
▼武道具店インタビュー▼
「WIN-WINを作る経営思考」
〜熊本武蔵堂(竹山商事)代表取締役 陳金錬〜
竹刀の大手サプライヤーとして、業界内で有名な熊本武蔵堂(竹山商事)。
海外出身者ならではの大胆な投資判断と、繋がりを大切にする繊細な経営感覚についてお伺いしました。
(以下 KENDO PARK=KP 陳金錬氏=陳)

|日本仕込みの竹刀製作
KP:
創業の経緯を教えてください。
陳:
1970年頃であったと思いますが、当時日本の江戸川武道具(@東京)の2代目長崎保高氏が、私の母国である台湾に竹刀製作の技術指導に来ていました。
その際に、兄と一緒に竹刀製作のノウハウを学びました。
そこで10年くらい竹刀製作を学び、台湾現地で独立したのが事業の始まりです。
その後、平成元年に日本でも法人を設立し、社名を「株式会社竹山商事」といたしました。
尚、今日での台湾企業による竹刀製造は、全て彼が技術指導に来た事が始まりといっても良いかもしれません。
KP:
社名の竹山商事という名前は、どこから来ているのですか?
陳:
当時竹刀製作を行なっていたところが、台湾の「竹山」という地名だったため、ルーツを忘れないという意味で竹山商事と名付けました。
当初20年くらいは、竹刀のみを取り扱っており、全国の大手卸および小売店に卸す形で事業を展開していました。
当時は、50~60万本/年ほど販売していたと思います。


|サプライチェーンを築く
KP:
その後、総合剣道具メーカーとして展開なさいます。
陳:
その後、江戸川武道具にホームステイ等して技術を磨き、兄は旧オガタ武道具工業(@熊本・現在廃業)へ勤務し始めました。
その間私は、竹刀の国内卸向け販売に特化しており、特に全国にある大規模卸業者、いわゆる「第一卸業者」とは強固な関係を築きました。
そのうちに、枝分かれ式に小売店を紹介いただけるようになり、年月をかけて日本全国に販売網を築くまでになりました。
そんな折に、2010年にオガタ武道具工業が廃業する運びとなり、(2011年に正式に自己破産申請)兄が台湾へ帰国することとなりました。
そこで、日本法人の竹山商事を私が引き継ぎ、同時にオガタ武道具工業の従業員や職人を受け入れることとなりました。
もともとオガタ武道具工業は、「武蔵号」ブランドで優れた職人がいたこともあり、彼らを受け入れるのを機に、竹刀以外の剣道具も取り扱うようになりました。
KP:
一気に商品ラインナップを拡大し、在庫を増やす形となりましたが、その投資判断について教えてください。
陳:
人もモノも設備も増えましたので、金額としてはかなりの金額を投資いたしました。
とはいえ、竹刀の卸だけでは将来先細りになっていくと考えていたことと、オガタ武道具の従業員を引き継ぐ以上は、自分で剣道具(=防具)類の販売に関して理解する必要があると考えていました。
そういう意味でも、投資判断としては適切であったと思います。
KP:
販路はどのように確保したのですか?
陳:
リアルとオンライン双方の販路が必要と考え、両方の販路を早急に組み立てました。
リアル面では、竹刀販売で築き上げた販売ネットワークと、オガタ武道具工業が持っていた販路をベースとし、それに加えて熊本に実店舗を2店舗開店いたしました。
それが「熊本武蔵堂」です。
オンライン販路としては、楽天を中心に各通販サイトにショップをオープンいたしました。
当時はまだネット通販が一般的ではなかったため、立ち上げには苦労いたしましたが、専門の担当者をつけて地道にショップ構築を行いました。
その甲斐もあって、今では販売の約半分を担うまでに成長いたしました。


|身の丈に合わせた経営
KP:
経営や投資に関する考え方を教えてください。
陳:
目先の商売も大切ですが、それよりも長年かけて取引先との関係を築き上げることを重視しています。
自分の「WIN」だけでなく、相手の「WIN」も考えて取引をしていくことを意識しています。
一度強固なサプライチェーンを築いてしまえば、その後長期にわたって事業を安定化させることができます。
それに加え、自分が困った時も助けてくれる可能性が高まるからです。
もちろんビジネスの世界ですので、ドライな部分の方が多いですが、それだけでは現在の体制は築けなかったと思います。
投資判断に関しては、「自分の身の丈と成長速度」を基準としています。
剣道具業界に限らず、勢いや見栄えを重視して事業展開をしているケースは多いと思います。
もちろん自分の身の丈だけの投資では、なかなか成長は見込めませんが、自分の成長速度やイメージを加味して投資判断することは、事業の永続性につながると思います。

※左:陳愛宝専務 右:陳金錬社長

KP:
そのような投資判断は、どのように磨かれるものでしょうか?
陳:
これらは感覚的なものですので、一概に数字で弾き出せるものではありません。
ただし、「成長イメージ」というのは経営する者、つまりリーダーとして持っていなければいけないものですので、事業を行いながらその感覚を磨いていくことが大切なのではないかと思います。
実際のところ、竹山商事(熊本武蔵堂)でも大型投資をして大量の在庫を所有していますが、それは築き上げてきたサプライチェーンが根拠となっています。
それに加え、事業展開上の広がりと成長性を見込んでのものです。
このように、常に堅実さと周囲との関係性を保つことこそ、大切であると考えています。
KP:
今後のビジョンを教えてください。
陳:
現状では、竹刀提供では一定の地位を築いていると思いますので、今後は竹刀以外の用具提供を拡大していきたいと考えています。
事業としては、とにかく地道に事業展開をして、会社と雇用を守り、剣道具の主要メーカーとして剣道家のために働いていきたいです。
是非今後ともご愛顧のほど、よろしくお願いします。

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