【剣道場の造り方】”自宅に道場を持つ”という究極の夢を叶えるには?

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「剣道の道場を造る」というのは、剣道家にとって大きな夢でありロマンかもしれません。
しかし実際は、「そんな場所もお金もない」「道場を持つほど実力もない」等、なかなか実現させる方は少ないものです。

一方で、昨今では不動産の維持や道場経営の難しさから、自前道場がほとんど姿を消しつつあります。
そこで今回は、思い切って「道場の造り方」をまとめました。

|「剣道場を造る」ということ

「剣道場」というと、どのような景色を思い浮かべますでしょうか?

荘厳な雰囲気に、美しい床板が張り巡らされ、正面には神棚(神前)や日本国旗等があるというところでしょうか。
熟練の剣道家にとっては、「自分の道場を持つ」ことは大きな夢でもあります。

一方で剣道は裸足で行うため、怪我をしないように、通常の体育館施設と異なった造りをしています。
その分、「ビルやマンションの一角に簡単に造る」といったことがしにくい施設です。

さらに費用も含めた様々なハードルもあることから、現在剣道場は公共施設・学校法人・大企業実業団・宗教法人・不動産会社等が主に所有しています。
逆に言えば、民間で道場を所有しているケースはほとんどなく、大多数の剣道チームが公共施設や学校の体育館で稽古を行っています。

結果として、道場造成に関する情報も、普段あまり知ることはありません。
ここからは、「道場を造る」上での基礎知識をまとめていきます。

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民間の剣道場は消えつつある。

|道場造成のハードル

一口に「道場を造る」といっても、数多くのハードルがあります。
これらを乗り越えなければ、なかなか造成までたどり着けません。

土地

剣道場には、広い土地が必要となります。

剣道の試合場は、一般的に10m×10m四方ですので、1コート分でも100平米が必要となります。
当然これだけでは狭いため、更衣室や通路等の設備も考えると最低でも200~300平米規模は必要だと考えられます。
地方であれば問題ないかもしれませんが、特に東京都心ではこの規模の土地は極めて高額であり、あったとしてもマンションやアパートといった収益物件の造成が優先されるため、なかなか確保するのが難しいのが実情です。

費用

剣道場を造成するには、当然費用がかかります。
床板をはじめとした内装はもちろん、更衣室やロッカールーム、さらに昨今夏場の猛暑が厳しいことから、空調設備も必要となるでしょう。
これらにより、それなりの費用が掛かります。(後述)

一方で、フロアに設置するものは特にない上、木材をそのまま使うことが多いため、一般の不動産内装費用と比べると、かなり安価に造成することができます。

税金

「道場維持」の観点から最もハードルとなるのが、税金です。
剣道場はあくまで「不動産」(法人形態によって非課税扱いのケースもあり)ですので、当然そこには固定資産税がかかってきます。

さらに、代替わりの際の「相続税」は、道場の存続に極めて大きい影響を与えます。
日本国の相続税負担は非常に大きい上、納税は現金で求められるため、道場を含めた不動産を売却して現金化しなければならないケースも散見されます。

騒音

剣道は大きな声を出す上、竹刀での打突音や踏み込みの音等、比較的大きな音が出る競技です。
不動産が密集しているエリアでは、地上にある道場では、かなりの防音対策が必要です。

実際に、近隣から警察へ通報されたケースも多数あります。
このため東京都内の道場は、地下に作っていたり、企業の持つビルの中に造成されているケースが多いです。

衝撃

騒音と同様ですが、剣道は踏み込みによりかなりの衝撃があります。
一説では、成人男性の踏み込みの衝撃は700kg~1t規模になると言われています。

このため、隣接する不動産や、階上階下へのケアは必須と言えるでしょう。

参考記事:【剣道の道場経営の難しさ】

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道場建設には様々なハードルがある。

|床板の種類

剣道場で最も大切になるのは、やはり床板でしょう。
床板と言っても、どのような素材があるのか、どのような造りになっているのか等まで知っている方は少ないでしょう。

そこで、床板の造りからの木材の種類まで、カテゴリ別に解説いたします。

造り方

一口に床板と言っても、材木の種類、材料の大きさ、塗装、施工法等により、その仕上がりは大きく異なります。
施工業者によっても異なりますので、綿密な打ち合わせが必要です。

一般的には床の下に鋼製束または、ウレタンもしくはゴム製のクッション部品を設置します。
これにより、床のクッション性を生み出します。

この上に、床板を組み上げやビス止め等によって、隙間なく並べていきます。
板材のタイプによって、隙間の出来具合も異なるため、板材が割れないように最適な施工手法を採ります。
最後に表面を加工し、場合によっては表面塗装を行って完成となります。

