剣道を知れば知るほど、「熊本県」が非常に剣道において重要な立ち位置にいる事に気がつくでしょう。
寺本将司氏、内村良一選手、西村秀久選手等、熊本県からは数々の名選手が輩出されています。
今回はそんな熊本県の剣道事情と、県内の武道具店をご紹介します。
|何故熊本県は剣道が盛んなのか
熊本県など九州地域では、古くから剣道が盛んです。
特に剣道においては、全国すべての道場のうち2割が九州に集中しています。
人口は全国の1割程度であることを考えると、地域における道場数は人口比の2倍にもなるのです。
また、剣道における甲子園ともいわれる「玉竜旗」が福岡県で開催されることもあり、剣道人気は根強いものがあります。
熊本県民を表す言葉として、「肥後もっこす」という言葉があります。
かつて肥後藩であった頃に、武道を奨していた熊本県の男性が、「とことんまでやりぬく」という性格であったことを意味しています。
このような頑固で妥協しない気質を、よく表した言葉です。
このような県民性も、熊本県の剣道が全国的に見てもトップクラスである所以かもしれません。
|熊本県の強豪道場
龍驤館(りゅうじょうかん)
熊本県における小学生剣道で、近年成績を上げている龍驤館道場です。
多くの地元の大会で優勝し、全国道場対抗大会にも出場しています。
白坪剣道愛育会(しらつぼあいいくかい)
全日本選手権優勝経験のある寺本将司氏(現大阪府警)や正代賢司氏(元神奈川県警)、世界選手権日本代表として活躍した正代正博選手(現警視庁)が幼少期に所属した道場として有名です。
尚武館(しょうぶかん)
若いながらも日本一や全国大会出場を経験した指導者が集う歴史に新しい道場です。
筑波大学や国士館大学等、有名校出身の若手剣道家も多数在籍し、全国青年大会三連覇など高い実績を残しています。
|熊本県の強豪中学・高校
剣道界屈指の強豪中学や高校は、いずれも九州にあります。
中でも熊本には、全国的強豪校が多数存在します。
高森中学校
熊本の阿蘇市にある高森中は、これまでに三度全国中学校剣道大会を制した名門中学です。
この中学から出た選手が全国の強豪の高校に進学し、インターハイで活躍している場面は高校剣道の見どころの一つともいえるかもしれません。
高森中出身で全国中学校剣道大会優勝メンバーである梶谷選手と河村選手が、九州学院高校と麗澤瑞浪高校のレギュラーとして2016年のインターハイ決勝で相まみえた場面も記憶に新しい人は多いと思います。
九州学院中学校
高森中と並び、剣道界においてその名を知らない人はいない剣道の名門校です。
全国中学校剣道大会において、これまでに何度も優勝を果たしています。
この九州学院中は、中学校でありながら付属関係にある九州学院高校と稽古を共にしており、日々の練習量、質ともに全国でもトップといえるでしょう。
九州学院高校
九州学院中学校出身のメンバーに加え、全国から屈指の名選手が集う九州学院高校は、数々の名選手を輩出しています。
九州学院高校はインターハイ出場34回、そのうち優勝を7回(うち4連覇1回)はたしています。
魁星旗優勝7回、玉竜旗優勝9回(うち4連覇1回)、選抜優勝11回(現在7連覇中)という化け物みたいな成績を残しています。
さらに、4大大会(選抜、魁星旗、玉竜旗、インターハイ)を2013年インターハイ~2017選抜までなんと14連覇。およそ4年間にわたって不敗神話を築きあげました。
1回優勝するのも相当困難な4大大会制覇をこれだけの数連覇しているのは九州学院以外にはいません。
今では日本中の中高生剣士が彼らに憧れを抱き、「打倒・九学」を掲げ練習に打ち込んでいます。
有名出身選手は、先ほど紹介した西村選手をはじめ、警視庁で全日本選手権優勝3回を誇る内村良一選手、当時史上初の高校生で日本代表に選ばれた山田凌平選手、昨年韓国で開催された世界大会で日本代表として優勝に貢献した星子啓太選手、星子選手と同じ代で二枚看板として大活躍した梶谷彪雅選手など、他にも多数有名選手がいます。
