今回は、剣道の最も基本となる「足さばき」について解説していきます。
足さばきの種類や練習方法、自宅で手軽にできるトレーニングメニューなどを紹介していきます。
是非これからの稽古に活かして下さい。
|剣道における足さばきとは
剣道において足さばきとは、すべての動きの基礎となるとても重要な要素です。
よく使う言葉に、「一眼二足三胆四力」(いちがんにそくさんたんしりき)という言葉があります。
これは剣道において大切なことを順番に並べたものですが、1番大切なことは相手を見る目、2番目に大切なことが自由に動くための足、3番目に大切なことは何事も恐れない胆力、最後に大切なことが腕っぷしなどの力ということです。
ここで言いたいことは、足さばきというものは、精神的な部分である胆力や、竹刀を振るために必要な腕っぷし以上に、大切で重要視されているということです。
それは、剣道の動きには必ず足さばきが関係してくるからです。
”技前”との関係性
具体的に、足さばきがどのような時に関わってくるのかを考えていきましょう。
まず一つ目は、相手との駆け引き、及びいわゆる「技前」の局面です。
竹刀を構えて打突するまで、または相手との駆け引きをする際には、足さばきを使って前後左右に自由に動き、大きく、細かく、鋭く、時に緩急をつけながら相手に隙を作ります。
相手との間合いや位置関係において、自分が有利な形を作ることにおいて、足さばきは大変重要な役割を果たします。
打突との関係性
もう一つは打突の瞬間です。
鋭い打突をするにも、足さばきが関わってきます。
後ろ足で跳び前足で踏み込むときに、足さばきが遅いと、腰が入らず前のめりになりながら打つ「手打ち」と呼ばれる弱い打突になってしまいます。
そうならないために、打突動作において足を使って力強い打突を目指しましょう。左足で床を押し出すように蹴り、引きつけを素早くすることで、鋭く強い打突をすることができます。
残心との関係性
また、残心を示す際にも足さばきが重要になります。
小手打ちを例に出して考えてみると、竹刀で小手を叩くだけでは小手打ちは一本になりません。
しっかりと打ったあとに、身体を相手にすばやく引きつけなければいけません。
ここのスピードが遅いと、一本と認めてもらえないのです。
そこで、打った後は足さばきを使ってすばやく残心しましょう。
参考記事:徹底解説!【剣道の「踏み込み」と練習法とは?】
|足さばきの種類
すべての足さばきが、同じ動き方ではありません。
相手や展開、場面によってなどで変わってきます。
足さばきには、送り足、継ぎ足、歩み足、開き足等の種類があります。
それぞれの足さばきの種類を、細かく紹介していきます。
送り足
送り足は、もっとも基本となる足さばきです。
構えた状態の足の形から、後ろ足を使って体を前に進めたり、前足を使って後退したりします。
ここでの注意点は、体重移動をした時に身体がブレないように体幹を使って移動することと、後ろ足が前足を追い越さないようにすることです。
継ぎ足
継ぎ足は離れているところに跳ぶときや間合いを盗みたいときに使う足さばきです。
構えた状態から前足に後ろ足を近づけて、飛距離を伸ばします。
継ぎ足の注意点は、相手に動きを悟られないようにすることです。
相手にわかってしまっては、打つタイミングがわかりやすくなり、返し技などを打たれるリスクが上がってしまいます。
だからこっそり左足を引きつけておきましょう。
また稽古している時に何度もやっていると、癖になってしまい、打突する時に毎回足を継いでしまうので、癖にならないように気をつけましょう。
歩み足
歩み足は、間合いが大きく離れたときなどに使います。
通常の歩行と同じように、後ろ足が前足を交互に追い越す形となります。
歩くときと同じ足の運びかたをしますが、つま先が上がらないように注意しながら稽古しましょう。
とはいえ後ろ足で蹴り出す剣道において、右足を左足(中段の場合)が追い越してしまう歩み足はあまり使われない足さばきです。
開き足
開き足は、前進してくる相手をかわすときなどに使います。
この足さばきは相手を中心として、進む方向と同じ側の足から円を描くような形で出していきます。
この時、つま先が相手に向いているようにするとスムーズに足を運べます。
参考記事:徹底解説!【剣道の「踏み込み」と練習法とは?】
