIPでは、上記質問を含めた様々な質問に(しかも英語で)答えるべく、文献や資料を集めてインプットを行っています。
それと共に、「日本人剣道家が、いかに剣道のことを知らないか」を痛感いたしました。

とはいえ限られた時間内で全てを伝えるのは不可能なため、最終的には「絶対に伝えるべき価値観」と「伝えなくても良い事柄」の取捨選択を行っています。

このように、「剣道を伝える」ことは「価値の押し付け」になってはいけません。
これは特に、剣道宗主国である日本の剣道家が最も陥りやすい現象ではないでしょうか。

剣道体験,SAMURAI TRIP
「正しい剣道とは何か?」の問いに論理的に答えられるかどうか。
画像出典:SAMURAI TRIP

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|「武道ツーリズム」議論の落とし穴

昨今、スポーツ庁や日本経済団体連合会をはじめ、公的な機関でも「武道ツーリズム」の議論が盛んに行われています。

これらは、基本的に「地方創生」と紐づいており、地方活性化および外国人誘客のコンテンツとして、武道を活用しようという考えが元になっています。

「供給側」ばかりの議論になっていないか

スポーツ庁や経団連の会合等では、いわゆる「供給側」ばかりの議論となり、現場感覚とは乖離があるのが現状です。

例えば、
「うちの地域は、○○道発祥の地で・・・」
「うちの道場では、〇〇段の先生が教えてくださっていて・・・」
「うちの地域には、〇〇道場の他に〇〇神社と温泉があり・・・」
等、自身の地域のコンテンツの話ばかりが出てくることが多いです。

しかし、これらは「外国人ゲストがその地に行く理由」にはなっていないケースがほとんどです。

これは、逆の立場で考えると大変わかりやすいです。
例えば私たちがハワイ旅行に行って、フラダンス体験に参加するとします。

実は、フラダンスの発祥はワイキキやホノルルのあるオアフ島ではなく、モロカイ島といわれています。
しかし、いくら発祥の地だからといって、「じゃあモロカイ島に行くか!」とはならないでしょう。

私たちにとっては、「ハワイでフラダンスをした」体験が重要なのであって、どこが発祥の地かどうかは重要(=行動の決定要因)ではありません。

「武道ツーリズム」でも同じで、
「うちの地域は、○○道発祥の地で・・・」
「うちの道場では、〇〇段の先生が教えてくださっていて・・・」
「うちの地域には、〇〇道場の他に〇〇神社と温泉があり・・・」
といったことが、日本人(=供給側)にとっては大切かもしれませんが、ゲスト側(=需要側)にとっては全く意味がなさない事かもしれません。

それよりも、
・交通の便が良い
・空調設備がある
・写真映えする施設や衣装がある

等の方が、行動の決定要因となるかもしれません。

これらのことは、実際にゲストを受け入れてヒアリングしてみないとわからないことがほとんどです。
逆に言えば、需要側の視点抜きにどんなに議論をしても意味がありません。

100回会議をするよりも、1回ゲストを連れてきて、実際にやってみた方が価値があるでしょう。
それを繰り返す中で、コンテンツが磨かれていきます。

このように、「供給側視点」ではなく「需要側視点」で議論ができているかどうかが重要となります。

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「供給側の視点」だけで議論していないか。
画像出典:スポーツ庁web広報マガジン「DEPORTARE」

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「手段」と「目的」が逆転していないか

「武道ツーリズム」に限らず、インバウンド(=訪日旅行誘致)業界全体で頻繁に起こっているのが、「手段」と「目的」の逆転現象です。

具体的には、行政や自治体中心に「インバウンド事業」と称して、動画や英語サイトを立ち上げるのに巨額の予算が使われる事例が頻発しています。

行政側としては、動画やウェブサイトは「目に見える成果」のため、実績報告がしやすく見栄えも良いことから、安易に予算を投下しがちです。
結果として、「動画や英語サイトを作ること」が目的化しているケースが数多くあります。

あくまで目的は、「訪日外国人ゲストを誘致すること」です。
動画やウェブサイトは、それに向けての手段でしかありません。

実際、スポーツ庁でも「BUDO Tourism Japan – The Spirits of BUDO」という動画を公開し、400万回近くの再生回数を稼ぎ出しました。
しかしこれは、既に武道をやっている人が「俺たちの武道が取り上げられてるじゃん!」ということでSNS上でシェアしただけであり、「俺、昨日テレビに映った!」と言って、SNSでその動画を拡散するのと心理的にはあまり変わりありません。

剣道業界でも、「World Kendo Network」といったSNS内グループで拡散されたことで再生回数が増えた一方、この動画にはランディングページ(=アクセス先のウェブサイト)すらないことから、この動画によって実際に「日本に来る」という行動を起こした人は皆無と言って良いでしょう。

つまり、本来手段であることが「目的化」することで、本来の目的から乖離した施策が多くなっています。

先述の通り、これらも「需要側視点」の議論がないために起こる現象といえます。
一方で、来日している訪日外国人たちが、「何を見て、どのような動機で、どのルートで日本に来たか」をしっかり分析すれば、自ずと必要な施策も見えてくるのではないでしょうか。

「動画を作ること」が目的になっていないか。
動画:~「BUDO Tourism Japan – The Spirits of BUDO」~ by スポーツ庁

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|自治体様向けセミナー動画

上記のような内容を踏まえまして、各自治体様向けに「武道ツーリズム」「インバウンド」「スポーツツーリズム」といった文脈でセミナー等も実施しております。

下記にその模様を動画配信しておりますので、よろしければご覧ください。

【自治体様向け武道ツーリズムセミナー】
外国人向け剣道体験ツアー「SAMURAITRIP」・代表:永松謙使

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|「剣道」を再定義しよう

ここまで長々と書きましたが、結論としては「武道ツーリズム」は「剣道を再定義する良い機会」ではないかということです。

現在剣道は、世界中で楽しまれている素晴らしい武道の1つです。
その宗主国として、日本には「正しい剣道を伝え守る」責任があります。
そのためには、「そもそも正しい剣道とは何だ?」という問いに答えられなければなりません。
その答えは、人によっても異なるでしょう。

この「武道ツーリズム」の機運が、その答えを考える契機となれば良いのではないでしょうか。

< 取材・文:永松謙使>

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