【「美しい」竹胴を作る】昇龍堂 田中敏和

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昇龍堂,胴台,職人,京都,国産

▼レジェンド職人シリーズ▼

「”美しい”竹胴を作る」
〜昇龍堂 田中敏和〜

胴台は製作が難しい部位の一つです。
現在、国内で製作できるところは数カ所しかありません。
その中で80年の歴史を誇り、昔ながらの伝統的な手法で胴台製作にあたる京都の老舗「昇龍堂」。
その歴史と、胴台製作にかける想いをお伺いしました。
(以下 KENDO PARK=KP     田中敏和=田中)

KENDO PARK

|80年を超える歴史

KP:
胴台製作を開始なさった経緯を教えてください。


田中:
先代である父が、約80年前(1920~1930頃)に胴製作をスタートしたのが始まりです
当時は戦後の剣道再開期で、手本となる剣道具もなかったので、試行錯誤の連続であったと聞いています。


KP:
なぜ胴台製作に行きついたのですか?


田中:
父が胴製作を行っていたため、自然な流れで胴製作に携わるようになりました。
元々剣道具製作は一人の職人が全てを製作していましたが、徐々に分業化されていき、今では胴製作は完全に専門職となりました。
他の面や小手等のパーツに比べると、使う素材や技術も全く異なりますし、アレンジのパターンも豊富なので自分だけの技術を磨けると思ったからです。


KP:
ご自身はいつから胴台製作に携わっているのですか?


田中:
小学生の頃から、遊び半分ではありましたが父の仕事を手伝っていました。
元来ものを作ること、工作等が好きなこともあり、父から胴製作の技術を学びました。
それから、かれこれ60年以上も胴台製作に携わっていることになります。
父も90歳まで胴台を行っていたのですが、1968年に正式に父から事業を引き継ぎました。

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工房は80年もの歴史を誇る。
※昇龍堂竹胴指定の場合は、別途お問い合わせください。
info@kendopark.jp

KP:
胴台の歴史について教えてください。


田中:
もともと胴台は、竹だけで形をつくり、革紐で結び合わせるという大変簡素なものでした。
しかし竹が割れるなど、身を守る防具としては不完全であったため、組み上げた竹の表面に牛革を貼るなどして強度の向上を図りました。
これが現在の胴の原型となるものです。

しかしこの手法では胴の表面で革紐を結んでいるため、胴を打った際に革紐が切れてしまうことが多発いたしました。
そこで内部に紐を通して組み合わせる手法が取られるようになり、胴の表面には漆を塗るようになりました。

竹の素材に関しても、通常の竹よりもまっすぐで扱いやすい“孟宗竹(モウソウチク)”を使用し、父の代から何回も試行錯誤を重ねて現在のような形になりました。
これらの施策により、美しさと高い強度という付加価値が付いた胴が完成いたしました。


KP:
そこから高級品が登場してきたのですね。


田中:
他人よりも美しく、また人が使っていない素材を使用することで、高付加価値のものに昇華していきました。
例えば胴の表面に鮫革(エイ革)や高級漆、金蒔絵等を施すなど、剣道防具の中でも胴だけが独自の付加価値をつけられるようになりました。
これらはもともと、武家に献上していた高級漆器などに用いられていた技術です。

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もともとは胴台の表側で紐を組んでいた。
※昇龍堂竹胴指定の場合は、別途お問い合わせください。
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|技術を守り抜く

KP:
過去からの変化はありますか?


田中:
食生活の変化からか、日本人の体格が昔よりも大柄になっています。
昔は基本となる胴幅を約二尺二寸として仕立てていたところが、現在は二尺三寸をベースとして製作しています。
もちろんさらに大きいものから、女性用など小さいものもまで、使う人のサイズに合わせて仕立てています。

また、竹の質が変わりました。
これは竹刀でも言えると思うのですが、今の竹は昔よりも柔らかくなりました。
竹は寒冷地で育つことで、繊維が詰まって密度の高い竹になります。

しかし温暖化の影響からか、現在はなかなかそういった竹が育ちにくいのだと思います。
結果として、昔のように良い素材が手に入りにくくなりました。


KP:
大まかな製造工程を教えてください


田中:
詳しいところはお伝えできませんが、大まかには以下の通りです。

・丸竹の甘皮を剥いて、寸法通りの長さに揃えて切ります。

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・一定の横幅に小割りし、厚みと幅を揃えるために専用機械に通します。

・竹のピースを火であぶり、柔らかくしてから型にはめ込みます。(=1次整形)

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・型から外し、よく乾燥させます

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・紐を通す穴を開け、竹の両側を削って形を整えます。(=2次整形)
ここまで、組み上げる前の行程で、約3週間程度かかります。

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・竹を紐で組み上げます

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・組み上げた竹の表面に牛革を貼り、乾燥させます。

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・胴台の形にカットして仕上げます。

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・表面を磨き上げます

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・張った革や竹が戻る力で、胴台が破損するのを防ぐ為、”つっかえ”をつけて形状を維持します。

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|「美しさ」へのこだわり

KP:
胴台作りの上でのこだわりを教えてください。


田中:
「美しさ」には自分なりにこだわっています。
“機能美”と言われるように、用途に合わせて作られたものには、独特の美しさがあるともいます。
とはいえ天然素材が相手ですので、完全に満足できるものができることはなかなかないです。

その中でもごく稀に、自分で納得できる形状のものが出来た時に、大きな喜びを感じます。
本当に微妙な違いですが、そこにこだわることで日々技術の向上に取り組んでいます。

また「重さ」にもこだわっています。
胴は防具であり、体を守ることが最大の目的です。
作り手として、そこに責任を持って製作にあたっています。

本来体を守り、かつ激しい動きにおいて安定した重心を作るのが胴の役割です。
近年では“試合用”という名目のもと、軽いものを求めることも多いと聞きますが、剣道防具本来の目的を持ってこそ、美しさが生まれると思います。

「軽いものに強いものはない、強いからこそ美しい」というのは、私の職人としての考えです。
これらを総合した「美しさ」を追求して、胴台製作にあたっています。

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近年では漆塗りも手がける。
※昇龍堂竹胴指定の場合は、別途お問い合わせください。
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KP:
これまで胴台製作を続けてこられた苦労を教えてください。


田中:
胴台の製作は、竹の加工に始まり漆塗りという繊細な行程まで多岐に渡ります。
その点で体力的には負担が大きく、年齢的にも昔よりは製作が容易でなくなってきています。
もともと座敷であぐらをかいて行っていた作業も、現在はテーブル上でやる様にしています。
数年前には肩と腰も手術しましたので、無理のない範囲で仕事を続けています


KP:
最後に今後の目標を教えてください。


田中:
剣道具が持つ付加価値を、これからも守っていきたいです。
製作者としては、使用なさる方に「身体に優しくて使いやすい」と感じていただけるものを目指しています。
そもそも変化の激しい時代において、ここまで胴台製作を続けてこられたのはある意味奇跡だと思います。

つまりは、それだけ剣道具には“変わらない価値”があるのだと思います。
それを守る一翼を担えれば良いですし、いつか心から本当に納得できる胴台を一本でも製作できれば幸いです。

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