|足さばきの稽古
剣道の足さばきは、日常で使う足の動かし方と大きく異なります。
そのために、日頃の稽古で身につけていくことがとても重要です。
では、どのような稽古をしていけばそれらの足さばきが身に付くか考えていきましょう。
前後左右の足さばき
最もベーシックな稽古法です。
先生のかけ声等の合図に合わせて、決められた方向へ送り足で進む練習です。
合図があった瞬間に、構えた姿勢のままなるべく素早く移動しましょう。
ここでのポイントは、重心を自分の真ん中に置き、移動のときにも重心や目線の高さをブらさないようにすることです。
鋭い足さばき
鋭い足さばきは、道場を縦に使った練習が効果的です。
構えた姿勢から送り足を使って、細かく、速く進みましょう。
道場の端から端まで進むことで、細かく足を送るための足の使い方や素早く進むための筋肉がついていきます。
ここでの注意点は、姿勢を真っ直ぐに保っておくことと、後ろ足が前足に並んだり、追い越したりしないようにすることです。
開き足の足さばき
開き足の練習には、開き足を使った左右面の素振りが効果的です。
自分の前に相手がいると想像しながら開き足を使った左右面の素振りをすることで、想像している相手を中心に、円を描くように足をさばくことができるからです。
また左右面の素振りを一緒にすることで、手と足の連動がスムーズに行えるようになります。
開き足は慣れるまで、移動したあとの後ろ足が前の足を追い越して、両足が交差してしまうことがあるので気をつけましょう。
参考記事:徹底解説!【剣道の「踏み込み」と練習法とは?】
|自宅でできる練習メニュー
「剣道は上達したいけど、毎日道場に行く暇がない」という方は、多くいると思います。
そういった方のために、自宅でもできる足さばきの上達に効果的なトレーニングメニューを紹介していきます。
剣道の足さばきは、中段の構えが多いため左足で身体を送り出すことがほとんどです。
それゆえに、左足の母指球(親指の付け根付近)の力と、それの元となるふくらはぎの筋肉が大事になるので、初級編、中級編、上級編に分けて手軽なトレーニングメニューをそれぞれご紹介します。
※上段の構え等の足の配置が逆の場合は、左右逆としてお取り組みください。
初級編
初級編のトレーニングは「左足だけで背伸び」です。
これは名前の通り、立った状態から左足だけを使って背伸びをします。
これを30回1セットなどで繰り返しすると、ふくらはぎの筋力アップにつながってきます。
バランスをとるためにイスなどに手をかけながらでもいいので、左足のふくらはぎと母指球を意識しながらトレーニングしましょう。
中級編
中級編は「左足ジャンプ」です。
名前の通り、左足だけでジャンプすることです。
ここで意識したいのは、着地の仕方です。
足の指から衝撃を吸収しながら着地することを意識することで、飛び上がるときだけでなく、着地のときもトレーニングになります。
上級編
上級編は「左足スクワット」です。
これは左足だけでスクワットをすることなのですが、普通に片足でスクワットをしようとしても、かなりの筋力とバランス力が必要になります。
そこである程度簡単に取り組める方法として、左足で身体を下げながら右手で地面をタッチすることです。
これをすることで、屈むような形でスクワットをできるので、バランスを取りやすくなります。
この方法のポイントは、上半身をなるべく真っ直ぐにしておくことです。
上半身を真っ直ぐにしておくことで、地面と手との距離が出来てより足に負荷がかかり、筋力アップにつながります。
参考記事:徹底解説!【剣道の「踏み込み」と練習法とは?】
|足さばきの重要性
基本的な足さばきの種類の紹介から、道場での稽古法や自宅で手軽にできるトレーニングメニューまでをご紹介致しました。
剣道において、足さばきは全ての基本となるとても大事な要素です。
身長が大きかったり腕力が強くても、足さばきをが素早く巧みな選手には、なかなか勝てないものです。
また足さばきを身に付けることで、打突に移る上でのタイミングや動きのパターンが増えるため、一つ一つの技を覚えるよりも効率的にバリエーションを増やすことができます。
自由に動き回り、打突の機会を狙えるよう、しっかりと足さばきを練習しましょう。
参考記事:徹底解説!【剣道の「踏み込み」と練習法とは?】