【伝統技術を受け継ぐ】吉川武道具 吉川大

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吉川武道具

▼武道具店インタビュー▼

伝統技術を受け継ぐ

〜吉川武道具 吉川大〜

(以下 KENDO PARK=KP   吉川大=吉川)


吉川大

1985年生 長野県出身

新卒で機械メーカーに就職した後、2010年に某武道具店FC事業を開始。

2011年に、吉川武道具として正式に営業開始。

全国でもめずらしい生地胴販売に注力。

2016年より米倉武道具(千葉県市川市)の米倉氏に師事し、「東京型小手(甲手)」の技術継承を受ける。


KENDO PARK

|剣道具職人の道を切り開く

KP:

吉川武道具開業までの経緯を教えてください。

吉川:

長野県出身ということもあり、新卒で地元セイコー(現セイコーホールディングス株式会社)の管理部門に入社いたしました。

しかしリーマンショック後、会社自体が厳しくなってきたため、自分で何かビジネスができないかと考えておりました。

そんな時に、偶然ある武道具店からフランチャイズ出店の声をかけていただきました。

これが剣道具販売をスタートしたきっかけです。

KP:

当初はどのような販売スタイルだったのですか?

吉川:

長野県内の学校や道場に訪問し、とにかく手売りしていたという感じでした。

とはいえ当時は景気状況も最悪であったため、簡単には売れませんでした。

それ以上に、メーカーではないため修理等のリクエストに自分が応えられないのが大変もどかしく、製作技術を身につける必要性を感じておりました。

そんな折に、千葉県市川市にある米倉武道具の米倉氏と知り合うことができ、その縁から小手製作について教えていただく機会を得ることができました。

米倉氏の師匠は、東京型小手製作の大名人である宮下悟道(みやしたごどう)氏でした。

はじめは技術伝承の許可をなかなかいただけませんでしたが、宮下氏の出身が長野県であったこともあり、丸2日居座った結果、製作技術を教えていただくことができました。

KP:

技術習得にはどれくらい時間がかかったのですか?

吉川:

現在も定期的に学びに行っていますが、小手1組を作れるようになるまで丸一年かかりました。

近い距離でもないですし、自分のお店のこともありますので、月1回程度車で通いつめました。

毎回ご自宅に泊めていただき、製作に没頭いたしました。

製作当初は全くうまくいかなず、手の内張り替えるだけで3時間位かかっていました。

小手本体に至っては、1組製作するだけで丸4日くらいかかっていましたし、出来栄えも納得のいかないものばかりでした

その中でも、要点や改善点を丁寧に教えていただき、細かい部分は必死に見て覚えました。

現在では教えていただたいた型をもとに、「東京型小手」として生産できるまでになりました。

これからは自分なりのアレンジを加えていくところではないかと考えています。

吉川武道具
ゼロから技術を身につけた吉川氏。

|東京型小手とは?

KP:

「東京型小手(甲手)」の特徴を教えてください。

吉川:

いくつか特徴がありますが、一つ目は形状です。

現在一般に流通している小手は、小指と薬指の握りや手首の返しを意識した作りが多いと思います。

それに対して東京型は、手のひら全体で握れる形状をとっています。

結果として、良い小手の条件ともいわれる、「外見小さく、中身広く」を感じていただけると思います。

次に素材です。

布団には、伝統的な古代毛氈と軍隊毛布に、フェルトを組み合わせを使用していますので、丈夫で柔軟名仕立てになっております。

これらの素材は、現在ではなかなか手に入りにくいのですが、国内の独自ルートから仕入れております。

このように吉川武道具の小手は、「痛くない・安全・誰でも握りやすい」をテーマに製作しております。

私自身、稽古では中段と合わせて二刀流も執るのですが、中段だけでなく、上段や二刀流の選手にもマッチした小手だと思います。

東京型織刺小手

吉川武道具
東京型織刺小手はこちらより購入いただけます。
※米倉武道具からの提供となっております

KP:

吉川武道具というと、生地胴販売にも力を入れていらっしゃいます。

吉川:

人とは違うものを身につけたい」という方には生地胴は最適だと思い、販売を開始いたしました。

生地胴一番の魅力は、何と言っても「1本1本、表情が違う」ことです。

生地胴は、胴台に貼った革そのものの風合いを楽しむものです。

牛それぞれの血管や筋肉の痕、皮膚等が、独特の模様や色合いとなって浮き出てきます。

そのどれもが、オンリーワンな1本であることに魅力を感じます。

吉川武道具では、様々なタイプの生地胴をご提案しております。

・塗り下:胴台に革を貼って、漆を塗っていないもの。革そのものの風合いを楽しめる。

・拭漆塗:無色透明な漆で表面を仕上げることで、革の風合いを維持しつつツヤを出したもの。

・赤下地(りんご胴):革の下に赤の生地を貼ったもの。生地の赤みと革の風合いからりんごの表面のような風合いとなる。

・紺下地:革の下に紺色の生地を貼ったもの。革の風合いを維持しながら、落ち着いた色合いとなる。

同じタイプの生地胴でも、現れる表情はそれぞれ異なります。

ぜひ、お気に入りの1本を見つけて欲しいと思います。

【生地胴】純国産胴台

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【生地胴】純国産胴台はこちらより購入いただけます。
※李大夏氏からの提供となっております

KP:

今後の目標を教えてください。

吉川:

目先のところでは、継承した「東京型小手」を自分なりに発展させ、より良い小手を作ることが課題です。

全国的にも、職人の高齢化や廃業が相次いでいます。

私のような若い世代が、少しでも彼らの技術を受け継いでいかなければならないと考えていますし、私自身がその一人となれるように頑張っていきたいです。

最終的には、ものづくりを通して「剣道用具を楽しむ心」を伝えていきたいと思います。

昨今剣道具は、「スポーツギア」という捉えられ方が主流だと思います。

それはそれで大切なことですが、剣道具の競技的な側面だけでなく、文化や趣向としての側面が広まっていけば嬉しいです。

吉川武道具

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