▼武道具店インタビュー▼
「剣道具にオリジナリティを」
〜KIZUNA 代表 諏訪元大介〜
自身もかつて名選手であり、現在剣道具製作に携わる諏訪元氏。
プレイヤー視点でのデザインや商品開発について、お伺い致しました。
(以下 KENDO PARK=KP 諏訪元大介氏=諏訪元)
-諏訪元大介-
九州学院高校卒業、筑波大学中退。
九州学院高校時代に、玉竜旗20人抜きを達成。
筑波大学時代には、全日本学生剣道優勝大会で優勝。
ほか実績多数。
2008年に、前身となる「武道具専門店 絆」を設立。
2011年に「株式会社 KIZUNA」へ移行。
|オリジナル剣道具に挑む
KP:
創業までの経緯を教えてください。
諏訪元:
もともと 某剣道具メーカーに勤めていたのですが、当時のトップ選手から、「もっと良い剣道具って無いんですかね?」という声をキャッチしていたので、「自分でプレイヤー向けの剣道具を製作してみたい。」と思い、2008年に独立いたしました。
そこから、知り合いのツテで中国の工場へ視察に行き、剣道具製作の現場と剣道具のデザインを学びました。
そこから日本に持ち帰り、色々な先生や選手にヒアリングを行いながら、オリジナルの剣道具のデザインに取り掛かりました。
KP:
事業が立ち上がるまで、どれくらいかかりましたか?
諏訪元:
当初1年くらいは自前製品が上がってこなかったので、その間は海外製の汎用剣道具の輸入販売を行なっていました。
販路としては地元の熊本県内や、自分のコネクションを使って何とか広げていきました。
いわゆる、一般の小売店と同じスタイルですね。
剣道具デザインに関しましても、手書きで絵を描いて、それを送ってはサンプルを作ってもらうという地道な作業の繰り返しでした。
結局1つオリジナル商品を作るのに、1年くらいかかりましたね。
KP:
そこから、様々なオリジナル商品を生み出されました。
諏訪元:
商品デザインには、剣道具以外の者からもインスピレーションを受けています。
例えばトート型防具袋は、キルティングバッグや高級バッグからヒントを得て、デザインしています。
また母校である九州学院の米田先生や、知り合いの選手等、ユーザー側からもヒントをいただくことは多数あります。
例えば、「琥武羅 コブラ 小手」シリーズで採用した4線式構造は、彼らのアドバイスを受けて、それまであったダブルステッチを改良したものです。
また現在では一般的になった漆塗りファイバー胴 は、もともと九州学院の選手胴制作の際に採用したものです。
|「自分が使いたい物」を作る
KP:
様々なところからインスピレーションを受けていらっしゃいますが、ご自身の中で大切にされていることは何ですか?
諏訪元:
アイデアのベースとなっているのは、「自分が使いたい物」「自分が欲しいと思う物」かどうかです。
私自身が剣道家であるので、ユーザー視点で考えて欲しくなるかどうかというのは、最も大切な視点だと考えています。
そのためには、実用性とデザイン性の両方が必要だと考えています。
KP:
オリジナル商品以外にも、様々なメーカーの剣道具を取り扱っていらっしゃいます。
諏訪元:
各大手の剣道具メーカーさんとは、良好な関係を築いています。
現在は日本全国のサプライヤーさんと、剣道具取引のお付き合いがあります。
オリジナル商品開発の際も、こちらの要望と工場側の状況や生産能力に大きな隔たりがあることもあります。
そういった場合でも、普段からコミュニケーションを取って良好な関係を築いていれば、協力して課題をクリアすることができます。
私一人ではできることが限られていますので、なるべく他の業者さんとも良い関係を築いて、支え合いながら商売ができれば良いと考えてます。
|次世代へ繋ぐ
KP:
現在は地元で剣道指導も行っていらっしゃいます。
諏訪元:
現在小学生・中学生を中心に、地元で指導を行なっています。
「将来インターハイで活躍する選手」を目標に、そこから逆算して指導するようにしています。
とはいえ、全員が「全国トップを目指そう」という視座であるとは限りません。
むしろそうやって高みを目指す子供は、一握りかもしれません。
その中で、なるべく視座が高い子にレベルを合わせながら、チーム全体を引っ張りあげるのはなかなか難しいことです。
さらに、自分が現役で剣道をやっていた時代と、現在の剣道のルールやスタイル等は異なるので、それに合わせて行く努力も必要だと感じています。
そういった剣道指導の難しさも、感じているところです。
KP:
今後のビジョンを教えてください。
諏訪元:
日本は少子化ですので、今後剣道具がドンドン売れていくという状況はあまり想定できません。
一方で、剣道は教育ととても親和性が高い武道です。
今後はソフト面を重視し、現在の剣道指導も「塾」や「コンサルティング」形式にして、付加価値を高めたいと考えています。
ひいてはそれが、剣道具の販売に繋がっていけば良いと思います。
このようにして、剣道と剣道具の両方において、付加価値が高まっていけば良いと思います。