コロナウィルスの影響で、部活動や道場の対面稽古自粛の中、きっともどかしい人も多いと思います。
そんな皆様に、自宅で一人で可能な稽古法を厳選いたしました。
筋力トレーニングや素振り、その他より実戦的な稽古法を含め、自身の剣道に直結する稽古法をご紹介します。
|目次
・自宅でできる筋力トレーニング
・自宅でできる素振り稽古法
・実戦的自宅稽古法
|自宅における稽古とは?
自宅でできる稽古には、筋力トレーニング、素振り、その他稽古法に分類できます。
以下に、実際に自宅でできる稽古方法をご紹介していきます。
|筋力トレーニング
はじめに、自宅でできる筋力トレーニングから紹介していきます。
筋力トレーニングは、剣道に意味があるのか疑問に思う人もいるかもしれません。
プレースタイルにもよりますが、日本のトップ選手が筋力トレーニングを取り入れているのも事実です。
全日本選手権ベスト8、全日本七段選手権の優勝者など現在でも活躍されている橋本桂一氏は、インタビューの中で筋力トレーニングの重要性について述べています。
打突の局面や試合の局面を考えると、一定の筋力トレーニングは必要だと考えています。
出典:【剣道の真髄を追求する】伊田テクノス剣道部 橋本桂一
打突機会と捉えるためにも、肉体スペックが高いことに越したことはないと思います。
一方で、必要となる筋肉は、それぞれのプレースタイルによってもバラバラだと思います。
それを確認する方法としては、例えば大会で何試合もこなした翌日に、普段とは異なる箇所が筋肉痛を起こすことがあると思います。
これは、本来必要にも関わらず、そこの筋力が足りていないことを意味します。
そこで、当該箇所をトレーニングすれば、プレーの向上には寄与すると考えられます。
下半身の鍛錬
剣道では中段の構えが主流のため、左足で踏み切り身体を押し出すことが多いと思います。
そのため、元にある太腿の筋力やふくらはぎの筋力そして左足の母指球(足の裏の親指の付け根にあるふくらみ)の感覚を鍛える必要があるので手軽なトレーニングメニューをご紹介します。
※上段の構え等の足の配置が逆の場合は、左右逆としてお取り組みください。
1.「左足だけで背伸び」
これは名前の通り、直立した状態で左足のみを使って背伸びをします。
これを30回1セットなどで繰り返しすると、ふくらはぎの筋力アップにつながってきます。
最初にバランスをとることが難しい方は椅子などに手をかけながら、左足のふくらはぎと母指球を意識しながらトレーニングしましょう。
2.「左足ジャンプ」
名前の通り、左足だけでジャンプすることです。
この時に意識することは、着地の仕方です。
飛び上がるときだけでなく、着地のときに足の指から衝撃を吸収しながら着地することで、着地のときもトレーニングになります。
3.「左足スクワット」
名前の通り、左足でスクワットすることです。
これは左足でスクワットするだけのことなのですが、片足でスクワットするにはかなりの筋力とバランス力が必要になるので少し難易度が高いです。
左足でスクワットしながら右手で地面をタッチすることにより、屈むような形でスクワットができるのでバランスがとりやすく、少し簡単に取り組むことができます。
この時の注意することは、上半身をなるべく真っ直ぐにしておくことです。
上半身を真っ直ぐにすることにより、地面と手との距離が出来き、より足に負荷がかかり筋力アップにつながります。
上半身の鍛錬
打突力がなく、一本にすることができない人には、上半身のトレーイングも必要です。
上半身の中でも、特に肩から胸周り、そして腕を鍛えることができるトレーニングをご紹介します。
まさに、「打突力」に直結するトレーニングになります。
腕立て伏せ
