▼スペシャルインタビュー▼
「名刀 ”比叡” 誕生秘話」
(以下 KENO PARK=KP 山口吉昭=山口)
現在日本のみならず世界に出回っている竹刀の99%、もしくはそれ以上は海外産と言われています。
その中で、国内でも数少ない「手作り竹刀」を製作する山口吉昭氏。
紡いできた竹刀製作の歴史を伺いました。
※2018年5月末をもちまして、惜しまれながら竹刀製作を終了しております。
|竹刀製作の過去と今
KP:
竹刀製作に携わったきっかけについて教えてください。
山口:
約50年前、16歳の時でしょうか、先代である父から竹刀製作の仕事を引き継ぎました。私で二代目にあたります。
当時の販路としては、問屋に納めるのがほとんどでしたので、月間約200本のペースで竹刀を製作していました。
朝8時から夜の8時まで年中無休で作業をして、やっと生産できるという感じでしたね。
細かいカスタマイズはせず、統一規格にしていたのでできたのかもしれません。
KP:
その生産体制はいつまで続いたのですか?
山口:
正確にはわかりませんが、2~30年くらい前まででしょうか。
そのあたりから、小売店への納品が多くなったように思います。
問屋相手ですと、1回の発注で40~50本くらいあるのですが、
小売店の場合はそれが20本くらいというイメージです。
お店によって要望や仕様も異なるので、ここからカスタマイズが始まりました。
KP:
今は個人のお客様が多いとお聞きしました。
山口:
10年ほど前から個人のお客様が増えてきました。
個人のお客様ですと、要望がかなり細かいケースが多いので、カスタマイズするのが本当に大変です。
今では問屋も小売店も個人も、注文単位が5~10本というのがほとんどです。
1本毎に竹刀をカスタマイズするのは難しいので、現在は5本単位で注文を受けるようにしています。
年間でいうと200本程度でしょうか。
|恥を知らない職人は職人ではない
KP:
製造工程を教えてください。
山口:
詳しく話すと大変長くなりますので、簡単にお話ししますと、
1) 炭を敷いて竹を熱する→油が浮いて変色し、色彩が統一される
2) 竹の内側から節を切り落とす
3) そば取り(粗く成形し原型を作る作業)→この時点で、どのタイプの竹刀に使用するか判断する
4) 矯め(竹を縦に伸ばし、型で湾曲を作る作業)
5) 面取り(角の部分を軽く削ぎ落とす作業)
6) ハツ(ナタで削ぎ落としながら成形する作業)→ここで、柄の太さを調整する
7) 矯め返し(削ると湾曲が多少戻るので、再度湾曲調整する作業)
8) 組み合わせ調整(4本の竹の組み合わせを調整する作業)
9) やすりがけ
10) 柄の太さを最終調整
というところでしょうか。
ほとんどの作業を、自分の経験と感覚に頼って行っているので、なかなか伝えるのは難しいです。
KP:
竹の良し悪しはどう見分けるのですか?
山口:
これも感覚の世界ですが、竹の断面を濡らして密度を見ます。
密度が高いものは、材質として良い代わりに重いので、「通常」か「古刀型」の竹刀に使用します。
逆に「胴張竹刀」には使用できません。
このようにあらかじめ竹を仕分けしておき、オーダーに沿って使用する竹を選んでいます。
KP:
良い竹ほど、「胴張竹刀」にはあまり向いていないということでしょうか?
山口:
そうですね。
職人目線でいうと、「胴張竹刀」は自然と体積が大きくなりますので、
同じ重さの竹刀同士であれば、「胴張竹刀」の方が脆いと思います。
そのため手作り竹刀においては、「胴張竹刀」は推奨しておりません。
KP:
今後の課題を教えてください。
山口:
まずもって儲かるものではないので、後継者がいないことです。
そもそも私自身も、現在は趣味の延長でやっているだけなので、
それはそれで仕方ないかなと思っています。
また、感覚的なものも少し衰えてきたように感じます。
お客様の要望の細分化により、数本単位で異なるタイプの竹刀を製作することもあります。
そうなるとやはり元の感覚が鈍ってしまいがちです。
KP:
職人として大切にしていることを教えてください。
山口:
「恥を知らない職人は職人ではない」と思っております。
技術は常に改善していくべきものなので、過去の製品に対する「恥」の気持ちは、常に持っています。
その結晶が、私の製作する竹刀「比叡」だと考えています。
運営から:
日本でも数えるほどとなった竹刀職人。
今後失われる可能性もあるその技術を、我々の情報発信によって少しでも残していくことができればと思います。
KENDO PARKでは「比叡」をお取り扱いしております。ご希望の方は以下よりお買い求めください。
匠の技術と伝統を、是非ともその手で感じて頂ければ幸いです。
※2018年5月末をもちまして、惜しまれながら竹刀製作を終了しております。
ご愛顧いただき、誠にありがとうございました。