本記事では、剣道と文字の関係性についてまとめます。
特に四字熟語は、剣道を学ぶうえで必要な心構えを表すものが多くあり、様々な道場、部活において標語として掲げられています。
普段使う竹刀袋や手ぬぐいに四字熟語を入れる方も多く、部活やその人の剣道を特徴づける一つの手段にもなっています。
|強豪校で伝統的に用いられている言葉
思念工夫(高千穂高校)
宮崎県高千穂高校の部訓に含まれる標語です。
かつてより輝かしい成績を残し、インターハイや玉竜旗での優勝経験もある、剣道名門校として知られています。
この「思念工夫」という言葉の意味は、「時間が限られた普段の生活の中で、いかに知恵を絞り日々を実りあるものにするか」というものです。
部訓「思念工夫」成功は苦境の日に始まり、失敗は得意のときに原因がある。
高い目標を完遂する過程を通じて人間は成長する
不足を言うな、足りないのは己の知恵と行動力だ
時間を蓄積することはできない
一日一時間一分をどのように生かすかが人生勝敗の分かれ道だ厳しさ無くして執念なし、執念無くして行動なし、行動無くして成果なし
研究心、行動力、継続力なき者に成功なし
根性なき者は去れ
最後の一文で分かるように、非常に厳しい言葉で書かれた文章です。
思念工夫の四字に込められた意味を胸に刻んで日々猛稽古に励んでいるからこそ、高千穂の強さがあるのでしょう。
修文練武(筑波大学)
大学剣道界の名門、筑波大学剣道部の標語となっている四字熟語にです。
意味は、「学業を修め、武道も学び心身ともに強くなること」で、文武両道、文武併進などと同じような言葉であると言えるでしょう。
この言葉が部の標語になっているのは、それは大学のルーツに関係していまです。
筑波大学の前身である東京教育大学は、教育者を育てることを目的としており、武道を学ぶだけではなく、学業励むことを厳しく指導していました。
時代の移り変わりによって、大学の名前や組織が大きく変わりましたが、教育者を育てるという精神は伝統的に受け継がれています。
剣道だけでなく、学業も修めなければならないということから、修文練武という言葉を掲げているということがうかがえます。
我が剣道部は、時代が移り校名、組織や機構などが変更された今日にあっても、「教育剣道を培う優れた教育者の育成を目的とする」の伝統を受け継ぎ、「修文練武」をモットーとして人間形成を図り、剣道の指導者としての素養を磨くべく日々の部活動に精進をつづけている。
朝鍛夕錬・主一無適(鹿屋体育大学)
鹿屋体育大学は、九州の大学でありながら全国優勝経験もある鹿児島県の名門校です。
部訓には、二つの四字熟語が制定されています。
・「朝鍛夕錬(ちょうたんせきれん)」
「朝夕と鍛錬に励むこと」という意味の四字熟語で、宮本武蔵の「五輪書」のなかで、「朝鍛夕錬してみれば、おのづから兵法の道に会ふ」という一文から、練習に常に励むべき、という心構えを表したものです。
九州の大学らしい宮本武蔵の言葉をとった目標となっています。
・「主一無適(しゅいつむてき)」
「事にあたってはその一つに精神を集中させて、気を散らさない」という意味の四字熟語です。
剣道に置き換えれば、稽古や試合に集中し、他のことに気をとられてはならないということです。
これを心がけることによって相手への感謝の気持ちが生まれ、礼儀につながるということから、鹿屋体育大学ではこの言葉を部訓として用いているそうです。
私たち剣道部は、武道を専門に学ぶ機関の中の部活であり、伝統的稽古修練を徹底する事で、心身を磨くことを重要視しています。
部訓である「朝鍛夕錬(修錬)」、「主一無適(礼の根源)」、「寒流帯月澄如鏡(戦気)」、「剣道即生活即修行(道場)」の精神を持って、鹿屋体育大学の伝統である三段稽古を中心に、日々の稽古に励んでいます。
|剣道具における代表的な四文字熟語
手ぬぐいや竹刀袋など、文字が入っている剣道具はよく見られます。
それらの中で、代表的なものをまとめました。
質実剛健
文字の見栄えの良さもさることながら、「中身が充実しており、心身ともに強く美しいさま」という意味があり、強さをよく表す熟語です。
上善如水
古代中国の思想家老子の言葉で、「上善は水の如し」という言葉があり、そこから生まれた四字熟語になります。
水のように躍起になることなく、無駄な力を抜いて生きることこそ成功の秘訣である、という言葉になります。力を抜いてこそ、強い者に勝てるわけです。
一見頼りない言葉にも思えますが、勝つためにこそ力を抜くべきという考えは大切であり、その心得を持っておくためにもこの四字熟語を剣道具に刻んでみてはいかがでしょうか?
百錬自得
一つのことを完全に身に付けるためには、百回もしくはそれくらい数多く繰り返すべきという教えです。
現在では意味が昇華し、「何事にも継続して努力し続けること」という意味合いでも使用されます。
明鏡止水
邪念がなく、無心で心が鏡のように澄み切った様を意味した言葉です。
剣道の技は、無意識に出る「無心の技」が最高の技だとされています。
その時の精神状態をよく表した言葉です。
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|熟語を入れる剣道具
竹刀
竹刀にはもともと銘があるものも多いですが、無地の竹刀も数多くあります。
そのような竹刀には、文字を刻印することができます。
一般に名前を刻印することが多いですが、熟語を刻印する方もいらっしゃいます。
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鍔(つば)
鍔に文字を入れることもよくあります。
特に文字を刻印した革鍔は、昇段祝いや優勝記念等のギフトにもよく用いられます。
袴(腰板)
腰板(=袴の腰部を支える板)に、文字刺繍を入れることもできます。
個人的なモットーや大切にしている言葉を入れることもありますが、試合用にチームで揃えることも多いようです。
手ぬぐい
手ぬぐいも、文字を入れてオリジナリティを出せる剣道具の一つです。
一般に、数十本単位や数百本単位での注文となるので、チーム等で揃いのものをまとめてオーダーすることが多いようです。
|剣道家にとっての言葉
先ほどの名門校での標語も見れば分かるように、剣道をする人がいれば必ずそこには言葉があります。
それぞれの場所での精神を表すものであり、そこで学ぶ人の剣道の特色にも少なからず影響を与えます。
試合などでは、そのチームのモットーとされている熟語を、剣道具に刺繍している人を多くいるのはこのような要因があるのでしょう。
|剣道と文字についてのまとめ
日本の伝統である剣道は、脈々と続く歴史の中でその精神を表すため、また後世に残すために言葉と密接に繋がってきました。
だからこそ稽古や試合をする際、身につける道具にもその心得を刻むことを剣道家が好むのはある意味当然の流れなのかもしれません。
文字を入れる際にこの文章を見てもらい、少しでも参考になればと思います。