腕立て伏せは、筋トレの基本ともいえるよく知られたトレーニング方法です。
やり方は両手とつま先を地面につけ身体を伸ばし腕を曲げ地面に平行に下げます。この時に腰が浮かないように意識することが大切になります。
そして腕を曲げた後、腕を伸ばし身体を最初の状態に戻すまでが1回です。
基本的な筋トレですが、手幅を変えることにより様々な部位を鍛えることが可能になります。
比較的ポピュラーななトレーニング方法ですが、手幅を変えることで様々な部位を鍛えることができます。また腕を曲げるときに、身体を前に出すようにすることで、更に効果が上がります。
基本的な肩幅ほどの手幅でやる腕立ての他に、以下にいくつかご紹介します。
1.ワイドプッシュアップ
手幅を肩幅より拳2つ分ほど開く腕立て伏せ
大胸筋の外側や肩に効果があります。
2.ダイヤモンドプッシュアップ
両手の親指と人差し指を重ね、菱型(ダイヤモンド)を作る腕立て伏せです
上腕に特に効果があります。
クランチ(腹筋)
一般的にいう腹筋のトレーニングです。
打った時の姿勢を保つことや、つばぜり合いなどで相手と崩しあう中で、自分が崩れないためや、相手を崩すためにも体幹、特に腹筋の力は必要となるでしょう。
1.クランチ
首の後ろで掌を組み、仰向きで身体を伸ばし、
足を揃え脚と上半身を少し浮かせます。
そのまま両ひじと膝をつけ、元の状態に戻すまでが1回です。
戻す際に足と上半身を、地面に付けないように注意してください。
またしっかりと腹筋を意識して、身体を持ち上げるようにしてください。
腹筋の正面上部を鍛えることができます。
息を吐きながら行うと、より効果的です
2.バイシクルクランチ
クランチと同じ体勢から、交互jに「右ひじと左ひざ」「左ひじとと右ひざ」がつくように上体を起こしていきます。
斜腹筋を中心に、鍛えることができます。
3.ドラゴンフラッグ
仰向きで横になり、足を少し浮かせます。
頭の上にいすなどを置き、その縁を掴むといいでしょう。
肩を地面につけたまま身体を浮かせ、腹筋を意識しながら足を地面に付けないように元の状態に戻ります。
これで1回です。
腹筋の下部を中心に鍛えることができます。
|自宅でできる素振り稽古
剣道において、素振りは基礎を形成する上で非常に重要な練習法です。
素振りには、剣道上達のための必要要素がたくさん含まれています。
剣道を始めたばかりの初心者はもちろん、剣道歴が数十年の熟練者と呼ばれる高段者であっても、基本的な素振りを何度も反復することにより、基本的な動作を日々確認しています。
剣道の基本かつ重要な練習法である、素振りの目的、種類、方法について紹介していきます。
用いる得物の種類
素振りで用いるの得物は、一概に竹刀とは限りません。
竹刀の他にも木刀や模擬刀を用いることによって、竹刀での素振りでは得ることが難しい独特な効果を得ることもできます。
以下を参照し、自分に必要な要素を持つ素振りを発見しましょう。
1.素振り用木刀
素振り用木刀とは通常の木刀よりも重い、素振り専用の木刀のことを指します。
一般的な木刀の重さが約500gであるのに対して、素振り用木刀は約1kg前後、通常の木刀に比べ約2倍近くの重さがあります。
この素振り用木刀を用いる主な目的は「筋力アップ」を測り、打突時の体勢の安定感を得ることです。
もちろん通常の素振りでも十分に筋力トレーニングになるのですが、この素振り用木刀はその効果に特化しています。
この木刀で素振りを行うことで、竹刀の重さに操られることなく、竹刀を自身の意のままに操作することが可能になります。
2.桐の木刀
桐の木刀は「打突のスピード」を向上させたい人におすすめの木刀となっております。
桐の木刀は重さが、約150g前後と非常に軽量な木刀です。