一般に剣道の場合は、裸足であるがゆえに足に大きな負担がかかることから、鋼製束よりもゴムやウレタン製のクッション部品のほうが、安全性が高いと言えるかもしれません。

木材の種類

剣道では、アキレス腱やふくらはぎの怪我、また足の裏の皮の損傷等が多いことで知られています。
これは、剣道が「すり足」が基本となっている上、激しい動きの中で、ストップした際の足への負担が大きいためです。

そこで床板に関しましては、ある程度の滑りと弾力が必要と言えるでしょう。
その観点では、比較的針葉樹が適しているといわれています。
日本で手に入りやすい針葉樹の木材は、「杉(スギ)」「檜(ヒノキ)」「松(マツ)」の3種類です。

以下にその特徴を記載します。
尚、素材の特徴いかんに関わらず、製材方法や乾燥方法、加工方法等により、実際の触感は大きく変わります。
あくまで素材自身の特徴であり、完成品の状態にすべて反映されるわけではありません。

杉(スギ)

日本で最も資源量が多い樹木が、「杉(スギ)」です。
その数は、備蓄量ベースで檜(ヒノキ)の3倍もあり、日本全国に存在しています。
床材に使用するためには、節が少なく、密度が高いものが理想ですが、そういった種は手に入りづらい個体となっています。

素材としては、若干赤みがかっているのが特徴で、ほかの材質に比べて比較的耐久性が高く、柔らかめであるのも特徴です。
材料も豊富であることから、剣道場では広く一般に選ばれている素材です。 尚、杉(スギ)材の中にも、様々な種類があります。

檜(ヒノキ)

檜(ヒノキ)は、一般的に住宅建築等において杉材よりも高級とされています。

素材としては、比較的滑りやすいのが特徴です。
資源量が杉材よりも少ないこともあり、コストとしても若干高めとなります。

松(マツ)

松(マツ)は古くから日本全国で重用された材木ですが、近年ではマツ科樹木に発生する感染症「マツクイムシ」の被害により、入手が困難になっている木材です。
そのため、現在松(マツ)を使用した床板は、いわゆる集成材(後述)が多くなってきています。

素材としては、比較的硬めであるのが特徴です。
個体数減少により、コストとしても高めとなっています。

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素材や工法、塗装等によっても大きく変わる。

|板の種類

剣道の床板に使われる板材には、素材のほかに「無垢材」と「集成材」というものがあります。
細かく板を張り合わせて、細かく接着部があるものが集成材、接着結合や複数の素材混合が無く、いわゆる一枚の板同士で床を構成しているのが無垢材です。

以下にその特徴を記載します。

無垢材

木そのものを生かした板材で、継ぎ目が少なくカンナで仕上げることが多いため、木本来の触感や、床をつかむ感覚を得ることができます。
その一方で節が多く、暦年の仕様で年輪や節以外の部分が摩耗で痩せていくため、凹凸ができやすく、隙間が生まれやすいのも特徴です。

その結果、より床を掴みやすい傾向にありますが、古い道場では凹凸や隙間ができることによる怪我防止のため、テープ等での細かな補修が必要となります。

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無垢材の床材。
画像出典:株式会社五感 施工例(東京都 五感剣道場 武切房・剣道場床ショールーム)

集成材

断面の小さな板材を接着剤で結合し、再構成して作られる板材を指します。
体育館等で使われているのは、主に集成材が多いと言われています。

整形のためにヤスリで仕上げることが多いため、サラサラした触感です。
また節や年輪の影響をあまり受けないため、隙間が生まれにくく、表面の凹凸が少ないのが特徴です。

その一方、木材としての特性や、滑りやすさは低減される上、複数の素材を組み合わせているケースもあるので、季節性による乾燥状況次第で割れやすいという特徴もあります。
いわゆる屋内競技全般に適しており、表面を塗装加工することも多く見られます。

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集成材の床材。

|表面塗装

剣道では、道場や試合会場によって、床の感触や滑り具合がかなり異なるのを感じることも多いのではないでしょうか。
特に大会等は体育館施設がおおいため、表面のニス塗装で滑りにくいというケースが多いと言えます。

とはいえ、剣道はすり足が基本となるため、怪我防止の観点からも表面塗装の判断は極めて難しいものです。
床の素材によって相性も異なりますので、以下にまとめていきます。

ウレタン塗装

いわゆる「ニス塗装」ともいわれるもので、表面をコーティングし、滑らかにする塗装です。

集成材との相性が良く、バスケットボール等にも使用するような体育館施設では、一般的な表面塗装です。
剣道の観点では、木材表面の滑りが失われるため、足裏への負担が大きくなり、ストップをかけるときに皮が破れたり、場合によってはふくらはぎやアキレス腱への負傷につながることがあります。