間違いなく熊本、ひいては全国の剣道界をリードする存在です。
全日本選手権やインカレ決勝でも九州学院出身の選手の多さには目を見張ります。
鎮西高校
こちらも紹介してきた数々の中学・高校に負けず劣らず、インターハイや九州大会で上位入賞を果たす強豪校です。
強さの秘訣は「形」の稽古であると顧問である一川先生は言います。
形を繰り返し練習することで、刀を振った時の姿勢や刃筋を学ぶことが出来るのです。
鎮西高校では通常の日本剣道形に加え、市川先生がお父様から教わった二天一流も学びます。
日々の厳しい稽古とその基本的な動きの確認のための形の稽古、この繰り返しが鎮西高校の強さの秘訣なのです。
有名出身選手は、2011年のインターハイ個人で3位になった阪口克哉選手や、九州大会個人で優勝した上原裕二郎選手などです。
阿蘇高校
阿蘇高校は、男女ともに剣道に力を入れている高校ではありますが、近年は特に女子の活躍が眼を見張るものとなっています。
インターハイ男子団体優勝2回、女子団体優勝8回(うち4連覇1回)と男女ともにインターハイ優勝経験があります。
男女でインターハイを制したのは史上4校(PL学園、八代東、高千穂、阿蘇)しかおらず、大偉業であることが分かります。
玉竜旗では女子史上最多である10回の優勝を誇ります。
熊本県の国体予選でもトップを占めるその実力は、全国大会でも大きな存在感を放っています。
有名出身選手は、阿蘇高校時代にともに全国制覇の中心選手として大暴れし、今現在でも実業団や全日本女子選手権で活躍している興梠あゆみ、舞姉妹や、2016年インターハイ3位になった代の立役者で、現在日体大の二枚看板として活躍する桑野こゆき、相馬紀香両選手などです。
去年の関東学生女子個人で相馬選手が優勝、全日本学生女子個人で桑野選手が3位になるなど、現在も大活躍中です。
|剣道界最強の男・西村英久
剣道界で誰が一番強いのか。
そう問われた時、様々な強豪選手がひしめく中で最高峰の舞台とされる全日本選手権を2連覇した西村英久選手の名前が上がるでしょう。
熊本県警に勤める彼は、いったいどのような人なのでしょうか。
全日本優勝までの経歴
1987年生まれであり大分県出身の西村選手は、地元である大分の中学校を卒業したのち、熊本の九州学院高校に進学しました。
全国から選手が集まる九州学院でその実力が認められ2年生から大将として大会に出場し、玉竜旗を2連覇するなど輝かしい成績を残します。
その後大学剣道の名門筑波大学に進学し、大学でも優勝街道を歩むかと思われましたが、あと一歩のところで勝ちきれない時期が続いたそうです。
しかし大学3年時の全日本学生選手権大会で優勝するなど、苦しい中でも結果を出し続けました。
熊本での挑戦
大学を卒業したのち、西村選手は熊本県警に奉職し、機動隊員として、また日本を代表する剣士としてキャリアをスタートします。
その中でも彼は、
・都道府県対抗大会優勝
・世界剣道選手権大会個人三位、団体優勝
・第63、65、66回全日本剣道選手権大会優勝
と、輝かしい戦績を残しています。
特に、史上3人目の全日本剣道選手権2連覇を果たしたことは、歴代の剣道選手の中でも最強の剣士の一人であることの証明といえるでしょう。
しかし、すべてが順調にいっていたわけではありません。
2015年の第63回全日本選手権に優勝し、連覇がかかった64回ですが、調子が上がらず優勝を逃してしまいました。
この不調には彼の苦悩があったと、後に西村選手は語っています。
そのきっかけは、2016年に起こった「熊本地震」です。
