▼スペシャルインタビュー▼
「IT×剣道から日常×剣道へ」
〜伊勢守 / isenokami 阿部晶人〜
(以下 KENDO PARK=KP 阿部晶人=阿部)
阿部晶人 (あべあきひと)
1974生 大阪生
小学生の時に地元の道場で剣道を始め、中学・高校と剣道を続ける。
その後慶應義塾大学へ入学し、在学中の1994年に国内初となる剣道情報メディアサイト「isenokami」をリリース。
卒業後は株式会社電通へ入社し、テレビCMやインターネット広告、PRなどのコミュニケーションアイデア立案に幅広く活躍。
並行して長きにわたって全日本剣道連盟の情報小委員会に所属し、
第10回世界剣道選手権(@京都)、第12回世界剣道選手権(@グラスゴー)のサポートスタッフとして活動。
第15回世界剣道選手権(@ノバラ)では、現地からインターネットでの生中継を実施。
第16回世界選手権(@東京)では、正式な運営メンバーの1人として誘致活動からビジュアルまでを担当。
日本剣道振興協会 代表理事。
KP:
阿部さんは日本初の剣道情報サイトを開設なさいました。その経緯を教えてください。
阿部:
一番初めは、高校生の時にテキサスへ留学したことがきっかけです。
現地に防具を持って行ったのですが、思った以上に剣道に興味を持ってもらえました。
また、数は少ないですが現地でも熱心に取り組んでいる方に出会うことができました。
その後、縁あって1994年に慶應義塾大学の環境情報学部に入学したのですが、その時の情報処理の授業でインターネットを知り、自然と興味を持つようになりました。
当時はまだインターネットが出てきたばかりの時代であり、Googleなどは存在すらしていませんでした。
そんな時、福本修二先生(現全日本剣道連盟副会長)の研究室に所属する機会に恵まれ、インターネットを使って日本の伝統武道を世界に発信しようと考え、剣道関連サイトの開設を思い立ちました。
研究室には、当時すでにインターネットが開通済みで、剣道の本もふんだんに置いてあったため、
独学でプログラミングを学び、文献を参考にしながら剣道の情報を掲載し始めました。
それが「isenokami」です。
KP:
「isenokami」の名前の由来を教えてください。
阿部:
サイト名は、もちろん戦国時代の剣豪“上泉伊勢守(かみいずみいせのかみ)”からとりました。
新陰流を興した剣豪でありながら、竹刀の前身となる「袋竹刀」を発明した人物で、
まさに剣術における「イノベーション」を起こした偉人でもあります。
語呂の良さもありますが、アイデアで剣道業界にイノベーションを起こしたいとの想いからisenokamiと名付けました。
KP:
どのような情報を掲載していたのですが?
阿部:
「剣道とは?」といった知識に関することや、試合結果等を掲載しておりました。
探してみると、海外では既に数名が剣道の情報発信をしていました。
しかしそのほとんどは、単純な個人ブログのような形で体系化されていませんでした。
そこでいざサイトを開設して情報発信をしてみると、海外から驚くほどの反応があり、それが本当に嬉しかったのを覚えています。
Googleのような検索エンジンもなかった時代ですが、「日本から世界へ発信」しているのがおそらく私だけであったので熱心な剣道家の方が見つけてくれたのだと思います。
そのつながりから、卒業旅行では世界の剣道仲間を訪ね歩く「剣道トリップ」を実現できました。
これらを通して、剣道を通じたコミュニケーションの可能性と、インターネットの持つ力を強く感じました。
KP:
その後世界大会のHP製作等、全日本剣道連盟のお仕事も手がけられていらっしゃいます。
阿部:
初めは単なるアルバイトだったのですが、在学中の1997年頃、全日本剣道連盟に情報システム委員会が設置され、たまたま声をかけていただきました。
そこで連盟の公式HPを製作したことが、今につながっています。
その後第12回グラスゴー大会でも、HP製作を行いました。
KP:
第14回世界剣道選手権(@ノバラ)では、現地から生中継を実現なさいました。
阿部:
もともと生中継の計画はなかったですし、施設の下見すらしていなかったので、本当にぶっつけ本番でした。