オイル塗装

いわゆる「ワックス」と言われる塗装です。
色合いをきれいに保ち、床の摩耗も一定程度防止してくれます。

その一方で、年に一度は塗布を行う必要があることと、木材表面の弾力が若干失われるため、やや硬く仕上がるのが特徴です。
集成材や過乾燥木材の床と、比較的相性が良いと言われています。

カンナ仕上げ

無垢材の道場の場合、カンナ仕上げで表面塗装を行わない施工が可能です。
この場合、木材の持つ表面の触感や特性が生かされるため、床を掴む感触や適度な滑りやすさが保たれます。

一方で、表面の塗装加工を行っていないため、暦年の仕様により色が黒ずんできたり、床板そのものの摩耗が進むという特徴があります。
古い道場では、床の変化自体を「暦年変化」として好意的に捉える傾向もあります。

とはいえ、凹凸や隙間が生まれやすいことから、細かいメンテナンスが必要となります。

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表面の塗装は、木材や工法との相性にもよって変わる。

|その他の必要設備

剣道場は、道場空間だけあれば良いものではありません。
多くの人が稽古に来る空間では、様々な付帯設備が必要となります。

更衣室

剣道の場合、当然着替えが必要となりますので、男女別の更衣室が必要となります。

男性は比較的道場で着替えるケースも多いですが、現代の時勢的には両方必須となる可能性が高いと言えます。
また道場運営の場合、いわゆる「置き防具」をなさる方もいらっしゃるかもしれません。

そのために、更衣室か道場の側面等にロッカーや棚を設置することも必要となります。

空調設備

かつては、「暑い中や寒い中で稽古することで、心身を鍛える」という価値観が一般的であり、それ自体は確かに一定の鍛錬効果はあったかもしれません。

しかし昨今では、地球温暖化により、夏には命の危険があるレベルの酷暑が当たり前となり、冬場にも突発的な大寒波が発生するようになりました。
高齢競技者が多いという競技特性もありますので、空調設備は必要となってくる可能性が高いと言えます。

とはいえ、道場空間は大きいため、空調設備の設置は大きな費用と工事負担がかかります。
学校や公共施設以外では、あまり設置が進んでいないのが実情です。

空調設備のない道場では、特に夏場は日没後に稽古を行う等、健康に配慮して稽古を行っています。
また全日本剣道連盟でも、「熱中症報告窓口」を設置し、広く注意喚起を行っています。

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空調設備は必須となりつつある。

|費用

先述のとおり、剣道場は一般の不動産と異なり、空間内に様々な設備を設置するわけではありません。
結果として、「道場空間のみ」であれば比較的安価に造成が可能です。

工法や素材、広さにもよりますが、
・剣道場1コート分+α程度の広さ
・安価な杉(スギ)集成材使用
・一般的な工法

であれば、300~400万円程度で造成可能と言われています。
※道場空間の内装のみで、土地不動産やその他設備は除きます。

これが檜(ヒノキ)素材となると約2.5倍程度、さらに無垢材を使用したり、素材をアップグレードすると、さらに費用は加算されていきます。
※あくまでヒアリングベースの参考数値です。

|道場の床造成業者

ここからは、剣道場の床施工を手がける業者をご紹介します。

株式会社五感 (東京都)

「剣道場床建築工房」という名称でも知られ、有名高校や大学の道場はもちろんのこと、個人宅の道場空間造成まで手掛けています。

床下に設置するクッション素材は、特許取得済みのオリジナル部品で、独自工法も確立しており、剣道場造成のパイオニアとも言える存在です。

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株式会社五感(剣道場床建築工房)

武床工舎 (茨城県)

剣術家である椎名市衛氏が手がける、剣道場の床専門工房です。
地元茨城県を中心に、地方での施工実績も豊富です。

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武床工舎

ミズノ株式会社(東京都)

大手スポーツメーカーのミズノも、スポーツ施設を手がける部署があり、剣道場の施工実績があります。

※現在受付を行なっているかは不明です。

株式会社林屋(東京都)

東京都新宿区にある建設会社ですが、剣道場施工実績があります。

※現在受付を行なっているかは不明です。

|自分の道場を持ちたい!

「道場を持つ」というのは、長年剣道に携わる方にとっては、大きな夢の一つかもしれません。
特に昨今は、民間での自前道場は姿を消しつつあり、大企業の実業団道場も、企業業績悪化により今後売却や再開発が予想されます。

そういった中で、道場を持てる人はほんの一握りではないでしょうか。
今後「道場での剣道」を伝承していくためにも、民間での道場を守り、さらには増やしていく取り組みが必要かもしれません。

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