打突時のスピードを上昇させるには、重い木刀を振り込むのが効果的だと思われがちですが、一部では軽い木刀を振った後の方が素振りのスピードが上がるという研究結果もあるようです。
軽い木刀を丁寧に振り込むことによって、素早い動きが体に染み込むこと、脱力状態での打突がスピードアップの要因だと思われます。
3.模擬刀
模擬刀とは居合等で使用される日本刀を模した刀で、刃のない刀のことを指します。
「打突時の刃筋を矯正したい」方には、模擬刀での素振りをおすすめ致します。
木刀とは異なり模擬刀の刀身は非常に薄く、かつ鉄の重量もあるので、刃筋正しく振ることができないと手首を痛めてしまいます。
模擬刀を刃筋正しく振ることができると、「ヒュッ」という空気を切る音が出ます。
この音を鳴らせるようにまでにはなかなか時間がかかりますが、これを修得することができれば、通常の竹刀でも自然と刃筋正しく打突を行うことが可能になるでしょう。
|実戦的自宅稽古法
最後に、よりレベルの高い自宅稽古法として、教士八段岡田守正先生考案の自宅でできる稽古メニューをご紹介します。
(オンラインサロン「剣道イノベーション研究所」から提供)
鏡を使った軌道確認
まず紹介するのは、鏡を使った稽古法です。
体全体を写せる鏡の前に立ち、紐を垂らす等して、体の中心線を確認します。
そして、その中心線をなぞるように肩を支点にして力まずに振り上げます。
このときに手首や肘に力をいれてしまうと中心点を外れてしまったり、振り上げたときに剣先が倒れてしまうことがあるので注意が必要です。
鏡を使った膝抜き素振り
次に紹介するのは、「膝抜き」と言われる稽古法です。
頂点まで振りかぶると同時に、膝の脱力を利用して振り下ろす稽古法です。
まずは、構えたままで「膝を抜く」感覚を得ると共に、膝関節の反射反応で元の体勢に戻します。
これを覚えたら、そこに上下振りを交え、膝の脱力を用いて腰の位置まで振り下ろします。
通常、面を打突する際は、上半身が力みがちです。
そこで、この膝抜きは意識を胆に集中させることで、上半身の無駄な力を抜くことができます。
この時も、鏡を使って中心線の軌道を確認すると良いでしょう。
踏み込み稽古法
3つ目に紹介するのは、「80cm踏み込み」と言われる稽古法です。
打突する際は、一足一刀の間合い(=約2m)から約80cm踏み出すと、相手に打突が届きます。(39竹刀使用の場合)
そこで、「前足を踏み出す→後ろ足を踏み切る→前足を踏み込む→後ろ足を引き付ける」の一連の動作を、80cmの距離を目安に行います。
この時、
・膝の真下の位置を踏み込む
・後ろ足は「蹴らず」に「踏み切る」
・前足を踏み込んだ瞬間に、膝を伸ばして、自然と後ろ足をついてこさせる
ことが重要です。
先述の「膝抜き」動作と連動していますので、両方身に付けることでスムーズな打突と体の運用を学ぶことができます。
鏡を使った日本剣道形稽古法
最後に紹介するのは、鏡を用いた日本剣道形太刀一本目になります。
日本剣道形の太刀一本目は、上下振りや正面素振り等、打突の基本となる要素が多く含まれています。
鏡を使って、中心線や打突の軌道を確認しながら行います。
これにより、昇段審査における剣道形の学習と共に、打突における軌道や刃筋の確認を行うことができます。
自宅稽古でも上達できる
剣道の稽古は道場でしか行えないと考えがちですが、筋トレや素振り、日本剣道形をはじめとする稽古法など、自宅練習が可能な稽古も多々存在します。
試合での一本にこだわりを持つあまり基本が乱れる、長年稽古を積む中で気がつかない間に癖が生まれていたという経験がある方もいらっしゃると思います。
在宅を求められている今、是非実践されてはいかがでしょうか。