機動隊として救助や復興に奔走している中で、人の死や遺族の悲しみを目の当たりにし、熊本県を元気づけようと奮起した西村選手でしたが、いつしかプレッシャーが大きくなりすぎてしまい、勝つことができなくなったと語っています。
この葛藤の中で初心に立ち返り、自分の強みを取り戻したからこそ、後に全日本選手権を2連覇することができたのではないでしょうか。
西村選手の剣道
西村選手の剣道はなによりその積極的な「攻め」の姿勢であるといえます。
相手に果敢に攻め、そのうえで得意技である小手を打ち込んでいく、というスタイルの試合を運びがよく見られます。
身長は170cmでありながら、体重90kgを超える体躯を持ち、大柄な選手に対しても軽やかな足さばきで圧倒する様は圧巻です。
県内の武道具店7選
熊本武蔵堂
圧倒的な在庫を保持する武道具店です。
特に竹刀は常に1万本以上の在庫を所有し、 豊富な商品ラインナップが特徴です。
お求めやすい価格で、通販事業も行っています。
住所 本社:〒861-8035 熊本県熊本市東区御領6-3-1
電話 096-389-5273
営業時間 9:00~17:30
定休日 日曜・祝日
ホームページ https://kendopark.jp/shop/detail/41
KIZUNA
名門九州学院出身で、玉竜旗20人抜きの経験もある諏訪元大介氏が経営する武道具店です。
独特なデザインの剣道具で知られ、特に防具袋と竹刀袋はスタイリッシュなデザインで、全国にユーザーがいます。
住所 〒861-1308熊本県菊池市亘44-3
電話 0968-25-3383
営業時間 平日11:00~19:30・土/日/祝日11:00~18:00
定休日 水曜
全日本武道具
武道具店界の超有名店全日本武道具の本社は熊本県にあります。
ALL JAPAN PITCHは古式型や激実戦型など様々な型があり、多くの剣道家に愛用されています。
住所 〒861-0142 熊本県熊本市北区植木町鐙田1037
電話 096-288-4949
営業時間 10時~18時
源武堂
源武堂は、創業46年の老舗武道具店です。
使いやすく質の良い武道具と、バランスの良い竹刀を売りにしています。
バイオ竹刀「火の国」は全国の有名選手が愛用しています。
住所 〒862-0973 熊本県熊本市中央区大江本町1−32
電話 096-372-3666
営業時間 月・水~土 9:30~20:00
火曜日 9:30~18:00
日・祝日 9:00~18:00
定休日 第2・第4月曜日(祝日の場合営業)
熊本武道具
熊本武道具は、約600種類のアイテムを取りそろえる通販専門店です。
特に人気の「くねくね小手」は、とても柔らかい素材で洗える小手として注文が多いそうです。
ホームページ http://kumamoto-budogu.com/
益永武道具店
益永武道具店は、熊本市内にある武道具店です。
豊富な商品から店主さんが一人一人に合った防具、竹刀を一緒に選んでくれます。
近くにお立ち寄りの際はお店に足を運んでみてください。
住所 〒862-0924 熊本県熊本市中央区帯山2丁目4−32
電話 096-383-1331
武道鈴木 熊本支店
東京を本拠地として店舗を全国展開している武道鈴木の熊本支店です。
自社工場で防具や竹刀を製造しているため、いい商品もリーズナブルな価格で購入できます。
住所 〒862-0911 熊本県熊本市東区健軍4丁目13−2
電話 096-365-9163
|剣豪集う熊本県
このように、熊本県は剣道界においてどれだけ重要な地位を占めているか分かるかと思います。
小学生、中学生、高校生の最高峰の選手が集うだけでなく、現代剣道界で最強の剣士も擁しています。
「ひごもっこす」の表す通り、剣道をやりぬき、強くなっていくにはぴったりの風土なのかもしれません。
これからの剣道界の流れを作っていく、熊本県の剣士たちの動向は見逃せません。