その状況下でも、一緒に現地入りした情報小委員の小川委員(http://www.geekpage.jp/)と協力してなんとか生中継を実現できました。
小川委員とは大学の同級生になりますが、彼のインターネットに関する知識にはよく助けられています。
KP:
今では各SNSメディアにも全日本剣道連盟公式チャンネルがございます。
阿部:
現在ではYou Tube / Flickr / Facebook 等、全日本剣道連盟の情報発信インフラもある程度整ってきましたし、他にもいくつかの剣道情報サイトがありますよね。
剣道家向けの情報発信は、かなり整備されたのではないかと感じています。
KP:
一般社団法人日本剣道振興協会の代表も務められていらっしゃいますね。
※一般社団法人日本剣道振興協会
一般社団法人日本剣道振興協会は、日本の伝統武道である剣道の普及、啓蒙と、それらによる青少年の健全な育成を目的とした団体です。
大会の開催やその他さまざまな活動を通して、子ども達が剣道に対する興味を持ち続けられるきっかけや、日頃の修練を発表する場を広く提供していきます。
年齢や性別に関係なく、誰もが一緒に長く稽古ができる数少ない武道である剣道を通して、強い心と身体、互いを敬う精神、そして礼節の心を、皆様と一緒に楽しみながら育んでいきたいと考えております。
(出展:一般社団法人日本剣道振興協会公式HP)
阿部:
剣道の普及啓蒙と、青少年の健全な育成に真正面から取り組むべく、「一般社団法人」という形態で2012年に団体を発足いたしました
主な取り組みとしては、「全国少年少女剣道祭」や「中学生からの剣道上達講座」を開催しています。
KP:
「全国少年少女剣道祭」には、以前私もお伺いさせていただいたのですが、通常の大会とは大きく異なり、大変楽しいイベントでした。
阿部:
単純なトーナメントではなく、「有名選手の剣道教室」や「トークショー」、また芸能人の方をお招きして剣道対決といったプログラムも盛り込んでいます。
剣道の未来を支える子供達が、剣道に興味を持ち続けてくれるきっかけになってほしいという観点から本イベントを開催いたしました。
「〜剣道大会」ではなく「〜剣道祭」と名付けているのもそのためです。
参加したちびっこ剣士が大喜びしただけではなく、ゲストの皆様も楽しんでくださったのが印象的です。みんな剣道が大好きなのでしょうね。
KP:
今後の課題を教えてください。
阿部:
これはあくまで個人的な意見ですが、非剣道愛好家に対するアプローチが最大の課題だと思います。
剣道をこれからさらに盛り上げるには、剣道をやっていない人に「始めてもらう」ことが大切です。
しかし現状は、剣道に振り向かせる施策がまだまだ少ないと感じています。
そこには剣道の文化的背景や成り立ちといったものを、競技と合わせて伝えていくことが必要だと思います。
最近のインバウンドのような「日本文化の安売り」ではなく、「剣道としてのストーリー」を用具にも大会にも道場にも全て浸透させていくことが大事なのではないかと思います。
KP:
現在「伊勢守 / isenokami」にて阿部さんがプロデュースなさったグッズは、個性的な物が多いですね。
阿部:
日常×剣道をテーマに商品を開発しています。あくまで剣道への入り口を広げることが目的です。
積極的にプロモーションしているわけではないにもかかわらず、海外からも問い合わせがあるようです。
これまでは「インターネット×剣道」をテーマに活動してきましたが、インターネットがすでに生活の基盤となった今は、「日常×剣道」をテーマに剣道の普及活動をしたいと考えています。
その結果、少しでも剣道への入り口を広げることになれば嬉しいです。
運営から:
インターネット黎明期から、剣道のIT化に携わって来られた阿部晶人氏。
常に剣道の新しい価値を追い求める姿に、改めて剣道の未来を考えさせられました。
KENDO PARKでは阿部晶人氏プロデュースの伊勢守 / isenokamiオリジナルグッズを取り揃えております。
個性豊かなラインナップを是非御覧ください。
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